【全手法公開】家庭裁判所で名前を変える方法
私の本名は古谷経衡(ふるや つねひら)である。ふつう、下の名前は両親が命名するものだが、私は両親の虐待に反抗する法的な証として、約10年前に家庭裁判所に申請して名前を現在の「経衡」に変えた。
つまり両親によって命名された名前Aを、後年、自分で命名し、法的に現在の経衡に変えたのである。これを戸籍上は「名の変更」と称するが、この手法を全公開する。同じようなことを考えている読者の参考になれば幸いである。
・なぜ私は名前の変更を家庭裁判所に申し立てするに至ったのか
まずその前に、私がなぜに、両親が命名した元の名前A(以下、便宜上”太郎”とする)を変更したいと思ったのか。この詳細は、私の著書『毒親と絶縁する』(集英社)に書いた通りなのだが、ここではこのnote用に要点を整理したい。
私は札幌市の中産階級の家庭に生まれたが、父親が強烈な学歴コンプレックスの持ち主で、母親もそれに追従し、大学進学の18歳まで、以下のようなむごい仕打ちを受けてきたのである。
・私が受けた教育虐待の詳細(抄)
・父親の強烈な学歴コンプレックスがゆえに、長男である私を北大(北海道大学)に進学させるため、当該大学に進学率の良い札幌市内の公立進学校B(偏差値68くらい)の学区内に、分譲マンションを購入する。(私がまだ幼稚園のとき。異常や!)
・私が中学生で、わりと優秀(といっても偏差値60くらい)だったので、両親はますます私が将来北海道大学に進学することを期待する。その目論見の範囲内で、私は両親が思い描いていた公立進学校Bではないものの、偏差値60くらいのそこそこの公立進学校Cに進学する。
・ところが私はC高校時代、文学、アニメ、映画の洗礼を受け、そちらに夢中だったため成績が振るわず、それを見て両親の教育虐待が本格化する。
・その結果両親より、
1)北海道大学に進学せず、勉強をしないのであれば私にかける水道光熱費が無駄なので、シャワーを浴びる必要が無いという理由で、ガスの使用を禁止され、水風呂を強制される。
2)両親は24時間の監視をすることで成績が上がる、という理屈をでっちあげ、私の個室のドアを蝶番(ちょうつがい)から外し、リビングから監視できる室内監獄を作り上げる。
3)特に母親は、潰瘍性大腸炎を患って通院中であったが、その病状悪化をすべて私の「成績不振」のせいにし、罵詈雑言を浴びせる。私の自慰行為の証拠である使用済みティッシュなどを、学習机の上に陳列するなどの奇行を行う。母親はこの前後、日蓮宗系の新宗教の信者となる。
4)特に母親は、私の成績が下がると、数か月から半年間といった期間で、私の存在全てを無視し、「透明人間」のように扱って会話のすべてを拒絶する。醜悪なネグレクトである。
5)このようなストレスから私は高校1年のとき、重度のパニック症(パニック障害)を発症するのであるが、父親に相談するや「精神科に行くとなると古谷家の家名が汚れる」という理屈で、健康保険証の使用を許さず、万が一の受診を阻止するために、母親に命じて健康保険証を隠す工作をする。
などの虐待を受けた。ハッキリ言って現在であれば即逮捕案件であるが、このような鬼畜の所業を行ったにもかかわらず、私が後年結婚して家庭を持つと、両親は「謝罪の気持ちはある」などと当初は表明しつつ、結論としては、
・当時は良かれと思ってやった(よって、謝罪する必要はない)。
・そのような虐待を行った記憶がそもそもない。
・虐待をしたとしても、誇張して被害を喧伝しているのではないか。
などというさらなる非道の態度をとったので、私は「これは戦争だな」と思って正当なる対抗措置をとる必要があると思い、上記の『毒親と絶縁する』(集英社)を出版するに至ったのである。ちなみに現在2024年10月5日現在、本件に関する両親からの謝罪は一切ないどころか、その出版内容は「息子による被害妄想、虚偽である」などと周囲に言いふらしているらしい。救いようのない馬鹿である。
父親は獣医師の免許を持っているので、定年後、北海道の専門学校などで教鞭をとっているらしいが、ハッキリ言ってこのような鬼畜に指導される生徒が哀れでかわいそうである。このコンプレックスだけが肥大した、痩せぎすの小男の実名を晒しても良い(ググればたくさんHITするようだ)が、とりあえず今は、やめておこう。母親とともに地獄の業火で焼かれるであろうことは予言しておく。
・「名前の変更」を家庭裁判所はどこまで許容するのか
さて本題に戻るのだが、このような経緯から、私は両親が命名した太郎という名前が嫌で嫌でしょうがなかったので、名の変更を計画するに至った。
