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アニメーターの人材流動性の高さは令和的なのか?

『アニメーション制作者実態調査』によると、アニメーターの約4割が正社員である一方で、それ以上に自営業やフリーランスが多いことがわかります。

当然、これは他業界に比べて、明らかに人材の流動性が高いと言えます。正社員全盛の時代で、約4割しか正社員がいないのですから。

そのうえ、アニメ制作においては「動画」や「仕上げ」などの業務をアニメスタジオに外注するのはごく普通のことです。そう考えると、アニメ業界はあらゆる業界の中でもっとも人材流動性が高いと言えるかもしれません。

現在、ビジネス界隈では「テクノロジーが進化していくたびに人材流動性を高めるべき」という言説があります。社会の変化に企業が対応するためです。

具体的には、プロジェクトごとに職場を移っていくことが理想とされています。会社に長期的に所属するのは「役員」だけで、それ以外の従業員は転々と職場を移っていくのです。

これは夢物語のように見えますが、現在、生産性の観点から、可能な限り従業員を雇用しない企業がIT業界を中心に増えています。日本は事実上の解雇規制があるので厳しいですが、米国では割と一般的です。

さて、アニメ業界に話を戻しましょう。現在のアニメーターの就業形態は、明らかに流動性が高く、昭和後期から平成初期における「終身雇用化」や「事実上の解雇規制」の影響を受けずに済んでいます。
そのため、他業界に比べて「令和的なキャリア」を業界全体で浸透しやすく、ここにチャンスが眠っているのではないでしょうか?

しかし、なぜアニメーターの給料はエンジニアのように高騰しないのか。それはスキルの応用力、利益創出力、スケール力がエンジニアに及ばないためです。
アニメーターのスキルは、せいぜいイラストなどにしか転用できず、作画スキルだけで一攫千金はほぼ不可能で、結局は労働集約型なのでスケールしません。

逆に言えば、これらの点を解決できれば、アニメーターが急激に稼げるようになります。そのための打開策は「テクノロジーを使った業務効率化にこだわること」「制作からプロモーションまで一貫して手がけること」「自分の作品を公開し続けること」の3つでしょう。

タイトルの問いについてのアンサーですが、アニメーターの人材流動性の高さは、令和というよりは、戦後の自営業が多い昭和中期に近く、これを令和的にできるかどうかは各アニメーターの個人戦略によるのではないでしょうか?

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