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何かの1:Anizine
ひとつの仕事を終わらせた安堵から、椅子で数十分ほど気絶していました。何かの楽屋のような場所にいる。周囲の人々が次々にステージに出て行き、もしかしたら私は何かの賞レースに出ているのではないかと気づきました。
「何1グランプリか」すらわからない。
最初は「せっかくだからちょっと掻き回してやるか」くらいの傲慢さで順番を待っていました。持ち時間が4分か5分かわかりませんが時間になればランプかブザーでわかるだろう、と余裕でナメていました。しかし出番が近づくにつれてステージで何を喋ればいいのか不安になってきました。
ここにいるのは、何百回、何千回とネタを磨いてきた人たちなのに、自分のような素人が何も考えずに観客の出ても無言になってしまうのではないかと思うと、冷や汗が止まらなくなりました。自分が数分間よどみなく話せる内容とは何か、データ容量の少ない脳のフロッピーディスクを棚卸ししてみても、面白いことが話せるだけのストックがないことは明白です。
巨大な会場での生放送という緊張感。司会は大御所の芸人で、気が短いことで知られています。私の名前が呼ばれますが、ステージ袖まで行ったところで帽子を忘れたことに気づいて楽屋に戻ります。
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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。