見出し画像

アキバ総研サービス終了からアニメ系メディアの在り方を考えてみる

2024年8月1日、アニメとアキバ系ポップカルチャーを手がけるメディア「アキバ総研」が、2024年9月末を持ってサービスを終了することを発表しました。

アキバ総研は2002年からサービスを提供しているため、約22年の歴史があったことになります。

個人的なイメージですが、アキバ総研はアニメ系メディアの中でも規模が大きいことから「大手アニメ系メディア」という立ち位置にありそうです。

そんなアキバ総研がサービスを終了するのですから、アニメ系メディアの在り方について考えざるをえません。

アキバ総研はサービス終了の理由を明かしていませんが、少なくともビジネスモデルが決して順調ではなかったのは、間違いないと思われます。

今後も、レガシータイプのアニメ系メディアは淘汰されてしまうのでしょうか?

そして、これから求められるアニメ系メディアとは一体何なのでしょうか?

アキバ総研がサービスを終了する今、アニメ系メディアの在り方について考える意義は大きいと思います。

代表的な大手アニメ系Webメディア

まずは代表的な大手アニメ系Webメディアについてまとめてみます。

ChatGPTに聞いてみたところ、以下のように回答しました。

  • アニメ!アニメ!

  • アキバ総研

  • アニメイトタイムズ

  • リスアニ!WEB

  • WebNewType

  • 電撃オンライン

  • アニメージュプラス

こうしてみると、アニメ系Webメディアには主に3つの種類があることがわかります。

  • 出版社が運営するメディア

  • Webメディア企業が運営するメディア

  • その他業種が運営するメディア

出版社が運営するメディアは、電撃オンライン(KADOKAWA)や、アニメージュプラス(徳間書店)が挙げられます。

元々、紙媒体で情報発信していた出版社がWebに切り替えたことで誕生したメディアです。

Webメディア企業が運営するメディアは、アキバ総研(カカクコム)やアニメ!アニメ!(イード)が挙げられます。

そして、その他業種が運営するメディアとしては、アニメイトタイムズ(小売店)やリスアニ!WEB(音楽会社)が挙げられます。

アニメ系Webメディアの広告ビジネスが終わった理由

一般的に、アニメ系Webメディアのビジネスモデルは、大量のPVを獲得した後にアフィリエイトに繋げる「広告ビジネス」だと考えられます。

特にアキバ総研のようにWebメディア企業が運営するWebメディアの場合、売り上げのほとんどがスポンサーやアフィリエイトなどの「広告収入」です。

しかし、このビジネスモデルは、既に厳しくなっているように思います。そう考える理由は、大きく分けて3つあります。

SNSで情報収集は間に合う

現代のアニメオタクの情報源はXです。

各作品、声優、アニメスタジオ、クリエイターは自身のXアカウントで情報発信するので、それさえ追いかけていれば、最新情報はキャッチアップできます。

つまり、情報収集のためにWebメディアにアクセスする必要がありません。

安定したPVが見込めるのは「20XX年○アニメ紹介」みたいな、まとめ記事ぐらいしかないのです。

ChatGPTの登場でGoogleが必要無くなる

WebメディアのPVは、検索流入が大部分を占めています。Googleで検索し、そこからWebメディアにアクセスされるということです。

しかしChatGPTの登場で、Googleの必要性が疑われるようになってきています。なぜなら、わからないことがあれば、ChatGPTに聞けばいいからです。

最近のChatGPTは、Webから情報を引っ張るようになっており、最新情報をキャッチアップできるようになっています。

人々のライフスタイルにChatGPTが浸透すれば、Googleが必要なくなり、Webメディアの広告ビジネスが破綻する可能性があるのです。

アニメ系の広告は単価が低い

これは、元々言われていた話ですが、そもそもアニメ系の広告は単価が低いとされています。

例えば、アニメ系広告の定番である「動画配信サイト」の報酬額は、大体そのサイトの月額料金なので、500円から2,000円程度です。

また、アニメグッズの高額商品はBlu-rayディスク(1万円弱)や高品質フィギュア(数万円)ぐらいなもので、このような物販アフィリエイトの多くは、報酬額が商品価格の数%程度です。

一方で、ビジネス系のサービスやビットコインなどは、今後見込まれる取引金額が大きいため、報酬額も高く設定されます。

そのため、いわゆる「アフィリエイター」や「ブロガー」の間では、FX・オンラインカジノ・クレジットカード・脱毛などのテーマが人気で、アニメや漫画などのエンタメ系は敬遠されるのです。

アキバ総研のサービス終了について深く考える

では、ここでアキバ総研について深掘りしていきます。

まず、アキバ総研は株式会社カカクコムによって運営されているメディアです。

カカクコムは「価格.com」「食べログ」「映画.com」などの有名サービスを手がける企業で、その主な収入源は「広告」です。

当然カカクコムも、ウェブメディアの広告ビジネスが厳しくなっている事を理解しているため、近年は有料会員向けサービスなど、広告に頼らないビジネスモデルを構築するようになっています。

その中で「アキバ総研」というメディアの扱いに困っていた可能性は充分に考えられます。

「アキバ総研」も典型的な広告ビジネスで、実際にウェブサイトを開いてみると、いくつもの広告を目にします。

その上で、アニメ系の広告は単価が低いことから、大きな売り上げが見込めません。食べログや価格.comとの相性が良いわけでもないので、早々に打ち切ったのだと考えられます。

これから求められるアニメ系メディアの在り方とは?

