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魚だって自分がわかる

ホンソメワケベラという魚がいる。いわゆるお掃除屋さんと知られる魚で、体についている寄生虫などを食べてくれる、大きな魚にとってはありがたい魚である。この小さな魚にとってもメリットがあり、大きな魚のそばなら天敵に襲われる確率も低くなる。いろんな動物同士でみられる共生なのだけれど、やっぱり平和な共生には、ギブアンドテイクGive and takeが不可欠なんだな、と教わる。

この魚が、今、認知科学研究で世界的に注目を浴びている。大阪市立大学の幸田教授の研究チームがホンソメワケベラを使って、魚にも自意識があることを明らかにしたのである。鏡を使った実験が面白い。おなかによく寄生する赤い虫を真似て、ホンソメワケベラのおなかに赤い印を付ける。そしてこの魚に鏡を見せると、おなかの赤い部分を一生懸命こすって取ろうとした。つまりこの実験によって、鏡に写っているのが自分であることを理解したことが証明されたのだ。

https://video.mainichi.jp/detail/video/5999513790001

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さらなる最近の実験で、ホンソメワケベラが他の仲間を識別していて、しかも人間と同じように「顔を」識別していたそう。顔といっても、こんな小さな魚の顔の違いって、どうやって?顔のわずかな縞模様の幅の違いや、そばかす(小さな斑点)の違いをちゃんと見分けて、自分の仲間や侵入者を識別する。すごい!としか言いようがない。この驚きも、魚なんかに知性があるはずないし、ましてや自意識なんてあるはずない、と思っている自分の愚かさからくるかもしれない。

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人間だけが特別な知性を持っていると信じている人が多いと思う。でも、その常識はすさまじいスピードで変わりつつある。今日、知性の進化、いわゆる賢さの進化についての研究が、「人間だけが賢い」という常識をくつがえす証拠を次々に発表している。鏡で自分を意識できるのは、人間だけではなく、実験さえすれば、他のほとんどの動物で証明できそうだ。しかも顔で自分と他者を識別する能力は、かなり古い時代に獲得した動物の能力らしい。

この分野(動物の認知科学)の最新の研究成果はチェックしておきたい。人間の知性が動物界の頂点に立つと信じるバベルの塔が、科学によってどんどん崩されつつあるから。

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