一般的に、姓である「山田」だの「佐藤」などは、結婚、離婚、養子縁組などで変えることはさほど難しくはない。しかし下の名前の変更については、家庭裁判所で「名の変更許可」を求めることが絶対条件である。
そのフローチャートを以下に要約しておこう。
1)まず、裁判所の公式WEBサイトから、
名の変更許可の申立書(15歳以上)
をダウンロードして印刷、記入する。ここがすべての第一歩。
(書式)
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_nanohenkou_m.pdf
(記入例)
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_nanohenkou_rei15h.pdf
2)自分の住民票のある、管轄の地方裁判所に1)を郵送する(この段階では、ほかの添付・予備書類の提出は必要はない。また、この送付はできれば書留や配達記録が望ましい)。管轄の家庭裁判所は、https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kankatu/index.html で検索する。現在の住民票の管轄である家庭裁判所でないと、受理されない(私の場合は、千葉地方・家庭裁判所松戸支部だった)。
3)書類が受理されると、数週間から数か月たって、家庭裁判所から「面接日」の連絡が来る(封書です)。面接期日が指定されるが、これは都合により変更可能(仕事などの都合によって、面接日をずらしても、裁判官の心象には影響しない)。原則として、家庭裁判官と1対1の面接で、名前の変更許可が決まるので、このたった1回の面接ですべてが決まるといってよいほど、極めて重要である(後述)。
4)家庭裁判官との面接が終わると、これまた数週間たって、家庭裁判所から「名の変更許可通知」なるものが封書で届く。しかしこの段階では、家裁が決定したというだけで、戸籍の変更は行われていない。
5)家裁からの「名の変更許可通知」の通知書を持って、自分の住民票のある市役所などの戸籍課などに行く。そこで「戸籍をいじる(原本に”名の変更”を加える)」ことによって、晴れて太郎→経衡への法的な名前の変更が完了する。おおむね、許可通知から30日以内に役所に行くべきである。
6)法的に名前が変更されたので、クレジットカードや銀行口座などは、遅滞なく新しい名前での変更を届け出ること。結構面倒くさいが、がんばってください。→新しい名前での生活!!人生をどうぞ!!
という流れである。これに要した費用は、私の場合では1,000円かかっていなかったと思う。郵送代を含めて、印紙代を含めても1,000円弱だったと思う。
・家庭裁判官との1対1の面接がすべて
世の中には、「名前の変更」のお手つだいをするといって、その手数料数万円以上を取る司法書士や行政書士事務所があるやに思えるが、後述するように、名前を家庭裁判所で変える行為というのは、ほとんどすべてが「家庭裁判官との1対1の面接結果」で決まるので、自分でやった方が絶対に安いし、法律家に手助けを求める必要もないように思う。
さて、裁判所の公式WEBサイトから、名の変更許可の申立書(15歳以上)
をダウンロードして印刷、記入することからすべてが始まるのだが、この中を見ればわかる通り、「あなたはなぜ名前を変更したいのですか(申し立ての理由)」という選択肢がいくつか羅列されている。
一般的に、現在、名の変更許可がもっとも得られやすい理由としては、性同一性障害によるものである(理由番号8に記載)。つまり性同一性障害の
「田中厳太郎」さんがいるとして、そこから仮に「田中花子」にするためには、客観的に見て目下の自認性別が違うので、上記画像の下段の「名の変更を必要とする具体的な事情」の欄に何を書いても、かなりの確率で許可が通る(もちろん医師の診断書が必要である)。
・性同一性障害、奇名・珍名、キラキラネーム、同姓同名などは許可の可能性大
そのほか、許可されやすい理由としては、1)の珍名。もしあなたの名前が「佐藤ピカチュウ」だったら、さすがに全部の家庭裁判官は同意する。すぐに許可が出るだろう。ここまでくると、おおむね昨今の「キラキラネーム」には、その可能性が出てくるかも知れない。かつて90年代に「悪魔くん」騒動というのがあったが、その類であれば容易に名前の変更ができるだろう。
上記2)のは、いわゆる「難読名」というやつで、たとえば工藤阿弖流為などというのがそれである。これは「くどうあてるい」と読むのだが、一般的には読めない。これを、”次郎にしてほしい”と言えば、すぐに許可されるだろう。
