このままじゃ一億総活躍社会はただの幻想に終わる

前回の記事でニートを一から会社が教育して一人前の職人&正社員にするという会社・南富士さんに感銘を受けつつ、ニート関連支援団体は少しずつ増えて入るけれども、就労支援という点ではまだまだ少ないように感じます。

それに、よーく見渡してみると、就労支援が必要な人って、ニートだけでなくて結婚・出産後の女性たちも同じなんですよね。独身の頃はバリバリ仕事できていたのに、ブランクがあるというだけでキャリアがあってもノーカウントにされてしまったりする。しばらく社会(というか会社)から切り離されていたわけだから不安で仕方がないという気持ちは、ニートの人とさほど変わらないんですよね。 

しばらくブランクがあって復職について不安な人はまだまだいるわけで、病気を患って長期間治療、治癒または寛解した人、家族の介護をしばらくやっていた人、年齢的に高齢に差し掛かり働く意欲はあるのに働き口がなく、やむなくブランクになってしまう50代以上の人などなど。

ここまでくると、社会全体がバリバリ働けるマッチョな男性思考すぎて、それに当てはまらない人を職業人として排除しているとしか思えないんですよ。とにかくフルタイムで残業をいとわず会社のために言うことを聞いてくれる人しか望んでいない社会。

企業の立場からしたら、利益を上げないといけないわけで、社員の家族を守るという意味でもマッショ思想によってかろうじて保ってきたんだろうけど、これが強くなればなるほど「女性活躍」なんていう言葉は飾りにしか聞こえないし、女性が入っていけたとしても結婚・出産であっさり女性活躍は幻想に終わるのよ(一部の先進的な企業を除く)。

人々の中に流れる「男が働いて、女が家を守る」的な思想はぜーーーーんぜん変わってない気がする。女性ですらそう思っていたりするから。

ほらほら、小泉孝太郎議員が育休取る話題でも、そのことで文句をつけた議員がいるっていうニュースあったじゃないですか。もうあの時点で日本終わったわと思ったわよね。あんたんとこの党首である首相が「一億総活躍社会」だの「女性活躍」だの言ってるのに、文句言うってどーゆーこと? ていうか、その政治家、まったく世相をわかってない。そんなやつが政治家になってる時点でもうダメじゃん。日本の政治は口先だけなんだなぁって思いますよね。

話はちょっとズレますが。

NHKよるドラ『伝説のお母さん』という番組があるのですが、予算のある『勇者ヨシヒコ』テイストに現代の働く女性たちにまつわる社会問題を絡ませたファンタジードラマなんですよ。原作はweb上で連載されていたマンガだそうです。

ドラマ初回の印象は、コメディにも振り切れず、子持ちのワンオペ主婦が復職するまでの困難をかなりシリアスにぶっこみすぎて笑うに笑えないの。子育て主婦が働くということについてのさまざまな問題を、真面目に切り込みたい!というNHKの問題意識?が強めの感じなのよね。

前田敦子演ずる伝説の魔法使いメイ。現在はワンオペ育児の最中なわけ。そこへ再度魔王が現れたため、討伐の依頼(つまり復職)がくるんだけど、ワンオペ育児なうえに「家事育児は女性の仕事」とメイ自身も思っているため、夫に手伝いを頼めないというジレンマに陥っているわけですよ。

で、夫のモブがまたクズで家事育児は妻に任せっきり。そんななので、復職するにも保育園は空いていないし、親は遠方で無理。夫が失業し家事育児を頼むもまったく役に立たず。しょうがないので子連れで冒険に出るという、まさに現代を表すかのような展開に観ているこっちもけっこう疲れます。

これだけじゃなく、育児問題は他のキャラでもぶっこんでくるんです。勇者マサムネも子持ちで育休を取った経験やイクメンぶりを発揮するも、子どもの保育園問題で夫婦衝突、預け先保育園を敵である魔界の保育園に預けるとか、盗賊ベラは離婚しシングルマザー。子どもは自分のことは自分でできるように育てたこともあり仕事に邁進できるんだけど、完全男社会な会社にいるため子どものことでなにか起こると「お母さんは帰ってあげなよ」とか言われる。せっかくの企画を出しても他の男性社員にかすめ取られマミートラックと戦っているとか、子育てと仕事を取り巻くあるあるがてんこ盛り。

最初は『勇者ヨシヒコ』の二番煎じ!とか言って文句も出たけどしっかり観てしまうあたり、どこかで女性たちの逆転劇が観たいと思っている自分がいるんですよね。

毎回観るたびにこの社会に対する胸糞悪さが湧き上がってくるんだけど、それが現実であり事実だと思うし、こうしてファンタジー? コメディ? にでもしないといけないくらい深刻だとも読み取れます。

魔王が人間界を滅ぼそうとしているのに、人間界が自ら苦しんでいるさまを観て驚くという下りがあるんですが、魔王の側近が言うんです。「人間は空気にやられている」と。ファンタジーを装いつつ真実を語るNHKよるドラ、攻めるなぁ。そうだよ、みんな空気を読みすぎて自滅してるんだよおおお……

こうして自分が感じている世間やドラマを通して、いかに会社、というか社会が(どっちもか)多様性を認める気配がなく、一億総活躍社会が幻想としか思えないんですよ。私たちは古くから続く家父長制意識に縛られたままだということも気づかないと、すべての人たちが活躍するなんてありえないから!!!

あと私達自身も、人生の中でずっと同じではなく、状況が変わるものだという認識も持たないといけないですよね。誰もが就職したらずっと定年まで同じところにいる時代は終わったし、大手企業であっても業績が悪ければ早期退職を促すくらいなんだから、人生はずっと安定が続くとは限らないし、いつまでもマッチョでいられないのよ。

いつなんどき、年齢、男女関係なく、事故、病気、転職、家族の問題、お金の問題、いろんな問題によってルート変更を余儀なくされる。そうなったら、お互いにいろんな在り方、働き方やペースがあっていい。そういう人たちが大多数になったら、もっとみんなが生きやすいのにね。

個人レベルで意識を変えることも必要だし、その上で企業側も雇用形態や南富士さんのような育成研修を取り入れるとか、インターン制度を取り入れるなどで新卒以外にも門戸を開き、あらゆる人の可能性を高める方向に行くようになったら素敵だなと、こっちは幻想で終わりたくないなと思うのです。




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