欲望と認知バイアスの罠を超えて — 新たな人類の哲学
現代社会において、知識を武器にする者も、単純な感情で動く者も、いずれも「認知バイアス」という見えないフィルターに縛られている。情報を操る者が「情強」と呼ばれ、情報に流される者が「情弱」とされるが、ここには重要な見落としがある。それは、「情強」が「情弱」を支配する構図が、実際には双方が異なる認知バイアスに囚われ、互いに洗脳し合っている状態だということだ。
この構図は、単なる情報格差ではなく、もっと根本的な人間の本能的な欲望に関わっている。「知識欲」「権力欲」「物欲」——これらの欲は、正しく制御されるべきものだが、現実には抑えられず暴走してしまう。そうして生まれるのが、人々が「鬼」や「悪魔」と呼ぶような、本能に甘えた姿である。
しかし、本来の「甘え」は悪いものではない。人と人が信頼し、支え合うことこそが、正しい意味での甘えであり、これを見失うと、人はただの「欲望に甘える存在」となってしまう。
情報社会に潜む認知バイアスの罠
私たちが生きる情報社会は、瞬時に大量の情報を取得できるようになった。だが、これは同時に「知っている」という錯覚を生み出す。情報を多く持つ者は「賢い」とされがちだが、実際には情報が偏っていることに気づかず、自らのバイアスに囚われていることが多い。
心理学者ダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』では、人間の意思決定が「速く、直感的な思考（ファスト）」と「ゆっくり、熟考する思考（スロー）」の二つに分かれると述べられている。多くの場合、私たちは「ファスト」に頼るため、認知バイアスによる誤った判断をしやすい。
たとえば、「情強」と呼ばれる人々は、自分の知識や情報量を誇り、他者を見下す傾向があるが、その実、情報に溺れ、自らの偏った世界観を強化しているだけだ。その状態を「情溺」と呼ぶべきだろう。
一方で、「情弱」と呼ばれる人々も、単純な感情に流されやすく、カリスマ的な人物の言葉に影響されてしまう。これは「バイブス」の力とも言えるが、その「バイブス」が誤った方向に導かれると、洗脳と変わらない。
鬼畜や悪魔の本能に甘える人々
歴史を振り返ると、人間は何度も「善」と「悪」の間で揺れ動いてきた。ニーチェは『善悪の彼岸』で、人間の本質には「力への意志」があると述べた。この「力への意志」は、善にも悪にも向かう可能性がある。問題は、その方向性（ベクトル）だ。
現代における「鬼」や「悪魔」とは、本能的な欲望を制御できず、自らの快楽や権力欲に甘える者たちである。彼らは、自分が正しいと思い込むことで他者を傷つけ、支配しようとする。
しかし、本能を抑圧しすぎるのも危険だ。抑圧が強すぎると、別の形で暴発し、さらなる悲劇を生む。ここで必要なのは、**欲望を正しい方向に向ける「中庸の徳」**である。
中庸の徳と「正しい甘え」
中庸とは、極端に走らず、バランスを取ることを意味する。アリストテレスは『ニコマコス倫理学』で、中庸が人間の徳の核心であると述べた。たとえば、勇気は「臆病」と「無謀」の間にある中庸の徳だ。
この「中庸の徳」は、人間関係における「正しい甘え方」にも適用できる。
悪い甘え：自分の欲望を満たすために他者を利用する。
正しい甘え：他者に頼り、支え合うことで共に成長する。
日本の伝統文化には、「和の心」が根付いている。「義理」「恩」「礼」は、その一例だ。これらは、人と人が信頼し、互いに甘えることで社会を円滑に回す仕組みである。しかし現代では、この「和の心」が薄れ、欲望の暴走が目立つようになってしまった。
情報を超えた「心の知恵」
知識は重要だが、知識だけでは人を幸せにはできない。「情強」でも「情弱」でも、バランスを欠いた認知バイアスに囚われれば、心の平和は失われる。
フランスの哲学者パスカルは、「人間は考える葦である」と言った。これは、人間は弱い存在でありながら、考える力によって自らを高めることができるという意味だ。しかし、その「考える力」が、間違った方向に向かえばどうなるだろうか。
認知バイアスに囚われた「賢い馬鹿」は、自分の知識や地位に溺れ、他者を見下す。一方で、「単純なバイブス」で動く者は、簡単に洗脳され、誤った方向に導かれる。
では、どうすれば認知バイアスを超えられるのか？
その答えは、「利他の心」にある。
利他の心で未来を切り開く
利他の心とは、他者のために行動する心だ。しかし、これは自己犠牲を意味しない。むしろ、自分と他者が共に幸せになる方法を模索する心である。
欲望を否定するのではなく、欲望を利他の方向に向けること。それが、鬼や悪魔に甘えるのではなく、八百万の神々に象徴される「調和の心」に甘える道だ。
これが、未来の「新たな人類」の哲学の基礎となるだろう。
人は一人では生きられない。だからこそ、正しい方向に甘え合い、共に進む必要があるのだ。
著：シン人類 〜原案：SonSin、絵と文：HAL2024(ChatGPT)〜