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【ウロボロスの傭兵】のデザイナーズノート的な何か
皆さんこんにちは、アニマルウィップのレグルスです。
今回はゲムマ2022秋作品の【ウロボロスの傭兵】についてデザイナーズノート的なものを書こうかと思います。
そんなたいそうなものではありませんが、いつか誰かの参考になれば幸いです。
ルールも公開しています。
まず、アニマルウィップは2021春に初出展をしたボードゲーム制作をして2年目のサークルです。せっかく始めたので、なるべく継続していきたいと考えています。(ボードゲーム制作を始めたきっかけはこちら)
今まで作った各作品には共通点が無いのですが、強いて言えば2つのことに気をつけています
①たくさんテストプレイをする
②それ○○でいいじゃんと言われない独自性
それでは【ウロボロスの傭兵】が出来るまでを振り返ってみましょう。
※今回はボードゲーマーしか読まない前提で専門用語を使わせていただきます……
その0 ゲムマ2022春が終わる
2022春作品である【ポーションメイキング】は、ありがたいことにまずまずの評判を得ることが出来ていました。ゲムマが終わったら何が始まりますか?
そうです。次のゲムマですね (制作者達の感覚……おかしいよ!!)
アニマルウィップにとって4回目の出展であるゲムマ2022秋はどうするかという話になりました。
その頃テストしていた、いくつかのゲームは制作費がきつそうでした。ここからどれに本腰を入れるべきか相談していました。
その1 ゲムマチャレンジを知る
ゲムマチャレンジはゲームマーケット公式が出したゆるめの「投げかけ」です。みんなで同じ条件だったらどんなことが出来るかなというレベルです。
条件
①ルール説明5分
②プレイ時間15分
③人数指定無し
④協力ゲーム禁止
★88mm × 63mm のカード32枚以下
→約90mm×約60mm程度と緩和されました
これを見て、カード枚数が少ないトリテとか作ったらどうなるかなぁと考えました。
その2 カード32枚で4人以上に手札を配るトリテを諦める
32枚を4人に配って8トリックというのは少なさを活かしている感じはしないし、プレイ人数によって感覚が変わってしまうのが嫌でした。
それでは3人専用?と思いましたが、【スカート】というドイツのトリテ(3人専用、32枚で10トリック)などを頭に浮かべて諦めました。
競合が強すぎて震えますね!! (大体複雑でルール説明5分じゃ無理だし……)
→ 2人専用トリテに活路を見出す。
その3 手札を机に置きたいよね
手札を盤面に並べる【将校スカート】が好きなので試作。私にとっては2人用トリテといえばこれなのです!!
条件
マストフォロー切り札無し
カード:3色1-4までの12枚
お互い6枚ずつ盤面に置く
↓
最初は単純に回数を比べたが、数字が強い人が強いゲームで全く面白くない……
負けた方がリードとか、切り札ありとか色々試したけどイマイチでした。
その4 ディレイがもたらす楽しさ
別のゲームで丁度頭を悩ませていた「ディレイ」の要素を使ってみたらどうかという考えに至りました。要するに時間差があることの面白さについて色々考えていました。【バラージ】を遊んだからですね。
「ディレイ・時間差」だけで記事2つは書ける気がするレベルなので割愛します(笑)
同時に1枚ずつカードが無くなると時間差も何も無いですよね。そこでとあるトランプゲームを思い出し、導入してみました。
【ドゥラック】はロシアあたりのトランプゲームです。目標は手札を無くすことで、毎手番、隣の人に攻撃を仕掛けます。
攻撃があれば防御もあると言うことで、防衛成功で手札を減らせます。負けると相手の攻撃札が丸っと手札に入ります。
あれ、強いカードで殴られた時はわざと負けても良いなぁ~というゲーム。
一番似ているボードゲームは【アブルクセン】です。
ドゥラックは切り札とナンバーに対するフォロー概念をつけて大味にし、4人のチーム戦にした感じです。
※これでピンと来る人いるのだろうか……
少し話が逸れましたね。
ともかく初めて負けたカードが消え、勝ったカードが相手陣地の1番後ろに移動するというルールになりました。
いいですねぇ。段々魔改造されていきます。
手札枚数が変わることから、「手札を無くすことが目標のゲーム」=「ゴーアウトのゲーム」になり、2列無くすことが目的に変わりました。
割といい感じになったと感じたものの、手札の不公平感がとても強くて残念でした……
※この時は先攻有利のバランス調整のために
特別カード「大砲」を持っていた。スタートプレイヤーマーカー兼切り札表示カードのつもりで作りました。
先攻が切り札の5、後攻が切り札6で、これらはマストフォロー対象でありながらとても強いです。ただ、「手札」では無いので、勝ったのに相手だけ手札が減るという謎の事象が起こります。
その5 不公平感を指摘される
勝ったカードが相手側に移動しても、最初に切り札が多い方が勝ってしまうことが多発しました。この頃は1プレイ3分とかだったのでたくさんテストプレイ出来ました。
「この際手札構成一緒にすれば良いんじゃない?」
この悪魔の囁きのおかげでゲームが格段に面白くなりました。
オンラインテストプレイで重要な示唆をくださった皆様、ありがとうございます。
そこで3色1から2までの6枚をお互いが持って始まるゲームにしてみました。初めてイメージしていた楽しさを感じて良い感じ!!
