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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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2025年1月の記事一覧

翼を授けない:博士の普通の愛情

ミカが、スマホでInstagramの画面を見ながら話していた。 「ユウコの知り合い、昨日から外国に出張なんだね」 彼は40代の独身サラリーマンで、ユウコとはまだ恋人とは言えないが仲のいい友人だという。 「うん。ジョージアだっけな、なんか仕事で行ってる」 「ジョージアって、どっちの」 「どっちって」 「アメリカか、旧グルジアかってこと」 「そんなのあるんだ、知らない」 「ちょっとはニュースとか見たほうがいいよ」 「はーい」 独身仲間であるユウコに結婚して欲しくない。ミカ

大人向けのジョーク:博士の普通の愛情

たまには大人向けのジョークを書いてみますが、こういうのが嫌いな人もいると思うのでメンバーのみに。 エレーナおばあさんは、猫のジャックと暮らしていました。 敬虔なクリスチャンであるおばあさんは毎日お祈りを欠かさず、猫と話しながらのんびり過ごしていたのですが、ある日、郵便受けに封筒が入っているのを見つけました。差出人のところには「神」と書いてあります。 中を見て見るとふたつの錠剤と手紙が入っていました。 『敬虔なるエレーナよ、汝の欠かさぬ祈りは届いておるぞ。 その褒美として

Mのストーカー:博士の普通の愛情

ある日、恐ろしいことに気づきました。 私は関西に住む30代の主婦ですが、「M」という不要品を売買するサイトに服などを出品していました。子どもが大きくなっていらなくなったものを譲りたかったのですが、引っ越してきたばかりであまり近所にも付き合いがなく困っていたところ、友人のリカコからMの存在を教えてもらい、いくつか子ども用品を載せてみると意外と高い値段でも売れることがわかりました。 主人のマコトが一度もつけなかった派手なネクタイや、体型が変わってしまって着られなくなった私の服

下着泥棒:博士の普通の愛情

「母さん、さっきの電話は誰だったんだ」 「ジュンからですよ、あなた。なんだか元気がないみたいで」 「一人暮らしを始めてまだ半年なのに、ホームシックか」 「この前、ジュンと化粧品を一緒に買いに行ったんだけど」 「うん」 「あの子のアパートの部屋、一階でしょ。それを気にしてるみたい」 「ああ、物騒なことがあるかもしれないな」 「そうなの。怖がりだから心配で」 翌日。 「もしもし、お母さん。ジュン」 「ジュンちゃん、どうしたの」 「怖くて。昨日の夜、帰ってきたら、外に干していた

青いハート:博士の普通の愛情

私が個人的なルールとして決めていることがあります。日常の会話でもソーシャルメディアでもダイレクトメッセージでも、女性の名前を呼び捨てにしないことです。男性も呼び捨てにはしませんが、重要なのは女性です。 ある若い夫婦とそれぞれの両親が同席している場でのことでした。若い旦那さんが奥さんを「ユミコ」と呼んだのですが、彼の父親が「おい、ご両親がいる場所ではユミコさんと言いなさい」とたしなめたのです。これは常識的な礼儀作法ではあるのでしょうが、私の印象に強く残りました。 知り合いの

父のピアノ:博士の普通の愛情

家に帰ると、珍しく弟の妻が来ていた。いつものことだが弟は仕事が忙しいとのことで彼女がひとりであいさつに来たのだという。忙しいのは誰だって同じ、私は家族をないがしろにする弟のことが好きではなかった。大人としての常識をわきまえなくてもいいと許しが出るのなら、「嫌いだ」とはっきり言いたいくらいだ。彼は子どもの頃から大人の顔色をうかがう嫌なガキだった。大人はそれに気づかないが、子ども同士にはわかる。都内の商社に勤めていて子どもはおらず、彼の妻もまた好きではなかった。弟と同類の動物であ