コミュニケーション収支:Anizine
質問されるのが苦手です。初対面の人と話すとき、矢継ぎ早に質問をされると疲れてしまいます。お互いを知り合うために相手のことを聞くのは大事だと思いますが、バランスが極端に「知りたい側」に偏ってしまうとインタビューのようになってしまいます。その不均衡は、持っている情報力の差にあります。
たとえばオリンピックの金メダリストに会ったとき、優勝したあの瞬間はどんな気持ちでしたか、とか、毎日何時間練習するんですか、など、知りたいことは多いでしょう。でもそこはグッと我慢しなければなりません。その場にいるふたりの情報量の不均衡を埋めるためには、自分の情報も同じだけ提供するべきだからです。そう言うと「私は一般人ですから、お話しするようなことは何もないです」と言います。
初めて金メダリストに会う人は興奮して聞いてくる熱量がスゴいですから、特殊な体験をした人は毎回、飽き飽きするほど同じ質問に答え続けなければなりません。金メダリストだって初めて会う知らない世界の人のことを知りたいかもしれないのに、そこで「一般人の私のことはいいです」と言われると収支が合わなくなります。この収支をうまくコントロールできる人はコミュニケーション能力が高いと感じます。
実はどんな人であってもパーソナルな話には同様の価値があるのですが、金メダルだとか、有名だとか、わかりやすい価値観で切り分けられてしまうとその場はとてもつまらないものになります。ある多数の集まりの中にひとりの名の知られた人がいると、だいたいその人が全員から質問攻めに遭います。ですから特殊な立場の人たちはお互いを特別扱いしない「特別な人同士」で集まるようになります。これは当たり前のことです。
昔、ある場所に著名な歌手がふたり現れたときのお話をします。
多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。