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【コラム】酒と寿命と健康と

人間にとって健康とは何か。かつては「酒は百薬の長」とされ、適度な飲酒が身体に良いと信じられてきました。実際、適量の飲酒が心血管系に良い影響を与えるという研究結果も一時期支持されていました。しかし、近年の研究では、その「適度な飲酒」ですら脳に悪影響を与える可能性が指摘されています。

2016年に英国で行われた30年に及ぶ観察研究では、飲酒が海馬の萎縮に関連していることが示されました。さらには、中国で行われた大規模な疫学調査では、飲酒自体が脳卒中のリスクを増加させることが明らかになり、適度な飲酒がアルツハイマー型認知症を予防するという仮説も、証拠が不足しているとされました。

このような状況で、酒を飲むことにメリットはあるのだろうかと考える人が増えてきました。特に若い世代にとって、飲酒や喫煙は麻薬と同じリスクを孕んでおり、健康への長期的な影響を考えると避けるべきものだとする見方も強まっています。若い人々は、これからの長い人生をできるだけ健康的に生きることが求められ、過ぎたることは健康を損ねるリスクがあるのです。

一方で、年齢を重ねると、単なる身体的な健康だけでなく、生活の質や心の充実が重要な要素になってきます。私は老人に近づきつつあり、健康だけにこだわるのではなく、人生の楽しみやストレスの緩和も考える時期に差し掛かっています。緩和ケアの視点からすれば、楽しみのために少しの飲酒が心の健康にプラスになるかもしれません。どこまでが許容できるリスクなのか、それを自分自身で見極めることが求められます。

ここで、ふと感じるのは、人間そのものの矛盾です。食事や水、さらには空気さえも、過剰摂取や汚染されれば害を及ぼす。私たちは健康のためにさまざまな努力をしますが、その健康を守るために、時には苦痛を伴う修行のような制限を自らに課すこともあります。それは果たして、本当に正しいアプローチなのでしょうか?

健康を追求するために苦しい生活を続け、ストレスを抱えて生きることが、逆に寿命を縮めてしまうかもしれません。そう考えると、人間は本質的なバランスを失っているようにも感じます。結局、健康と寿命だけを追い求めるのではなく、心地よい生活を送り、精神的にも満たされた日々を送ることが、真の意味での「健康」なのではないでしょうか。

過度な制限や極端な自己管理ではなく、穏やかで自然なバランスを保つことが大切です。たとえ寿命が長くても、その過程が苦しみで満たされているのでは、本当の意味での幸福とは言えません。反対に、心が満たされ、充実感を得られる生活を送ることが、私たちにとって最も重要な目標かもしれません。

「酒と寿命と健康と」というテーマを考えるとき、私たちはただ長生きを目指すのではなく、いかにして心豊かに生きるかを考えるべきです。飲酒に限らず、何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」という心持ちで、心と身体のバランスを取ることが、最も自然で賢明な生き方ではないでしょうか。

原案:SonSin、絵と文:ChatGPT

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