上記3)は同姓同名であり、「姓と名の組み合わせがアレ」な場合。例えば「田中角栄」とか「織田信長」である。これはすぐに許可が出ると思う。では「米内光政」とか「小磯国昭」とか「山下泰文」いった微妙なラインならどうなのか。転じて「伊藤整一」ならメジャーじゃないから不許可かもしれない(伊藤整一・・・戦艦大和とともに自沈した提督)。その辺の判断は、ハッキリ言って家庭裁判官の感覚による。
そのほか、上記3)などもわかりやすい。あなたの本名が「伊集院光」ならまず名の変更の許可が出るだろう。4)は、女性なのに「西村銑十郎」ならば許可。5)は、「高橋ホセミゲル」とかだったら言わずもなく許可。6)は出家・還俗関係であり、特殊な理由である。問題となるのは、これら1)~6)の理由に該当しない、理由7)についてである。
理由7)とは、通称として永年使用した(あわせてその期間を記載)というものである。かくゆう私の場合も、その発端が両親による教育虐待とはいえ、実際の申立書に〇印をした個所は、この理由7)であった。
通称として永年使用した名前を、法的な本名にしたいという理由7は、もっとも汎用性のある名の変更理由であるだけに、家庭裁判所による申請の却下率(不許可)が極めて高いのが実態なのである。つまり理由7)によ名前の変更は、狭き門なのである。
・「親が嫌い」という理由の名前変更申請は不許可である
私の場合、約10年前の時点で「古谷経衡」という名前の書籍や寄稿記事が無数にあったので、それを証拠として、面接日に家庭裁判官にその「コピー部分」を提出した(提出した書類は原則返却されない)。それにより、晴れて名の変更の許可が出たわけである。
しかし実際、家庭裁判官との面接の前の段階の、上記申立書の(具体的事情)欄には、「両親から教育虐待を受けたので、その反抗としての法的証が欲しい」とは一切書かなかった。あくまでオーソドックスな、「永年使用した通称が社会的に認知されているので、それを本名にしたい」とだけを簡潔に記入したのである。なぜか。
残念だが、現在の日本国の法律で、いかなる理由であっても、戸籍上の両親と、その子息の関係を抹消することはできないからである。よって、家庭裁判所としては、「虐待を受けたから、いまの名前が嫌だ」という理由は、心情的にはともかく、法律的に認めるわけにはいかないのである。
よって、申し出書提出の段階で、具体的事由のところに「虐待を受けたから」とか「両親が嫌いだから」とか「親と絶縁したから」などと書いた時点で、それは「個人的な感情」とみなされ、その申し立ては全部、却下される恐れが極めて濃厚だ。
だからこのような理由は、申立書の具体欄に、絶対に書いてはいけない。
家裁が観るのはあくまで、個人の家族関係の背景ではなく、法的な妥当性なのである。仮に家裁が「個人の感情の背景」を忖度し、その一方に寄り添ったとする。それならば国家権力の一部である家裁は、「家族間の個人的な事情」の一方を勘案したことになってしまう。国家権力が、家族間の骨肉の争いの一方に関与することは、すなわち個人の思想や心情に加担することであり、憲法違反である。実際にいくら親に虐待を受けた恨みの感情があっても、家庭裁判所としてはそういった「良心の自由」に踏み込みことはできないのである。
だから、いくら思いが強くとも、端的に言えば「親が嫌いだから」「親と絶縁したから」などという理由での名前の変更は、100%認められないことに留意しておこう。
・「ペンネームの永年の使用」が名の変更許可への近道である
では、実際のところ、「永年使用した通称」というのは、どの程度の期間であり、どの程度の密度のことなのだろうか。
私の場合は、約10年前に名の変更を申請して面談に臨んだ段階で、すでにそこからさかのぼって過去5年弱程度の通称氏名の実績を証明するだけのメディア露出があったから、その掲載部分のコピーを国会図書館で調べて添付するもので、家庭裁判官を納得させることができた。結果、名の変更の許可に至った。
しかし私のような場合でない人間の方が圧倒的多数であると思う。その場合、「永年使用した通称」の証明はどのように提出するのか、という部分については、かなり難しいと思う。言うまでもなく、ほとんどの人間は、通称でメディアに露出した経験を持たないからである。ではどうしたらよいのか。
一番の効力は「年賀状」である。
年賀状の宛先に、あなたの「通称」が記載されていれば、その葉書には年号が記載されており、新年のあいさつに、少なくともあなたの周辺の社会には、「通称によって新年のあいさつをする」という慣習が染みついている証拠となるわけである。新年のあいさつ、とは社会常識上、数年来にわたる継続的かつ濃厚な人間関係の証明なので、これを証拠として面談日に提出できれば極めて強い。だから通称で届いた年賀状は、捨てないで保管しておくことが重要だ。
