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博士の普通の愛情

恋愛に関する、ごく普通の読み物です。
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2024年12月の記事一覧

ギュッとなる:博士の普通の愛情

「パパ、あのさ、いじめってよくないことだよね」 「もちろんさ」 「そうだよね」 「健太郎、もしかして学校でいじめられてるのか」 「いや、いじめられているのはボクじゃないんだ」 「誰だ。友だちか」 「違う」 「言いにくいかもしれないけど、話してごらん」 「夜にね、寝室からママの声が聞こえてきたんだ。『いじめないで』って」 「そうか。言いにくいという意味が変わってきたけど」 「胸がギュッとなったよ。どうしてママはいじめられてたの」 「ママはいじめられてはいないんだ。ちゃんと

J.M.の存在:博士の普通の愛情

最近、好きな人ができたんだ。どんな人かは俺もよく知らないんだけどマッチングサービスとかではないよ。あれは顔写真がついてるし、プロフィールも書いてあるから。 お前、さっきから何言ってんの。 どんな人なんだろうな。あの人のことを思うとワクワクして胸がキューンとするんだよ。こんな気持ちは久しぶりだ。 まったく意味がわからないから、何がキューンなのか整理して最初から話せよ。 先月、アメリカの美術雑誌で一枚の絵を観たんだ。あれはテキサスあたりなのかな、何でもない街の風景が描かれ

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IDは、watanabeani です。

ビジネス出家:全マガジン(無料記事)

恒例の平林監督へのホースライディング記事です。イギリス英語で乗馬はホースライディング、米語ではホースバックライディングです。皮肉屋のイギリス人は「アメリカ人は『背中』と言わないと、どこに乗るのかがわからない」と言います。日本の場合は「乗馬」なのでどこに乗るのかはわかってますね。というわけで監督の記事の尻馬に乗ってみます。 「中年のあるべき振る舞い」に関して平林監督の投稿はいつも面白いので、つい尻にノリで乗ってしまいます。沖縄料理っぽく言えばシリノリノリです。 真面目な話、

97%の結婚:博士の普通の愛情

10年以上会っていなかった友人と食事をしたとき、彼が子どもの写真を見せてくれた。結婚していたことすら知らなかったが、ふたりの可愛らしい男の子はヨーロッパ風の顔をしていた。 「奥さん、外国の人なのか」 「うん。ヘルシンキで知り合って」 「フィンランドの人か」 「そう。ふたつ年上で、身長は俺より5センチ高い」 ヨーロッパで国籍が違うパートナーは何も珍しくない。彼らのルーツも複数の国が重なり合っているのが普通で「私はイタリア系ギリシャ人で、彼はドイツ系フランス人なんだ」などと言

彼女とジップロック:博士の普通の愛情

年上の友人に、意味があるんだかないんだかわからないことばかり言う人がいた。つい最近、彼が言ったひとつの言葉が頭に浮かんで笑ってしまう。 僕はある女性と長い間同棲していたんだけど、彼女は同じ地方の出身で上京してからすぐにできたガールフレンドだった。今は何も気にしないけど、当時はわざわざ東京に出てきたのに彼女が同じ地元出身というのが恥ずかしく、友だちにはほとんど紹介していなかった。彼女の田舎臭い言動や振る舞いを見るたびに自分の鏡を見ているようでやりきれなかったのだ。「大きなビル

刺青が入った男:博士の普通の愛情

昔、好きだった人の名前をFacebookで検索していた。そういう気持ち悪いことをするなと友人に言われるのだが、暇なときにたまにやってしまう。「H」は旧姓のままやっていたのですぐに見つけることができた。最後に会ったのは15年前くらい。 いきなり目に飛び込んできたのはふたりの男の子の写真だった。幼稚園と小学校一年くらいか。友人を見てみるとミュージシャンだらけで、おそらく旦那がそっち関係の仕事をしているんだろう。でも一度も写真が出てこない。好きだった女性がどんな男と結婚したのかは