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日記・33:天使

火曜日のお昼、理恵が無事赤ちゃんを出産した。

一週間ほど予定日より早く産まれた。
この日は素晴らしい日だった。

長岡の病院を訪れ、207号室に入ると、ちょうど真ん中が理恵のベッドだった。そのわきで赤ちゃんが眠っていた。とても不思議な感じがした。
生まれたての赤ちゃんをこんなに間近で見たのは人生で初めてだった。

2920グラムの男の子で、母子共に健康であるとのことだった。
ちょっと触っただけで折れてしまいそうなか弱い手足と小さな体で、まるでお人形さんのようだった。
くるくる表情を変えてしかめっ面をしたり、あくびをしたり、何時間見ていても飽きないなぁと思った。
何となく自分に似ているような気がした。 

2日目、前日とはうって変わって赤ちゃんは元気一杯だった。

泣いたり笑ってみたり、日に日に、しっかりとしていくんだろうな。
抱かせてもらうと、温かい体温をじかに感じた。
赤ちゃんは泣き止み、目をかすかに開いて自分を見ていた。
あんなに愛くるしい目で見られたら、何だか自分という人間がとてもちっぽけで、ダメな人間に思えてきた。

赤ちゃんは純粋、無垢で、無邪気で、本当の人間そのものだと思った。
大人はずる賢く、打算的で、あんな笑顔は絶対に出来ないだろう。

ママが席をはずしている時、抱き抱えながら、窓から雪を見せた。
赤ちゃんは何もわからないまま、腕の中で小さくなって、目を開けたり閉じたり、くしゃみをしたり、それを眺めていたら目頭が熱くなり、涙を堪えるのに苦労した。胸が熱くなり、この子のことをしっかり守らねば、と思った。人生の全てを賭けて、この子を守っていこう!

名前は「瞬」にしようと思う。

辞書で調べてみると、“瞬きするほど短いこと”

と書かれている。
自分は美しいものが好きである。
真に美しいものの命は、流れ星や花火、降り落ちる雪の結晶のように一瞬である。その一瞬の美意識、美徳を込めよう。
そして本当に良い行いや人助けは、誰かが見ている時ではなく、人が瞬き(まばたき)をする間にこそするべきだと思う。

はかない命を大切にし、人の見ていないところで優しい行いが出来、一瞬一瞬を大切に生きてくれるよう願いを込めて。
『瞬』と命名しよう。





私の記事に立ち止まって下さり、ありがとうございます。素晴らしいご縁に感謝です。