名の変更を請け負う、と謳って数万円単位の報酬を要求する司法書士事務所や行政書士事務所があるが、その中には「通称の使用履歴」の証明に、「フィットネスクラブの会員証」や「レンタルビデオ店の会員証」が良いと記載している場合があるが、それは「社会に向けて認知されている」とはやや言いずらいので、かなり眉唾である。なぜならフィットネスクラブやレンタルビデオの会員証は、とどのつまり偽名だとしても、法的な罰則は原則無いのであって、その店の店員が、あなたの通称を本名だと認識して接客しているような、個人的な、継続的に濃密な交流を推察することは困難だからである。
家裁が判断するのは、あなたの感情ではなく、あなたの通称が、「あたかも貴方の本名・人格である」とみなされている社会的事実と、「永年使用してきた通称が、もやは、本名に代わって、あなたの人格そのものを表現する唯一のもの」という傍証なのである。
つまり、「これまでの人生で、ペンネームを使っているのであれば、それでこと足りるでしょう」ということを、家庭裁判官はしつこく追及してくる。
模範解答としては、「確かにこれまで、ペンネームや通称で他者に認知されてきたが、もはやそのような段階を通り越し、社会的に認識されている通称こそを、本名として使わなくてはならない状況になった」というアピールが必要なのである。
これが家裁が面談の時に判断する最大の物差しである。「ペンネーㇺでこと足りるでしょう」という質問に、十分に反証できる論拠が必要である。それは通称の使用期間もさることながら、
1)自分で会社経営や個人事業などを行っている
2)自分の周囲は本名を知らず、通称があたかも本名であると認知されている
3)実際にそのような証拠を提示できる
の三点が最重要である。現実的には、1)が有力であろう。名の変更を請け負う、と謳って数万円単位の報酬を要求する司法書士事務所や行政書士事務所の中には、通称使用の期間に「最低でも5年~10年」という目安が記載されている場合もあるが、実際に私の場合、その履歴は5年に満たないものであったので、じつのところ「通称使用の期間」が長ければ許可、短ければ不許可という訳でもない。重要なのは、「この通称こそ、本人の人格を唯一代弁できるもの」という主張と証明なのである。
重ねて言うが、その理由の中に「親からの虐待にあったから、今の名前が嫌だ」という個人的な心情は、かえって名前の変更許可に際してネガティブになり、申立書にも書いてはならず、面接時にも絶対に言ってはならない。
・名前の変更に思い悩む人々へ
総じてまとめると、名前の変更に際しては、このnoteの記事を熟読して頂き、それを証明する資料(年賀状などなど)添付できれば、上記理由7)であったとしても、断然許可の可能性は高まると言えよう。
はばかりながら、前述の自伝的な私のノンフィクション『毒親と絶縁する』(集英社)を上梓してからというもの、「私も古谷さんのように、親からの虐待を受けたので、親からつけられた名前を変えたい」というメールや手紙が、大量に集英社編集部に届いた。
申し訳ないが、これらのお手紙等は全部読んでいるが、個別に返信することは時間的にも物量的にも無理であった。だから、もしこのnoteの記事を読んで、改めて「名の変更に関して、古谷さんに相談したい」という方がいれば、その条件によっては、受け付ける所存である。
その場合は、詳細な状況(むろん、氏名、住所、電話番号等)を書いて、当方に連絡されたし。ただし、この記事の内容を吟味するだけでも、結構な部分で、名の変更許可を得ることは可能だと思う。この記事を熟読してもなお、私からのサポートが必要と思うなら、私は慈善の精神で以て、重ねて言うが条件によっては、それを受けたい。ぜひ本記事が読者諸兄の一助になれば幸いである。(了)
・古谷経衡からのお知らせ
【ご寄付のお願い】このnoteは私が目標とする「茨城動物王国(仮称)」建設のための資金作りが目的である。可愛い動物たちと一緒に暮らす広大な屋敷や設備の購入には資金が必要なのだ。
さらには現在3匹いる猫との生活を維持するためには、ご飯代、お水代、チュール代、猫砂代などがいくらあっても足りない。当方は貧乏なのであります。ご援助・賛同して頂ける方はぜひサポートを(注・本記事の末尾までスクロールされたい)。
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