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気持ちを切ること:Anizine

ポジティブであろうがネガティブであろうが、感情を素早く区切ることが大事だと思うようになりました。アンガーマネージメントなんていう言葉もありますが、自分の感情に長い時間浸っていると先に進みませんし、かさぶたをはがして「傷の存在」を確認してもいいことは何もありません。

私はある時期から意図的に「気持ちを切る」ことを意識してきました。いつまでも同じマイナス思考を言い募っている例をソーシャルメディアなどで見ることが多かったからです。怨念とでも言えるでしょうか。地縛霊というのはそこに怨念が残ることですが、霊も気持ちを切り替えれば成仏できるでしょうに、いつまでもそこにとどまっています。死んでいるのは承知ですが、不健康です。

無知丸出しの若い頃とは違ってもう40年以上生きていますから、多くの失敗のサンプルを得ています。その瞬間は「この世の終わりだ」くらい悩んでいたことも数年経つと、かさぶたがあった場所すら忘れてしまうものだとわかりました。20代の頃にとても気が合わずにモメた人がいたのですが、当時はその人とモメたことばかりを毎日グジグジと考えていました。つい先日そのことをふと思い出したのですが、彼の名前すら忘れてしまったことに気づきました。どんなに面倒くさいトラブルだって時間が経てばそんなものなのだと思えば気が楽になります。

かさぶたをはがす欲求は自分に起きた悲劇を再確認して味わうことです。つまり快楽であり、こんなに可哀想な自分、あの人は間違っていて私が正しいと皆に理解して欲しいという自分、そういった『自分の見本市』がソーシャルメディアです。誰もが自己主張をし、貧しさや豊かさや、苦悩や優越を書き連ねています。心が弱い人々はそれらに取り囲まれると心が疲弊します。私はあの人ほどいい生活をしていないとか、あの人より優雅な生活をしているとか、他人との比較ばかりになってしまうからです。

『カメラは、撮る人を写しているんだ。』という本のレビューに、こんなのがありました。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。