高校数学を振り返る(2) ~YouTube動画を見てふと思ったこと~
このNote記事は、参考書の基本レベルの問題も自分なりに掘り下げていくと結構面白いことに気付いたサラリーマン(私は塾講師、予備校講師ではありません)が、思ったことをダラダラ書き連ねただけの記事である。今回は、『天才"河野玄斗"から急に電話がかかってきて模試を解かされました。』という動画で、YouTuberのでんがんさんが解いた問題の1つを勝手に掘り下げた。YouTube動画のリンクと、私が勝手に掘り下げた第1問(1)のスクリーンショットを以下に貼っている。本編に入る前に確認してほしい。
1. bをaの式で表す
(1)の問題は受験生にとって基本レベルの問題である。まずは基本レベルの問題を扱う参考書に載っていそうな解答を記す。
2次方程式の解と係数の関係から
$$
\sin\theta +\cos\theta = 2a,\quad
\sin\theta \cos\theta = \frac{b}{2}
$$
が成立する。$${b}$$を$${a}$$の式で表すために$${(\sin \theta + \cos \theta)^2 = 1 + 2\sin \theta \cos\theta}$$という関係を利用する。この関係式の利用は受験生にとっては基本的なテクニックで、高等テクニックではない。この関係式を利用すると$${(2a)^2 = 1 + 2\cdot b/2}$$が得られるので、
$$
b = 4a^2 - 1
$$
と$${a, b}$$の関係式を得ることができる。
2. aのとり得る値の範囲 ~2次方程式が異なる2つの実数解をもつ条件からaの範囲を絞り込む~
$${b=4a^2-1}$$という関係がわかったので、これを元の2次方程式$${2x^2 - 4ax + b = 0}$$に代入した2次方程式$${2x^2 - 4ax + (4a^2-1) = 0}$$を考える。この2次方程式が異なる2つの実数解をもつことから、判別式を$${D}$$として、$${D>0}$$となることが必要である。すなわち、
$$
D = 16a^2 - 8(4a^2-1) = -16a^2 + 8 > 0
$$
が成立することが必要である。この不等式を解くと$${a}$$に関する条件として
$$
-\frac{1}{\sqrt{2}} < a < \frac{1}{\sqrt{2}}
$$
が得られる。$${a}$$の範囲についてはこれが正答である。
3. 2つの異なる実数解がsin, cosの形であるための条件
ここで元の2次方程式$${2x^2 - 4ax + b = 0}$$に戻ろう。この方程式で「判別式>0」の条件を書き下すと$${16a^2 - 8b = 8(2a^2-b) > 0}$$が得られる。この$${a, b}$$の条件は2次方程式が2つの異なる実数解をもつことしか保証していない。そのため、2つの解が適当な$${\theta}$$を用いて$${\sin \theta}$$と$${\cos \theta}$$で表される点も考慮するためには、別の制約を課す必要がある。結論を先に記すと、その制約は$${b=4a^2-1}$$である。本章では、$${b=4a^2-1}$$という制約が追加の条件として適切である理由を、以下の【性質】を利用して説明する。
【性質】(A) 2つの異なる実数$${x, y}$$が$${x^2 + y^2 = 1}$$を満たすことと、(B) 2つの異なる実数$${x, y}$$が適当な$${\theta}$$を用いて、一方が$${\sin\theta}$$、もう一方が$${\cos\theta}$$で表されること、の2つは同値である。ここで「適当な$${\theta}$$を用いて」というのは、$${\theta = \pi/4, 3\pi/4}$$以外の$${\theta \ (0\le \theta < 2\pi)}$$から$${x, y}$$に合うものを選定すれば良いことをさす。
$${a, b}$$を$${16a^2 - 8b = 8(2a^2-b) > 0}$$を満足するように定めた場合を考える。$${2x^2 - 4ax + b = 2(x-a)^2 - (2a^2 - b)}$$と変形できるため、2次方程式$${2x^2 - 4ax + b= 0}$$の2つの異なる実数解は
$$
x = a \pm \sqrt{\frac{2a^2 - b}{2}}
$$
である。この2つの実数解の2乗の和は$${4a^2 - b}$$であることが愚直な計算で求められる(解と係数の関係を利用して求めても良い)。
そのため、2次方程式が異なる2つの実数解をもつための条件$${2a^2-b>0}$$の下で、さらに$${4a^2-b=1}$$を満たすように$${a, b}$$をとれば、2つの異なる実数解の2乗の和は1となり、2つの解は適当な$${\theta}$$を用いて$${\sin \theta}$$と$${\cos \theta}$$の形で表される。
4. 最良の解答とは? ~ただのサラリーマンの一意見~
チャート式などの参考書に記載されている解答は、まず1章に記したように、解と係数の関係と三角関数の関係式から、$${b=4a^2-1}$$と$${a, b}$$の関係を決定して、その後に判別式$${D>0}$$を考えるという解答であろう(私自身はチャート式を確認していないため、この記述は間違っているかもしれません)。ただ、そのような解答は$${a, b}$$を決めたときに対応する$${\theta}$$が存在するかの議論が不十分である気がした。そう思ってしまった私は、「2つの解が適当な$${\theta}$$を用いて$${\sin \theta}$$と$${\cos \theta}$$で表される」と同値の「2つの解の2乗の和が1」という条件で$${a, b}$$に関する条件を導出する解答が最良と考えた。私が考える最良の解答の流れは以下の通りである。
異なる2つの実数解をもつ条件から$${b<2a^2}$$を1つ目の条件として導出する。
「2つの解が適当な$${\theta}$$を用いて$${\sin \theta}$$と$${\cos \theta}$$で表される」ことと「2つの解の2乗の和が1である」ことは同値であることを言及し、この条件から$${b=4a^2-1}$$を導出する。これが「$${b}$$を$${a}$$の式で表せ」の解答である。
「$${a}$$のとり得る値の範囲」を2つの条件式に対応するグラフ(以下の図を参照)から決定する。$${ab}$$平面における曲線$${b=4a^2-1}$$の$${b=2a^2}$$の下側に存在する部分に対応する$${a}$$を求めると、$${-1/\sqrt{2} < a < 1/\sqrt{2}}$$が得られる。
上記の流れで答案をまとめた場合、10点満点中何点をもらえるだろうか。もちろん私は10点満点をもらえると思っている。ただ、「2つの解が適当な$${\theta}$$を用いて$${\sin \theta}$$と$${\cos \theta}$$で表される」ことと「2つの解の2乗の和が1である」ことの同値性の説明の仕方が悪いと減点されそうである。$${a, b}$$を固定した時に対応する$${\theta}$$が存在することは「2つの解の2乗の和が1である」ことを考えていれば問題ないはずだが、それで良いことを過不足なく説明することが求められ、受験生にはおすすめできない解答かもしれない。
(最後に)
この問題の最良の解答とは何なのか、ふと疑問に思ってダラダラと書き連ねてみたが、どう終わらせるのが良いかわからなくなってきたので、この辺で一旦終わらせることにする。今後、機会があったら加筆、修正する。
※ 本記事の内容について何かありましたら、Noteのコメント機能で私までご連絡いただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
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