【ラテン語仕事依頼日記】『魔女大戦』主題歌イメージ歌詞制作レポート
概要
ラテン語やギリシャ語の仕事を受けています
陸です。ラテン語や古代ギリシャ語の翻訳、解説、レッスンなどの仕事依頼を引き受けています。
依頼を考えるにあたって私の実力や活動を知っておきたいという方のために、過去の制作物の解説コラムを書くことにしました。
今回は漫画『魔女大戦』の動画版イメージ曲のラテン語歌詞メイキング解説を行います。
作曲はサウンドクリエイターのGreenpiさん、原作は『賭ケグルイ』などの河本ほむらさん、漫画は『終末のフール』などの塩塚誠さんで、株式会社Nextrekさんのモーションコミック企画に携わる形で、私が言語監修を担当する古代言語Vtuberアニマと共に引き受けました。
ラテン語ネイティブが書いた古代の文学作品や碑文を参照し、魔女として召喚された歴史上の偉人たそれぞれの欲と望みのために戦うというストーリーの雰囲気に合うように、格調高さやダブルミーニングを意識し、メッセージ性を込めた歌詞を志向しました。
私たちがどのような意図で制作を行ったかが伝わり、作品の鑑賞や依頼の検討に資することができれば幸いです。
魔女大戦の読者やクライアントの方々に届けば嬉しく思います。
連絡先
私への仕事依頼はTwitter(@anima_solaris)のダイレクトメッセージ、メールアドレス(goldensmile_and_silvertears@yahoo.co.jp)、またはcoconalaやSKIMAの依頼ページまでお願いします。
Twitterかメール経由であれば割引可能です(BOOTHかアズカリにて支払いをお願いしております)。
Vtuberアニマへの依頼についてはアニマのTwitter(@anima_divina)のダイレクトメッセージまでご連絡ください。
『魔女大戦』イメージ曲ラテン語歌詞
Nunc, magae, hāc arēnā conficite.
「さあ、魔女たちよ、この舞台で成し遂げよ」
(ヌンク・マガエ・ハーク・アレーナー・コンフィキテ)
Lūdīs factīs, supererit ūna.
「競演が終われば、高みに立つのはただ一人」
(ルーディース・ファクティース・スペレリト・ウーナ)
Tuā libīdine ūtere, quā omnia rapiās.
「その欲望で己を示せ、すべてを掴み取るために」
(トゥアー・リビーディネ・ウーテレ・クァー・オムニア・ラピアース)
Nunc, magārum noctem agāmus.
「さあ、“魔女たちの夜”を始めよう」
(ヌンク・マガールム・ノクテム・アガームス)
Agite! Pugnāte!
「いざ! 戦え!」
(アギテ・プグナーテ)
第1話では1~2行目と観衆のnecāte「殺せ!」という叫び声を使用。
また、ここでの振り仮名はわかりやすいように単語単位で表記している(素早く発音すればlibīdin(e) ūtereのように音連鎖が生じる可能性がある)。
制作
いずれアニマちゃんによる解説も予定されているのでチャンネル登録や高評価での応援もよろしくお願いいたします。
歌詞詳細解説
原作の雰囲気を踏まえつつ格調高さとメッセージ性を重視して制作。
1行目
nunc「さあ」
[副] nunc「さあ, 今」
「今」を意味する副詞(主に動詞を修飾する品詞)。
「今こそ」からの延長で「さあ」という間投詞的な呼びかけにも使われる。
英語のnowと同源。
magae「魔女たちよ」
[名] maga, -ae, f.「魔術師(の女性), 魔女」(女性・複数・呼格)
第一変化(ā幹)名詞maga「魔術師」の複数呼格で「魔術師たちよ」という呼びかけを表す。
元々「魔女」という語はイメージ幅が広く、訳語もいくつかある。
しかし作中の魔女は必ずしも悪の存在ではなく「魔法の能力を備えた女性」という印象があるため、語源的に価値中立に近く、ギリシャ・ローマ人の信仰対象に当たる魔術の女神ヘカテーとも関係し、対応する男性形magus「魔術師」(→ Eng. mage)や派生形容詞magicus, -a, -um「魔法の」(→Eng. magic)の印象も踏まえてこの語を選択した。
(ラテン語辞書L&Sのmagaの項目では“a female magician, enchantress”と語義が記述されている)。
他にmalefica「悪を成す者」、venēfica「毒薬を盛る者」、striga「子供に危害を加える魔女」、そして辞書によってはcantātrīx「歌手, 呪文を唱える者」などもあり得るが、イメージや意味の安定性の面でやや難がある。
magaも恐るべきイメージで使われることはあるものの、相対的には最も適した語だと思われる。
男性形magus「魔術師(の男性)」は古代ギリシャ語のμάγος「マゴス神官, 魔術師」に由来し、古代イラン系言語(古代ペルシア語etc.)に起源を持つ。
原義は一説には「力ある者」の意で英語の本来語のmay, mightと同じ起源の語だという。
英語に外来語として入ったmage「メイジ, 魔法使い」はこのmagus, magaに起源を持つ。
hāc「この」
[代] hic, haec, hoc「この」(女性・単数・奪格)
不規則変化の代名詞型形容詞(指示代名詞)。
次のarēnāを修飾(性数格が一致)。
arēnā「舞台で, 闘技場で」
[名] arēna, -ae, f.「砂, 砂地, 闘技場, 舞台, 闘争の場」(女性・単数・奪格)
第一変化(ā)幹名詞。原義は「砂, 砂地」で、転じて「(砂を撒いた)闘技場」や比喩的に「舞台, 闘争の場」などを表す(別形にharēna)。ここでは直接的な意味と比喩的な意味を共に込めて使用。
古代イタリアで使われていた系統不明のエトルーリア語系の外来語という説が有力で、日本語のアリーナもこの語を起源としている。
奪格には分離(~から), 地点(~にて), 手段・随伴(~によって, ~と共に)などの多数の用法がある。
これは起源的にいくつかの用法の格が合流したためで、複数の意味合いを兼ねることも少なくない。
ここでは「~にて」という地点の意味を表す(地格的奪格)。
散文では前置詞in「場所的に」で補強されることが多いが、詩や古風な表現では単独で地点を表せる。
conficite「成し遂げよ, 殺せ」(2pl.)
