くだらない結論：Anizine

「お前の本、まあまあ売れてるみたいじゃん」
　「うん。ありがたいことに」

カメラは、撮る人を写しているんだ。

「おいおい、会話の最中にリンクを貼るなよ。野暮だな」
　「売るんだよ。一冊でも多く」
「お前って、そんなにグイグイいくタイプだったっけ」
　「違うよ。でも宣伝とか告知はスカしていたらダメなんだ」
「それはわかる。無名のおっさんが書いたわけわかんない本なんて、エレガントに構えてても売れるはずないもんな」
　「そう。出せば黙っていても売れるのなんて村上春樹さんくらいだ」
「あの人の本って、出版されるまで極秘で進行してるだろ」
　「うん。だから印刷所なんかから情報が絶対に漏れないように、細心の注意を払ってるらしいな」
「そうそう。都市伝説かもしれないけど、初校までは別の著者の名前になってるって」
　「俺もそれ、聞いたことある」
「それと比べるとお前なんか聞いたことない名前だから、ラクだよな」
　「ラク。有名にならないでモノが売れるのが最高なんだよ」
「有名になりたい出たがりのヤツって、その危険がわかってないんだよね」
　「そう。一番いいのはボーカルがものすごく有名なバンドの、顔を知られていないメンバーだよ」
「ああ、わかる。収入はとてつもないけど顔はまったく印象にない人な」
　「そう。それがベストな生き方だ」