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知らないルールブック:PDLB

自分が知らない色々なところに行かなければ、といつも思っているのですが、ついつい居心地のいい「いつもの街」に足が向いてしまいます。私の場合は台北とパリで、理由は友人がたくさんいるからです。

自分が外国に行くのは「座標を得る」ためで、グリッドのない場所に立っている自分の位置を知ることはできませんし、相手に伝えることもできません。ここには国民性という問題が絡んでいて、「座標とは自分自身が決める場所である」といったような、抽象というか、相対性を無視しておけば絶対に負けない勝負になるという『ルール無用の考え方』を好む傾向があります。

「日本人が駄目なところは」とTwitterやThreadsで書いてみるといいです。一瞬でニュータイプの国粋主義者たちが「そんなに外国のほうが優れていると思うなら日本から出て行けばいいんですよ」と大量のリプライをくれます。彼らは目盛りが描かれていない白紙の場所に立って、そこは自分の所有物であると思っています。もちろん故郷を悪く言われていい気分になる人など誰もいないことはわかっています。そうではなく、彼らのセンサーは出てきた単語に対して反射的に反応しているのです。

今のリプライの例も、ある程度の教養と文章能力を持った人を好意的に想定させてもらいましたが、実際は「外国好きなら出て行けやボケ」といった言い方がメジャーです。日本は鎖国という歴史を持っていますから、自虐的に「ガラパゴス」という比喩を使うのが好きですが、それは誰が言うかが大事で、例えばアジアの国の人に言われたら烈火のごとく怒るでしょう。言語とは文脈が大事ですから「日本は何も進化せずにガラパゴスのような既得権益の経済構造だ」とシンプルに言うのは悪意があるでしょう。でも「日本の文化は、外部からの情報や病原菌のようなものから物理的に守られてきたことで思想の純粋さを否応なく保ってきたというガラパゴスのような側面もある」と表現するのとは正反対のはずです。しかしスイッチは「ガラパゴス」という単語なので、どれを見ても「ふざけんなボケ」と反応します。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。