銀の指輪:博士の普通の愛情
ここ最近、食べ物や飲み物などを買いに行く数十分以外は、ずっと仕事場にこもりきりだ。だからこれはかなり確率が低い、「誰かにとって不運な出来事」だと思っていい。
外資系の高級ホテルの前に、目立つ赤いイタリア車が停まる。助手席から知人の女性が降りてきたのが見えたので近づいていくと、見知らぬ男性が続いて降りてきた。その女性は僕の友人の奥さんだ。
ふたりはごく普通の客より、ほんの少しだけ足早にホテルの中に入って行った。イタリア車はホテルマンによって地下の駐車場に運ばれていく。クルマ