一方通行風呂
本文
Aさんがいなくなった。
温泉旅行に出かけたっきり。
Aさんの行き先は岩手県。
有名な温泉地がある。
上記の投稿を最後に、SNSが更新されなくなった。
電話をかけたが、すぐ自動音声に切り替わってしまう。
メッセージも返信がない。
こうなったら行くしかない。
新花巻を降りてバスに乗って、それから……。
バスを降りてしばらく歩くと、風が吹いた。
ん?
この違和感は何だ?
スマホが圏外になっていた。
だが幸い、GPSは動いている。
しばらく行くと、案内板が見えた。
一方通行温泉
こちらでは、指示通りに温泉を巡っていただきます。
指示は多いため、鬱陶しく感じられると思います。
その鬱陶しさも一瞬で吹き飛ぶ極上のおもてなしをいたします。
Aさんはこの温泉に行ったのだろう。
GPSは花巻市内を指していた。
花巻温泉郷の一部だろう。
指示通りに動くと、ますます違和感が増してきた。
いくら貴族だろうと、こんなきめ細やかな作法を命じられるまい。
シャンプー等が普通じゃない。
違和感を覚えながらも、順路通りに進む。
最後の看板だ。
お疲れさまでした。極上の浴室はこの先です。
す ぐ に ら く に な れ ま す 。
私は
もうすぐ
釜茹でに……。
一瞬、光が見えた。
Aさんは……。
戻れたことが奇跡と言われたのだから。
あとがき
参加企画
参考資料
おわりに
今回は『注文の多い料理店』にインスピレーションを受けて、書いてみましたわ。
n番煎じかはわかりませんが、楽しんで下さればと思います。
長話が過ぎましたわね。
それではごきげんよう。
また次の記事でお会いしましょう。
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ぜひご支援の程、お願い申し上げますわ。