もこもこ雲探しは止められない
もこもこ雲。
ボンタン飴。
長縄。
グリコ。
ねじれの位置。
交通安全ポスター。
伊達眼鏡。
メトロノーム。
カメレオン。
松葉杖。
私がこの作品を思い出すきっかけは日常に溢れています。
私はこの作品に出会うことができて本当に良かったと、読み返すたびに何度も思い直します。
グリコをすれば「グー」でしか勝てない少年を思い出しては、グーでも進み続ければきちんと前に進むのだと思うことができます。
カメレオンにシンパシーを感じてしまう少女を思い出しては「みんなぼっち」という言葉に想いを馳せます。
ねじれの位置にいる小学生2人を思い出しては、絶対に交じり合わない真っすぐ伸びた2本道を羨ましく思います。
「愛読書」というと堅苦しく、しかし「バイブル」という言葉で片づけてしまうにはあまりにも味気ない、私の真ん中にずっとある作品。
その作品の中で一貫して描かれる「もこもこ雲」。
いつか「これが『もこもこ雲』だったのか」と思える雲に出会いたい気持ちと、一生を通して由香ちゃんと恵美ちゃんと一緒に「もこもこ雲」を探し続けたい気持ちが、いつまで経っても私の心の中でせめぎ合っています。
私は「表情が暗いな」と感じた時はいつも、恵美ちゃんのアドバイス通り一度地面を向き、それから顔を上げます。
空気を得ることで、表情が柔らかくなるそうです。
そんな助言を実行しながらふと顔を上げた時、そこに「もこもこ雲」を見つけることができたらどんなに幸せでしょう。
杏。
『君の友だち』重松清
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