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コミュ障の君へ:Anizine(無料記事)

私は30代の中頃まで極端な人見知りでした。デザインという仕事はひとりでする作業が多く、打ち合わせなどをやり過ごせばあとはずっとマイコンに向かってカチカチやるだけで人と会わずに済んでいました。撮影のときに100人近くがスタジオにいるとウンザリしました。「その場で直接何かをするヤツ以外は帰れよ」と思っていました。撮影、照明、美術、スタイリスト、ヘアメイク、それぞれのアシスタントが数人ずつ。タレントのマネージャーが3人、広告代理店の会ったこともない営業やマーケティングが若い部下を数人連れてきて、彼らは撮影の間中、『週刊SPA!』を読んでキットカットとお弁当だけ食べ、タレント部分の撮影が終わると帰っていくのです。

そんな現場にいるのが人見知りの私にはとても苦痛でしたが、今は人体実験のように「コミュ障はやめた」とスパッと気持ちを切り替えました。写真を撮る仕事をするようになって、人見知りなんて言っていられなくなったからです。会ってすぐに一対一で写真を撮らなくてはいけない。そのためにリハビリをしたのですが、ポイントはいくつかあります。コミュ障を自認している方に何かヒントになれば。

私は『ワタナベアニ』というリングネームを使っていますが、これはかなり有効に機能しています。ワタナベアニがどれだけ批判されようが、本体である近藤健一は何も傷つかずに済みます。つまりワタナベアニを演じることで他人との距離に悩まなくなったわけです。芸名をつけることは効果があるのでぜひお試しください。今では病院くらいでしか呼ばれることがないので本名は忘れ気味ですし、実の母親も「アニさん、仕事が忙しそうだね」と言うようになりました。

芸名は一度つけたら変えてはいけません。それで認知されるからです。ですから慎重に決めてください。あなたが山田優子さんだとしても、「ゆうこっこ」みたいな名前は避けた方が賢明です。友だち同士のあだ名のようなものは仕事で使うのには適していません。日本のビジネス界はまだまだ保守的ですから名前が認知されたとしても「ゆうこっこ」に払うギャランティは「八間川優姫」名義よりも少なくなります。幼稚ゆえにナメられるからです。

そして、八間川優姫になったら、山田優子を監視役に置き、優姫としての振るまいが間違っていないかを俯瞰してマネジメントするのです。自分という舞台上の役者を演出家が動かす感覚だと言えば伝わるでしょうか。自分が主役として演じていると思うから観客の目や批評家の言葉に傷つくわけで、批判や誹謗中傷は、優子と優姫の隙間に存在するブラックホールに捨ててしまえばいいのです。

私は一日に一度は知らない人と話すことを自分に義務づけています。以前の人見知りの私からは想像もつきませんが、タクシードライバーや店員、公園でボーッとしている人などと話します。コミュニケーション・スキルというのは実践あるのみですから『3日で人見知りが治る』みたいな本をいくら読んでも意味がありません。

私の場合は知らない人に写真を撮らせてもらうくらいは平然とできるようになりました。それがビジネス・スキルに直結するからで、モジモジして撮れなかったら写真は「無」です。たとえお願いして断られたとしても元々がゼロですからマイナスではありません。運良く撮れればプラスになります。

そしてここで書いているように、不特定多数の人にマガジンを読んでもらえば収入にもなります。本物のコミュ障の人はnoteだけで給料と同じくらいの収入を得ることを真剣に考えてもいいでしょう。誰とも会わずに生きていかれます。そのためにすべきことが決まればあとは簡単です。YouTubeなどは撮影や編集が面倒ですし、くだらない作法に則らないと視聴数が稼げないのですが、noteは自分勝手な文章を垂れ流しているだけでいいのです。あなたが毎日ソーシャルメディアに無料で書いていることをそのまま有料にしたとしても、酔狂な誰かが課金してくれるかもしれません。

というわけで毎回書いているのですが、無料記事を読んだらそのあとはちゃんと定期購読をするのが対人スキルとして大事、と徹底しておきます。


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Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。