イケアの人事が語る、バリューを体現したユニークなタレントマネジメントとは?【横浜人事カレッジ#8】
こんにちは🌸
ダイバーシティ&インクルージョン推進を組織と人の側面から支援するAn-Nahal(アンナハル)です。
2024年10月に、An-Nahalが企画・運営する横浜人事カレッジの第8回を開催しました🎉
前回は株式会社レゾナック・ホールディングスの雪野 亮さんをゲストにお招きし、「企業文化」と「共創型人材」についてお話しいただきました。
今回のテーマは、「タレントマネジメント」です。
スウェーデン発家具ブランドであるイケアは、Leadership by all/ 全員によるリーダーシップの取り組みを推進しています。この取り組みの根底にあるのが、イケアが最も大切にしているValueやWe believe in people・ Be yourself・Equality Opportunityといった考え方です。
これらの価値感を現場で体現するための仕組みづくりに取り組む、IKEA港北店のPeople and Culture Manager 塚田大介さんをお招きし、イケアならではのユニークな人事施策やタレントマネジメントの具体的な事例についてお話しいただきました。
一人ひとりが持つ強みをどのように、IKEAが掲げるバリューと組み合わせているのか?そのヒントを探った当日の様子をお届けします🎤
ゲストスピーカーの紹介
イケア・ジャパン株式会社 IKEA港北 People & Culture Manager/塚田 大介さん
2006年、イケア・ジャパンに中途として入社。
IKEA港北のストアオープン時に、セールス倉庫エリアのリーダーとして携わり、その後セールス部門のさまざまなエリアマネジャーを歴任。2018年からカスタマー部門のストア責任者として、快適なショッピング体験を提供する環境整備に尽力。2022年、イケアの社内公募にて現職に採用。多くの部門を経験したコンピテンスを活かし、個々が自分らしく、光り輝けるタレントマネジメントに注力している。
80年の歴史の中で育まれてきた8つの「イケアバリュー(価値観)」
入社が決まった新しい「コワーカー(イケアでの従業員の呼び方)」は、創業者であるイングヴァル・カンプラードが80年前に記した「ある家具職人の言葉」という冊子を受け取ります。この冊子には「イケアという会社が長く存続するために、こうした価値観を大切にしていきたい」という創業者の想いが込められています。
「連帯感」「コスト意識」「責任を与える、引き受ける」といったシンプルな言葉で表現される8つのバリューですが、その一つ一つに深い意味と具体的な行動指針が含まれています。
特徴的なのは、「こうしなさい」「こうあるべき」といったトップダウン型の指示は一切行わないことです。代わりに「あなたはこの言葉からどんなことを感じましたか?」「それを仕事にどう活かしていきたいですか?」と問いかけ、一人ひとりが自分なりの解釈と行動に落とし込むことを促しています。
大小さまざまな意思決定を行う際に「イケアバリュー」に立ち返って考え、行動するのが基本姿勢になっているとお話し頂きました。
イケアバリューをリンゴの木に例えるとどうなるか
入社当初は熱意を持っていたコワーカーも、日々の忙しさからイケアバリューが疎かになってしまう瞬間があるそうです。そこでイケアバリューに立ち返るために実施している、塚田さんが考案したワークショップについて教えて頂きました。
このワークショップは、新入社員だけでなく、10年以上勤めているコワーカーにも実施しているといいます。日々の業務に追われる中で見失いがちな自分の価値観や、仕事の意味を再確認する機会となっています。
【ワークショップの進め方】
まず「リンゴの木」を描きます。大きな模造紙に、実、幹、根を持つリンゴの木を描き、それぞれの部分に以下の要素を書き込んでいきます:
リンゴの実:自分が人生で実らせたい夢やビジョン
木の幹:実を実らすために大事にしている価値観
木の根:夢を実現させるためのモチベーションになっていること(原動力)
次に、イケアとしての「リンゴの木」を共有します:
リンゴの実:「より快適な毎日を、より多くの方々に」というビジョン
木の幹:イケアの8つの価値観
木の根:「家での暮らしをより良くしたい!」というモチベーション
そして、自分の描いた木とイケアの木を重ね合わせ、価値観の接点を見つけていきます。例えば「自分の大切にしている誠実さ」は、イケアの「手本となる行動でリードする」というバリューとつながっているといった気づきを獲得します。
あるコワーカーは、このワークショップを通じて「自分がなぜイケアで働いているのか」という原点に立ち返り、新たなキャリアチャレンジを決意したそうです。
チームメンバーが持つ価値観を共有し、共感が多ければ多いほど、イケアで働く意味が見出され、生き生きと仕事に取り組めるようになります。この「価値観の共有」をとても大切にしているとお話し頂きました。
コワーカーのチャレンジを促す「レッツトライ」の取り組み
イケアの人材育成において、特徴的なのが「称賛の文化」を通じた評価とフォローアップの仕組みです。従業員のチャレンジを促す「レッツトライ」の取り組みと連動し、どんなに小さな挑戦でも評価し、称賛することを重視しています。
成功事例を「グッドイグザンプル(良い例)」として共有し、店長自らが表彰を行う機会を設けています。例えば、ある売り場での工夫が成功した場合、その取り組みの具体的な内容や成功要因を共有します。事例共有を通して、「私のチームでも試してみよう」「自分の部署でもアレンジしてやってみたい」といった横展開が自然に生まれていくそうです。
また、従来の「PDCAサイクル」ではなく「DCAPサイクル」を採用しています。「DCAP」とは「Do-Check-Action-Plan」の略で、まず行動を起こし、その中でトライアンドエラーを繰り返し、そこから学びを得た上で計画を立てるという考え方です。
いわば、「習うより慣れろ」に近いアプローチです。計画に時間をかけすぎて動けなくなることを避けるために、まず行動して現状やニーズを把握し、そこからより良い行動のための改善計画を練るという仕組みです。この方法は、「計画を立てすぎて動けなくなる」といった過去の問題を解決するために採用されました。
称賛を通じて従業員一人ひとりの「変化を起こそうとする力」を引き出し、組織全体の成長へとつなげています。
「講演だけでなく、ネットワークとしても貴重な場だと感じた」「シンプルでフラットなイケアの人事・組織がとても興味深かった」
塚田さんによるゲストトークの後は、参加者同士でグループディスカッションを行いました「自律型の人材育成について主体性を持ったリーダーの育成をどのように取り組んでいますか? 」というテーマに関して、アイデアを共有しました。
人事や新規事業開発など様々な企業・部門に所属している参加者の皆さんからのコメントを紹介します!
「人を信じ、才能を開花させる」というメッセージが直球で伝わってきたことに痺れました。よい刺激をありがとうございました。
常にバリューに立ち返ること、個人の価値観と組織の価値観を重ね合わせて考えることなど、チームとして大切にすべき根幹の部分をお聞きすることができ、とても勉強になりました。
結局、組織体制も考え方もシンプルであることがいちばんだと改めて実感できました。
まとめ
講演の最後に塚田さんが「青臭いと言われることもありますが、人事部で働く上で、この「青臭さ」こそが必要だと思っています。これが、私が自分らしくあり続け、私が大事にしたい部分であり、私の使命だと感じています。」とお話しされているのが印象的でした。
りんごの木のワークショップをはじめ、一人ひとりが持つ考えを引き出しバリューと結びつけるための工夫を学ぶことができる時間でした。
塚田さんありがとうございました。
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