見出し画像

京都で辱め:写真の部屋(恥の無料記事)

昨日撮影が終わって、今日は東京に帰るだけでした。だいたい京都で用事があるときは観光などはしないので、駅に直結のグランヴィアホテルに泊まります。新幹線のホームの上階にあり、私のような横着者には最適なのです。今回は別のところでしたが、駅から徒歩1分です。

11時にチェックアウトをしてすぐに帰ろうと思ったのですが、駅の案内板に「コインロッカー」という文字が見えました。そう言えばコインロッカーって何十年も使った記憶がありません。重たい撮影機材をすべてロッカーに預け、カメラ一台だけ片手に四条河原町のほうに向かい、どこかで食事をしようと思いました。あまりにも暑いので、まずは喫茶店を探しながら歩いていると『鍵善』の前につきました。京都に来るたびに寄ろうとするのですが、だいたい行列ができていて、並ぶのが嫌いなので入れた試しがありません。中を覗くと今日は空いています。この存在の耐えられない暑さに対抗できるのは「葛きり」しかない。冷たい緑茶と葛きりが運ばれてきました。

私がこの写真を撮ったところ、店の女性店員が近寄ってきました。しまった。こういう観光客が集まる老舗では大げさに写真を撮っていると嫌われるのだろう、と一瞬ヒヤッとしたのですが、女性店員は無言で奥に見える蓋をくるっと裏返してくれたのです。

それで撮ったのが二枚目のこの写真。アートディレクター・写真家としては、こっちのほうが店の紋が見えて、いいに決まっている。しかし「お重の蓋のようなものは裏返しておかないと無作法だし」と思って無意識に妥協してしまっていたんですね。それを見た店員が瞬時にバエるように直してくれた。恥ずかしい。辱めとしか言いようがありません。

店や公共の場で、自分が撮りたいものを撮りたいように動かすというのは御法度だったり、するにしても細心の注意が必要ですが、とにかく負けた感じです。


ここから先は

0字

写真の部屋

¥500 / 月

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。