私の死体を探してください。:写真の部屋(無料記事)
現在放送中のドラマ『私の死体を探してください。』は「note創作大賞」を受賞した作品(原作:星月渉さん)が映像化されたものです。
私はテレビ東京系のドラマポスターをいくつか撮影しており、今回も撮影とアートディレクションをすることになりましたが、プロデューサーの阿部さんは私の仕事の仕方を理解してくれているので今回もスムースに進行しました。ありがたいことです。
最初にデザインも含めて10パターンほどのポスター案を出したのですが、その中には背景をシンメトリーにして主人公の後ろ姿を撮るというものがありました。こういったドラマのキービジュアルで「メインキャストの顔が見えない」というのは聞いたことがありませんが、主人公である小説家が忽然と姿を消すという脚本を事前に読んでいたので、一応その案も入れておいたのです。
すると、そこにいたスタッフのみんなが「これがいい」と言ってくれて、即決しました。このあたりはテレビのいいところで、企業の広告などだとその数十倍の会議を経ないと決定は出ませんし、「やはり顔が出ていないのはマズいだろう」という人が必ずひとりは出てきて安全策に落ち着くものです。
自分の一番やりたかった案が通るとやる気は倍増するもので「こんなダサいの撮りたくないなあ」と思いながらの仕事などしたくありません。結局できあがったものには自分のクレジットが載ってしまうので、言い訳をするのはくだらないのです。やる気がなければやめていいのがフリーランスである自分のプロデュース作業ですから、仕事を引き受けた以上、文句を言ってはいけません。自分がやりたいようにできないうちは職能としての敬意が払われていない証拠でもあります。
主演の山口紗弥加さんも、富士の樹海の中で後ろ姿を撮られるというのは不思議な気分だったと思います。もうひとつのポイントは自分でアートディレクションをしたこともあって、最終的なデザインでは番組名が入ると画面全体が騙し絵の顔に見えるようにしようと考えていました。
両手に持った鳥かごが眼、スカートの部分が鼻、タイトルが笑った口です。
ポスターに使う以外の用途のため、振り向いたところも念のために撮っておきましたが、富士樹海での2カットの撮影は合計5分ほどで終わりました。
このような「目的のある撮影」は、現場で悩むことがないように完璧な準備で臨みます。使うカメラやレンズ、レイアウトに合わせたフレーミングなどはシミュレーションしてありますから撮影は一瞬です。
多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。