[動] conficiō, -ere, -fēcī, -fectum「果たす, 遂行する, 成し遂げる, もたらす, 殺す」(命令法・2pl.)
第三変化動詞でcon-「共に, まとめて」とfaciō「成す, 作る」の合成語(全体を実行する→成し遂げる)。
このconficiteは命令法の二人称複数形で、魔女たちへの命令を表す。
「殺す」は中心的な用法ではないが古典期にも用例があり、「願いを成就せよ」という命令が「相手を殺せ」という意味をも兼ねるように使用した。
こうしたダブルミーニングは私たちが多用する技法で、直接的な「殺せ」とする手もあるが、表現に深みが出てより多くの味わいが期待できるのはこちらだと思われる。
2行目
lūdīs「競技会と共に」
[名] lūdus, -ī, m.「娯楽, (pl.)催し物, 競技会」(男性・複数・奪格)
第二変化o幹名詞lūdus「娯楽」の複数形lūdī「(多数の娯楽→)競技の大会」の奪格(複数奪格)。
この奪格は直後の分詞と組み合わせて特に「競技会終了と共に, 競技会終了のときに」などの意。
factīs「完了と共に」
[形] factus, -a, -um「行われた, 完了した, 完成した」(男性・複数・奪格)
第三変化動詞faciō, -ere, fēcī, factum「成す」の完了分詞で「成された, 行われた」の意。
完了分詞は形容詞の一種で英語の過去分詞に当たる(この-t-の部分は英語の-edの-dと同源)。
性数格がlūdīsと揃った状態で並置され、lūdīs「競技会と共に」とfactīs「完了すると共に」の組み合わせで「競技会完了と共に」を表す。
(ラテン語の名詞と形容詞は基本的に性数格が一致する)。
このように2つの奪格を組み合わせて「AがBになると共に」(→「競技会完了共に」)を表す用法を絶対奪格という。
ここでは「競技会が終われば」という条件の意で、続く主節のsupererit「生き残るだろう」の前提節として用いられている(文脈次第では「終わったので」といった理由の表現などにも使われる)。
簡潔さと力強さを兼ね備えたラテン語の象徴的表現であり、全体の完成度向上のために使用した。
supererit「高みに立つだろう, 生き残るだろう」(3sg.)
[動] supersum, -esse, -fuī「高みにある, 凌駕する, 生き残る, 支援する」(直説法・未来時制・3sg.)
super「高く」と不規則動詞sum「存在する, ~である」の合成語。
未来時制の三人称単数形で主語は直後のūna。
「頂点に立つのはただ一人」と「生き残るのはただ一人」という表裏一体の意味を同時に込めて選択した。
ūna「ただ一人だけが」
[代] ūnus, -a, -um「ただひとつの」(女性・単数・主格)
基数詞(代名詞型形容詞→代名詞)「1」の女性形で「(優勝者の)ただ一人の女だけが」の意。
このようにラテン語の「1」は「ただ一人の, 一人抜きん出て」といった重い意味になるのが普通で、単なる「一人の」は名詞や動詞の単数形だけで示されることが多い。英語のoneと同源。
3行目
tuā「あなたの」
[形] tuus, -a, -um「あなたの」(女性・単数・奪格)
第一第二変化型の所有形容詞の変化形。
ラテン語では人称代名詞の属格は範囲の部分表現などに限って使われ、所有の意味を持たない。
そのため所有表現には代わりにこうした形容詞が使われる。
形容詞の基本として修飾対象のlibīdineと性数格が一致して現れている。
libīdine「欲望によって, 願いによって」
[名] libīdō, -dinis, f.「欲望, 願望, 情欲, わがまま, 気まぐれ, 放蕩」(女性・単数・奪格)
第三変化n幹名詞。
作中のキーワードである「欲」の訳語。libet「気に入る」の関連語で英語のloveと語源関係がある。
何らかの実行や実現への欲望、願い、衝動などを表す単語で、意味的には最も近いと思われる。
この語は単数主格/呼格では*-on-s > -ō (o延長とn消滅)、他の変化形では*-on- > *-en- > -in-(母音変化)を経て語幹が異なる形になった(libīdō, libīdin-)。またlubīdō, lubīdin-という別形もある。
強い情動を表すリビドーはこの語に由来するが、ラテン語の単数主格はリビードーと発音される。
奪格になっているのは後述のūtereの目的語であることによる。
ūtere「(自身のためにそれを)利用せよ, 体感せよ, 示せ」(2sg.)
