日記・55:水花
朝からどんよりと曇り、眼前の空も霧に覆われ少し陰鬱ではあるけれど、フェリーの汽笛が聴こえるとどこかしら神秘的な雰囲気であった。
子供達を保育園へ送り、家へと向かう途中、ぽつりぽつりと小雨が散らつき始めモノクロの一日が始まろうとしている。
曇天の田舎は、都会と比べなお一層薄暗く感じ、寂寥感に包まれるようだ。何かの起こる前触れのように感じるのも、田舎の持つ独特の性格なのかも知れないが、幼い頃、もちろん夏休みなどの煌めく晴天も楽しかった反面、土砂降りの大雨や家屋を猛襲する台風など、近所の子供達と避難所で過ごし、兄弟姉妹で家で集まって時間を過ごす事がなぜか子供心に残っている。
さて、瞬と若菜を保育園に送り、お墓参りをして家でニュースを何気なく流していると、ある殺人事件の話題になっていた。
胸が痛くなり、少しめまいがした。
それ以上観る事が出来ず、テレビを消した。
自分はこの頃、一人でテレビを観る事がほとんどない。
そのようなニュースや、人が亡くなるという話題から無意識のうちに体が拒絶反応を起こし、足が遠ざかっているのかも知れない。
はっきりとした事は分からないが、もっと気をしっかり保ち、前向きにならなければ・・
世の中が平和であればなぁとふと思う。
何か心温まる話題で世界中の人がお腹の底から笑えて、子供もお年寄りも、動物達も、苦痛がなく、今生きている事実を幸福に感じ、両親に感謝出来るような日がいつか来て欲しいな。
子供の健やかな心を大きく育めるような世界になるといいなぁ。
この子達が大きくなる時、どんな世の中になっているんだろう・・
無事仕事を終えて帰宅した。
軽く食事を済ませて、瞬と若菜に絵本を読んであげた。
二人とも目をクリクリさせて聴いていた。
人には偉いも偉くないも、ないと思う。
自分に出来ることを精一杯やるだけだ。
名のある有名な花になれなくても、たとえ人足の踏み込めない高山の崖に咲き、人知れず枯れる無名の小さな花のようなような人生でも、おれはそれでいい。
花を咲かせる努力をしよう!
たとえ枯れても、また逞しく生える小さな花を。