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コンテンツ産業官民協議会の内容をわかりやすく解説してみた

2024年9月9日、第1回コンテンツ産業官民協議会が開催されました。

岸田総理含む政府関係者に加え、コンテンツ業界で活躍する民間側からも有識者が集まっています。

  • 庵野秀明(アニメ監督)

  • 浅沼誠(バンダイナムコフィルムワークス社長)

  • 翁百合(日本総合研究所理事長)

  • 辻本春弘(カプコン社長)

  • 村松俊亮(ソニー・ミュージックエンタテインメント社長)

などなどの大物が集まり、コンテンツ産業が集まり、議論が進められました。

資料や意見の中には、非常に興味深いものがあったのですが、認知度が低く、プロモーションもされていないため、あまり注目されていません。

そこで本記事では、この堅苦しい協議会を、可能な限りわかりやすく解説していきます。


協議会で発表された資料を解説!

まずは協議会で発表された基礎資料について、解説していきます。

日本のコンテンツ市場は伸びていない

世界のコンテンツ市場規模を見ると、日本は世界第3位で、2022年は13.1兆円とのことでした。

しかし実際によく見ると、日本のコンテンツ市場はほとんど伸びておらず、中国と米国の方が伸び率が凄まじいです。

『アニメ産業レポート2023』を見ても、アニメ市場の成長に寄与しているのは、国内事業ではなく海外事業です。

以上のことから、日本のコンテンツ産業は既に頭打ち状態で、今後は海外進出するしか、業界全体を伸ばすことはできないことがわかります。

日本はアニメと家庭用ゲーム、韓国は実写、中国はスマホゲーム

コンテンツの海外進出を日中韓で比較すると、日本はアニメと家庭用ゲーム、韓国は実写映像、中国はPC・スマホ向けゲームに強いことがわかります。

また、各国の映像コンテンツによる海外収入を見ると、日本はアニメ、韓国はテレビ番組の割合が大きいことがわかります。

聖地巡礼の経済効果は4,700億円

2017年のデータにはなりますが、インバウンド観光客のうち聖地巡礼者数は140万人で、アニメグッズの購入額は380億円あたりとなっています。

インバウンド観光客のうち4.9%が聖地巡礼を実施し、アニメグッズを購入する人は1人あたり9,500円購入するようです。

テレビはオワコンでネトフリが最強

テレビ局の広告収入は過去7年間で減少しており、これにあわせて番組制作費も減少しています。

東京のキー局全てで同じ現象が起こっていることから、テレビ局の時代はもう終わったと言っても過言ではありません。

一方でNetflixは、会員数と売上高が年々拡大しており、日本のテレビ局4局の制作費を合計しても、Netflixの制作費の5分の1にしか過ぎないのです。

たしかに、これではアニメ業界がNetflixと手を組むのも納得です。資金力がまるで違います。

コンサート市場は手堅く成長

コンサート市場については、手堅く成長しており、2023年から2030年までの年平均成長率は4%と分析されています。

音楽は旧譜がメイン

ストリーミングサービスの登場により、デジタルのアーカイブ性がより強調され、旧譜が注目されるようになっています。

日本の場合、旧譜が充実しているため、日本ブランドを確立するチャンスなのですが、ライセンスの利用が難しいのが課題になっているようです。これはもったいない。

浅沼委員(バンダイナムコフィルムワークス社長)の提出資料

バンダイナムコフィルムワークの代表取締役社長・浅沼誠さんは、アニメーションビジネスの現状と課題というテーマで、映像配信にシフトしたことから、利益が海外に流出していることを指摘しています。

ただし、私はこの意見に対しては懐疑的です。なぜなら配信によって、日本のアニメ制作会社に直接お金が入るようになっているためです。

現時点でもある程度、ウィンウィンの状態が続いているので、この関係を崩しに行くのは良策ではなく、優先度は低いと考えます。

また、日本のアニメ業界の課題として、人材不足を挙げており、今こそ日本のアニメ産業の底上げが必要だと提言しています。


その一例として、サンライズ作画塾とサンライズ美術塾が用いられました。現場で活躍するクリエイターが指導にあたり、生活面のサポートもしているようです。

しかし当然ながら、このような人材育成システムは、比較的余裕のある中・大規模のアニメスタジオにしか取り組めないことです。

庵野委員(アニメ監督)の提出資料

『新世紀エヴァンゲリオン』の監督を務めた庵野秀明さんは、アニメ資料のアーカイブの早期実現を提言しています。

アニメや特撮映像を制作する際の中間生産物を保存することで、将来のクリエイターの卵のモチベーション向上に繋がるというものです。

実際に庵野委員は2017年に特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構を立ち上げました。

また、庵野委員はアーカイブの実現に加えて「人材育成」と「タックスクレジット」を提言しています。

特に「タックスクレジット」については、世界各国で用いられているにもかかわらず、日本にはないことを指摘。国際競争の観点でいち早く導入することを提言しています。


翁委員(日本総合研究所理事長)の提言

日本総合研究所の翁百合さんは、コンテンツ産業の発展のためには次世代クリエイターの育成が必須で、そのために制作会社に不利になっている取引条件を改善することを求めています。

ここまで共通して「人材不足」という課題が挙げられていますが、一体なぜ人材が不足するのでしょうか?

それは待遇が良くないからに他なりません。これを解決するために必要なのはお金です。

特に日本のアニメ業界は、広義のアニメ市場(ファンがお金を払っている金額)が約3兆円なのに対し、狭義のアニメ市場(アニメスタジオの収益)は約3,000億円です。つまり、約10%しかアニメスタジオに還元されていないのです。

とりわけ、現在急成長を見せている海外事業に関しては、数%しかアニメスタジオに還元されません。

「この取引条件を改善すべき」と翁委員は提言しています。

編集後記:結局はカネ

今回はアニメ業界を中心に、コンテンツ産業官民協議会について、解説しました。

ここで私見たっぷりに、本会議に対する意見を述べたいと思います。

まずアニメ業界の課題が「人材不足」なのは間違いありません。そしてこの課題を解決するには、様々な施策を実施していく必要がありますが、とりわけ重要なのは「カネ」です。

今、もっとも問題なのはアニメ業界が成長しているにもかかわらず、その利益がアニメスタジオに還元されていないことです。

もしアニメスタジオに利益が還元されれば、アニメーターの待遇も改善され、いくばくかの余裕が生まれるはずです。

これは、製作委員会方式を始めとした「資本主義」的な取引による影響が大きく、こればかりは政府が介入するしかありません。

そこで、ロイヤリティ率の下限を決める施策を取り入れます。

業界全体を見ると、アニメスタジオにはわずか10%しか還元されていません。これを、20%から30%に期限付きで引き上げることで、アニメスタジオにお金が回るようにします。

いきすぎた資本主義アニメ経済を是正する。これがキーテーマになるでしょう。


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