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日記・69:それでも高く

今朝、若菜は回復しており、瞬は依然体調がおもわしくない様子だった。
今日から二日間は、母が在宅のため、心配はあるけどある程度は任せて、自分は仕事に行って来ようと思う。
体調が急変したり、何か変化があればすぐに駆けつけるつもりだ。

暖かい季節になれば、子供の病気も減るだろう。
一日も早く、元気になってほしい。
二人の子供が同時に病気にかかるということは、嵐の中の航海のようだ。
行先も分からず一寸先は闇のような気持ちになる。
しかし、落ち着いて舵取りをし、回復するのを待ち、じっくり様子を見ながら少しずつ晴れるのを待つしかない。
やれることをやるだけだ。
子供も必死に戦っている。
焦らず、看病し安心させてあげたい。


16時頃、母からお店に電話があり、瞬が点滴のため病院に来ているとのことだった。そして、再度、ひきつけを起こしたと聞き、慌てて病院へ向かうことにした。一月の時と同じく、点滴時のひきつけだった。
あまりにぐったりしている為、小児科の医師に再度診察してもらい判断を仰いだ。
脱水症状がひどく、一時的な点滴だけでは回復が見込めないとのことで、急遽入院が決まった。

母が付き添い、自分は家に戻り入院の準備をした。
これから交代し、看病しようと思う。

母も心配し、コーヒーを買ってくれた。
「仕事は大丈夫とね?最近早退とか休むとが多かでしょ?」
と、案じていた。

「なんとかなるけん、心配せんでよかよ。仕事の代わりはおるけど、こっちは代わりはおれしかおらんけん。ちゃんと事情話して、それでもやっぱりやっていけんなら、そん時転職も考えなんけどなぁ」


母は瞬を心配するあまり、こんな感じのことを病室で話していた。

瞬が、ママのことをしっかり覚えているので、ママが淋しくなって瞬を天国に呼んでいるんじゃないか、だから瞬が、早くママのことを忘れる方がいいのかも知れない、そう、しみじみ語ってくれた。

下を向いて聞いていたが、すぐに頭を振り、両手で自分のほっぺたを叩いて母と自分自身に言い正した。

そんなことはないけん!病気はしょうがないけん。
これば乗り越えて、子供は強くなっとだけん、今は耐える時よ。


決して忘れてはならない。
自分には大きな思想も哲学もない。
今自分を動かしているのは、妻のの意思、意志、希望に他ならないのだ。
妻がどんなママだったか。
いつも瞬と若菜を抱っこし、ニコニコ笑い、駅の近くまでおれを迎えに来てくれていた。
いつも家族の幸せを考えてくれていた。
苦しい時、辛い時、いつも見守っていてくれている。
それが今の自分の信仰なんだ。


母もだいぶ疲れていると思ったので、先に家に帰ってもらうことにした。
若菜のご飯を頼み、見送った。

「いつもごめんね。」と言うと、「よかよか、こがん時はみんなで助け合わなんけんね。あとでおにぎりと、なんかおかず持ってくるけん」そう言って病院を後にした。

病室に戻り、点滴中の瞬の髪を撫で、ほっぺを触ると、熱は少し下がっているようだった。ギュッと握った小さな手の中に人差し指を入れた時、軽く握り返してくれた。


なぜか涙が出てきた。
なんの涙かわからなかった。
今まで、バタバタの毎日で、悲しむ暇もあまりなかった。

感情をどう表現していいか分からない時、涙が出るんだと思った。

上手くやっていけるんかな、元気な子に育てきるとやろか、子供は幸せになれるんかな、親にも色々心配ばっかりかけとるな、おれが亡くなってた方が子供は幸せやったんじゃないかな、あれこれ考えた。


バカタレが! しっかりせんや!アホか!
なんでん都合よく考えんなよな! 
からだ、まだまだ動くやろ?
この子達、立派に育てなんやろ?なんやこんくらい。
父親やろ?甘えんな!クヨクヨすんな!


強がりかも知れないけど、負けてたまるか。
大きく深呼吸したら少し落ち着いた。
瞬も若菜も毎日頑張ってる。おれも頑張ろう!


きつい時、苦しい時、足元を見るのはやめた。
辛い時こそ上を見よう。

無限に広がる、天を!!



 

 


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ぞうさん。
私の記事に立ち止まって下さり、ありがとうございます。素晴らしいご縁に感謝です。