5辛
炎の数が多ければ多いほど、この世の食べ物は辛いんです。
もう、この世の何処にもない自信が満々ですが、学生でバンドを組んでいた頃、メンバー全員のプロフィール的なものを紙に書いて、何部か印刷し、お客さんやお友達に配ったことがあります。
ありがちですが、「好きなもの」と「苦手なもの」を書きまして、好きなものはなんて書いたのだろう…自分自身でも覚えていませんが、「苦手なもの」には、「辛い食べ物」と書きました。
いまでもしっかり覚えています。
遺伝という言葉ですべてを片付ける訳にはいきませんが、両親もきょうだいも、辛味に強いベロ属性ではなく、お家のごはんでスパイシーなもの、刺激の強い味付けのものを食べたことがありませんでした。
老舗の喫茶店などで出される、稀に(私にとって)とてつもなく辛いカレーなどを食べると、周りは平気な顔で食べている中、文字の如く火を吹くような形相で、生卵の追加注文などで舌をなぐさめながら食べるようなこともありましたし、友人に連れられて、辛さを売りにする鍋料理などを食べに行こうとなっても、私だけ「0」辛を選んで、同じ気持ちを共有できなかったりもしました。
辛いものを美味しく、わんさかと食べてみたい…!という気持ちは、ずっと昔からありまして、やはり聞くところ、「ストレス発散になる」だとか、「達成感がある」だとかと見受けてきたので、びしゃびしゃに汗をかき、鼻をたらしながら、「激辛グルメ」を食べるというのは、一つの小さな夢であり、叶わぬ願いだと思っていました…。
が、
なんとそんな私が最近、炎(マーク)が5つついているスンドゥブ鍋(そのお店では一応、5辛が最高レベルでした)を、半無意識的に注文するまでに成長したのです!
アルコールと辛いものは、鍛錬による克服不可能と信じきっておりましたが、鍛えぬいた先に未来はありました。辛いものを克服したい皆々様、幸先の明るいご報告です!
少し前、辛いものを少し食べられるようになったぞ、という段階の頃は、今日は一日頑張ってとても疲れた!とか、そういう一種特別めいた日に、辛いものを食べてスパッと発汗!という感じで摂取していましたが、最近はもう、とにかくいつでも辛いものが食べたくて、「ピリ辛」というレベルが一番邪魔な気がするくらい、純粋な辛さのものに巡りあいたい気持ちが芽生えて、とんでもない速度で、私の辛味を受け入れる味覚機能が成長を遂げていっております。
きっかけは、ほとんど無理やり、かの有名な【蒙古タンメン中本】さんのラーメンをいただいたことです。
一緒にいた知人に、「美味しい辛さだから!」と、当時の私では理解不能なセリフと共に、図太く憎たらしい腕で背中を押されまくりまして、普通の蒙古タンメン(5辛くらいのでしたっけ?)を食べたのです。
いままで“辛”を孕む分子一粒も受け入れられなかった舌です。
最初は筆舌(ベロだけに)し難い辛さで耐えきれず、とにかく逆効果とはわかっていながらも、溺れる勢いで水のみ、含んだ水がほぼ目から溢れでてくるような、地獄絵図状態でしたが、食べているうちに「明らかな旨味」を、明確に感じました。
しかし全く涙は止まらず、食べ終わってもしばらくは、自分に備わる唇の厚さが遂に自分の顔の範囲を超えたな…という感覚で、鏡を見るのが怖いくらいでした。
でも、その日食べたラーメンを「美味しかった」と感じた気持ちが絶対的にあったので、これはもしかすると、目の玉と唇を生贄にしつづければ、何かあるのではないか…?!と思い始めました。
その日を境に、とても変な感覚なのですが、なんかすっきりしたいような、このままでは今日を終えられない…という日に、辛いものを欲する魂の眼ざめを感じまして、その魂にとにかく従順に生きてみたところ、今は本当に辛い食べ物全般が大好きになった!という次第です。
辛いものを美味しいと思える人生、素晴らしいです!!!
辛みは痛み、ということを様々に拝聴していて、私は小さい頃から痛みにも弱いという自負があったので、あの時の自分よくやり切ったなあと、今思うと人生のターニング・ポイントと呼んでも差支えのない日だったと思いだされます。
ただ、食べ過ぎると身体に障りますし、お腹(というかお尻)を痛めますので、ほどほどにしなければいけないですね。
辛いもの大好きニンゲンのこの悩みに、行きつく日が来るなんて思いもしなかったです…。
とはいえ、辛い食べ物を克服してまだ1年も経っておりませんので、レベルでいうと初心者さまのそれまたふもと、という具合です。
辛いものに対してマニアックな方、是非お勧めのお店や、調味料や、その他広きに渡る情報をお待ちしております。
という訳で、完全に今自分がハマっていることについての駄文でしたが、たまにはこういうのも良いですか?