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刺青が入った男:博士の普通の愛情
昔、好きだった人の名前をFacebookで検索していた。そういう気持ち悪いことをするなと友人に言われるのだが、暇なときにたまにやってしまう。「H」は旧姓のままやっていたのですぐに見つけることができた。最後に会ったのは15年前くらい。
いきなり目に飛び込んできたのはふたりの男の子の写真だった。幼稚園と小学校一年くらいか。友人を見てみるとミュージシャンだらけで、おそらく旦那がそっち関係の仕事をしているんだろう。でも一度も写真が出てこない。好きだった女性がどんな男と結婚したのかは見てみたいんだよな。
治りかけたかさぶたを剥がすように、なぜ彼女は俺じゃなくてその男を選んだのか、自虐的に楽しみたい。郊外にあるらしき一戸建てのリビングルームの広さを確認する。まあまあ広いな。人間は比較する生き物だし、男はさらにそうだ。経済的な問題だけじゃないけど、もし彼女が貧乏暮らしをしていたら、俺は少しだけ優越感に浸れたのだと思う。
家族でグアムに旅行に行っている写真。旦那が撮っているんだろう。彼女と子どもふたりが楽しそうにビーチにいる。彼女は昔と変わらないスタイルを維持しているのがわかる、きわどい水着を着ていた。脇腹に小さな傷がある。その傷ができた理由を俺は知っているが、旦那は知らないだろう。
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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。