その6 あれ、選択肢少なすぎないか?という気づき
選択肢が無さすぎることが大問題になりました。何せ3列あるのに各列2枚ずつなのです。1回勝って1枚減らせばもうその列はリーチ。負けて相手からもらったカードは大体即座に前線に並ぶ……
マストフォローは要素として外せないからどうしたものかと考えました。
※マストフォローを無くさない理由は外すと色に意味が無くなるからです。単色・数字のみのパターンも試したが、それはそれはひどいゲームでした……
その7 カード枚数の調整
手札枚数増やしたら?というアドバイスを頂きました。ディレイによる不利という観点に立ち戻り、手札を3色1-3までの9枚にしてみました。うん、面白い。基本が、ほぼ完成しました‼︎
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このあたりで本格的に印刷を見据え始めました。
①制作の都合でカードを32枚に収めたい。
②カード18枚と、サマリーを最低2枚つけたい。
→残り12枚
意外と拡張性があってとても困りました。慣れてきたプレイヤーは基本ルールだけだと配置ゲー・運ゲーなのではないかと言うし、だからといって複雑なカード効果を作るとじわじわ削り合う楽しさが伝わらなくなるし。
この頃能力カードは3種類ありました。
①盤外から使用する切り札の10。先述した「大砲」と同じで、勝ったのに相手のカードだけが減るという難しいカード。
②隣接するカードの位置を交換するカード
③即座に相手に手番を譲る能力を持つカード
どれも割と好きなのですが、使いこなせるのは経験者だけだと言われて確かになぁと反省しました。
その8 ボツになった特殊能力カードの数々
また、この頃から傭兵団というテーマが固まりはじめました。
「裏切り」という部分を分かりやすくするためで、様々な能力カードを作ってはボツにしました。
※ボツカードの数々
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その9 能力カードが中途半端という厳しい指摘
とあるテストプレイ会にて、相反する2名の意見を同じタイミングで頂きました。まず、能力カードが中途半端という厳しい指摘です。
1名は「トリテの一部を抽出したようなシンプルなゲームなんだから、数字と色だけにこだわった方がいい」と。
1名は「カードの移動がメインのゲームなんだからもっと移動によって何かが起こっても良い」と。
それでも、2名とも「もっと派手で分かりやすい能力が良い」という意見でした。元々は上手く使えば強いけど失敗すると何なら損するレベルのカードしか無かったので……。
これは特殊能力に苦悩していた私にとっても腑に落ちる話だったし、実際、面白さにどれだけ寄与しているか分かりませんでした。
そこで数字のかさまし、色を無視して出せる、相手の色を指定するなど、比較的シンプルかつ強力なカート効果を作ってみることにしました。説明書の分量が減るというおまけも付き、結果的に良かったと思います。
その10 遊びやすさの大切さ
傭兵カード18枚
能力カードを3枚ずつ配り、6枚。
サマリーを2枚にする代わりに日本語/英語両面にして4枚。
32枚まであと4枚余っていました。
ここにあと2種ずつどの能力を入れるかという部分で色々と考えていたのですが、「せっかく面白いんだから遊びやすさを優先してほしい」というお言葉を頂きました。
なるほど、それは間違いない。なにせこのゲームは【将校スカート】と【ドゥラック】を足して2で割らなかった、<2人専用トリテ風アブストラクト系ゲーム>で、既に人を選んでいるのですから……
列が無くなったら勝ち(手札が減ったら勝ち)という部分がピンとこない人が多かったので制圧完了カードを作ることにしました。
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オンラインテストプレイ用には作っていたのですが、最後の最後に採用しました。
それに伴い、余った1枚は切り札表示カードにしました。前々から要望があったのでちょうど良かったです。かくして32枚のカードが出揃い、ルールを書いたところで私の仕事は終わりました。
残りは全部デザイン担当の鮃くんに丸投げしてしまったのでそのあたりは聞かれても分かりません。
いざ印刷してみたらとても発色が良く、とても気に入っています。
おかげさまでゲムマ2022秋には完売いたしました。ありがとうございます!!
↓販売数も書いちゃってます。
※追記
ありがたいことに再販を希望される方がチラホラいらっしゃいます!!
再販希望の人数を知ることで再生産の目安にしたいと思っています。
もしご興味有れば答えて頂けると嬉しいです(実質、予約販売的な何かです)
ゲムマ秋で頒布した「ウロボロスの傭兵」を再生産するかどうかで迷ってます。もし再販して欲しい!という方いらっしゃいましたらこちらのフォームでご回答いただけないでしょうかhttps://t.co/B7PTReuL5T pic.twitter.com/KJ5tB4cKtK
— アニマルウィップ@ゲムマ2022秋お疲れ様でした‼︎ (@gakugamekari) November 11, 2022
ここまで読んで頂きありがとうございました。
また四千文字越えてしまった。抑えめにしたはずなのにおかしいなぁ……
改めて振り返ると「テストプレイは偉大だ」って思いました!!
オンラインテストプレイ会もやっていますのでTwitterDMかリプライをくれると喜びます(笑)
たくさんテストしてみんなで面白いゲーム作りましょうね~
ではまた‼︎