では、アニメ系メディアはこのまま終わってしまうのでしょうか?

私は、そうは思いません。

アニメ系メディアは、アニメ業界にとって必要な存在であり、工夫を重ねることでビジネスを成り立たせることができます。

これから求められるアニメ系メディアの在り方とは、一体どのようなものなのでしょうか?

リテールメディア

私が思うに、日本最大級のアニメ系メディアは、アニメイトタイムズだと思います。

そしてアニメイトタイムズは、今後衰える可能性は低いでしょう。なぜなら、アニメイトタイムズはリテールメディアだからです。

リテールメディアとは、小売業が運営するメディアのことで、現在Web広告業界で注目を集めています。

消費者にとって小売店とはものを買う場所です。そこに広告を出すことができれば、高いパフォーマンスを見込めるのは間違いありません。そのためリテールメディアは「新しいWeb広告」として注目されています。

また、アニメ業界の売り上げで大きな割合を占めるのは「グッズ」で、アニメグッズを包括的にカバーしているのがアニメイトです。

そんなアニメイトが運営するアニメイトタイムズは、模範解答的なリテールメディアだと言えます。

もちろんアニメイトタイムズのように大規模である必要はなく、ブログメディアにEC機能を搭載すれば、それは立派なリテールメディアです(もちろん、ブログとECで関連性は必要)。

アニメ業界でリテールメディアをやるのであれば、基本的にはアニメグッズを組み込むことになるでしょう。

専門性の極めて高いメディア

アニメ系メディアを運営するのであれば、SNSでは出しづらい専門性の高いコンテンツを取り揃える必要があります。

具体的には、インタビュー記事、現地レポート、コラムなどが挙げられます。

ニュース記事はSNSで事足りてしまう上に、競合も多いので、あまり求められないと思います。

また、専門性の高いコンテンツは、創造力が求められる「企画」が何よりも大事なので、AIに代替されないのもメリットです。

一方で専門性の高いコンテンツは、PVが稼げないので、広告ビジネスと相性が悪いのがデメリットです。

そのため、新しいビジネスモデルの在り方を考える必要があります。

有料メディア

そのアイデアの1つが、いっそ有料にしてしまうというものです。

これまでのWebメディアの基本形は、コンテンツを無料でばら撒き、PVを集め、それを元に広告を流すというものでした。

しかし、広告ビジネスが終焉を迎えている今、コンテンツそのものを有料にする必要があります。

元々、雑誌や新聞にはお金を払っていました。一部のリテラシーの高い人向けであれば、有料メディアは充分に成立すると考えます。

具体的には、継続課金型がベターです。月額料金制にして、定期的に専門性の高いコンテンツを配信することで、安定した収益を出せます。

取材重視のメディア

ChatGPTはゼロから何かを作り出すのは得意ではありませんが、元々あるものを編集するのは大得意です。

特に最新のChatGPTはインターネットに接続できるため、Webに転がっている情報はいくらでも編集できてしまいます。

そのため、ネット上の情報をキュレーションするだけの記事は、どんどんAIに奪われていくでしょう。

そこで取材です。

取材で得られる情報は、Webに転がることがないため、AIに編集できません。ドローンやロボットが発達しない限り、取材に関してはまだまだ人間の領分なのです。

アニメーションは、基本的には東京で制作されますが、ほかにも京都、富山、高知など、全国様々なところにアニメスタジオが点在しています。

ほかにも同人誌即売会、コスプレイベント、アニソンクラブ、聖地巡礼など、現地に赴かなければわからないことはたくさんあります。

もちろん、都内にいるクリエイターやスポットに取材するのでも充分です。

足を使って稼ぐ時代が戻ってきます。

個人が運営するメディア

取材などをベースにした専門性の高いメディアは、売り上げをスケールさせることが難しいため、利益を作り出すにはコストを削減することが求められます。

「コストを削減する」とは、簡単に言えば、従業員を減らすということです。

そしてその究極系が「個人」だと私は考えます。

現在、優れたITツールが登場しているため、メディアを少人数で運営できるようになっています。

校正・編集はChatGPTが得意で、工数が多い文字起こしはNottaで対応できます。

人間が担当すべき仕事は執筆・入稿・取材・スケジュール調整ぐらいで、コンテンツ量によっては個人でも充分に対応できるのではないでしょうか?

まとめ

本記事を簡単にまとめてみます。

  • Webメディアの広告ビジネスは終わった

  • Webメディアを成立させるにはリテールメディア化か有料化のどちらかが必要

  • 取材をベースにした高品質なコンテンツが求められる

  • 工夫を重ねて費用を削減して利益を作る

現存するアニメ系メディアは、広告収入以外の収入源を確保し、運営コストを大きく削減する必要があります。

また、これからアニメ系メディアを立ち上げる場合は、小規模に運営し、かつニッチなコンテンツを取り揃える必要があるでしょう。

ただし、どちらにせよビジネス難易度が高いのは間違いありません。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集