[動] ūtor, -ī, ūsus sum「使う, 役立てる, 享受する, 実行する, 示す, 見出す」(中間態・命令法・2sg.)
第三変化動詞。普通は「使う」と訳される。
ただし日本語の「使う」の目的語が対格(~を)になるのに対し、このūtorの目的語は通例、奪格(~によって)で示される。「~によって効果を得る」の意といえばわかりやすいかもしれない。
抱いた「欲」を「使って戦え」「存分に味わえ」「体現せよ」、そして「自己を万人に示せ」といった様々な意味を同時に表現可能で、深く多層的な意味を込められる語として選択した。
対象のキャラによっては「(秘めているにもかかわらずまだ気づいていない欲望を)見出せ」という意味を持たせることができる点も重要になる。
この動詞は能動態を持たず常に中間態で使われる。
中間態は古い印欧語において主に主語自身を含む範囲に留まる動作や出来事の発生そのものなどを表す形で、受動態はここから派生した存在となる。
ここでは「己を示せ」と意訳した。
派生名詞のūsus, -ūs, m.「使用, 価値, 経験」は英語のuseの語源でもある。
導入部と異なり単数の相手への個別命令になるため、曲の演出に変化をつけて使えるとさらに良い。
quā「そしてそれ(欲望)によって」
[代] quī, quae, quod「どのような存在かというと」(女性・単数・奪格)
関係代名詞。libīdineを受けて「そしてその欲望によって」の意を表す。
ラテン語の関係詞は英語のwhoやwhichと同じく疑問詞から派生した語彙で、「どのような存在か?」という問いかけを表す用法からの延長で「どのような存在かというと, そしてそれ(によって)」などの説明的な機能を持つようになった語句と考えればわかりやすい。
ここでは「どのようなものかというと、あなたの欲望によって / そしてその欲望によって」などの意。
omnia「万物を」
[名] omnia, -ium, n-pl「すべてのもの」(中性・複数・対格)
第三変化(i幹)形容詞omnis, -is「すべての」の中性複数形の名詞的用法の対格で「万物を」の意。
ラテン語の形容詞はこのようにそのまま名詞として使われることも多い(形容詞の名詞的用法)。
rapiās「掴み取るために, 魅了するために」(2sg.)
[動] rapiō, -ere, rapuī, raptum「奪う, 魅了する, 掴み取る」(接続法・2sg.)
「奪う」を意味する動詞。目的語は「~を」を表す対格になる。
派生的に「魅了する, 掴み取る」を表すこともあり、この箇所では「掴み取るために, 魅了するために, 奪い取るために」といった複数の意味を同時に実現するために使用した。
接続法はラテン語の動詞の語形変化を語る上で欠かせない重要な概念で、基本形に当たる直説法(2sg. rapis)が単に「魅了する」のような中立叙述を表すのに対し、接続法(2sg. rapiās)は「魅了するように」のような想定叙述を表し、その延長で願望・目的・命令・条件などの表現にも使われる。
これは日本語で「~するように」が文脈次第で「~するために」や「~せよ」の意味で使われ得ることを踏まえればわかりやすい。
「掴み取るように(したい/せよ/願う)」などの意と解釈してもいいだろう。
関係詞+動詞の接続法は目的の表現にも多用されるが、接続法は単独で命令法の代わりにもなる。
ここでは「魅了するために」という目的に「魅了せよ」といった命令の意味合いも乗せており、「他者から奪い取るほどの強い意志で願いを叶えよ」という意味合いも込められている。
この語と語源的に関連するraptorは「盗賊」を意味し、恐竜の名前の後半要素としても知名度が高い。
4行目
nunc「さあ」
[副] nunc「さあ, 今」
(1行目参照)。
magārum「魔女たちの」
[名] maga, -ae, f.「魔術師の女性, 魔女」(女性・複数・属格)
magaの複数属格で「女魔術師たちの, 魔女たちの」の意(1行目も参照)。
次のnoctemを修飾。
noctem「夜を」
[名] nox, noctis, f.「夜」(女性・単数・対格)
第三変化(子音幹)名詞noxの対格で「夜を」の意(語幹noct-)。
magārum noctemで「魔女たちの夜を」(すなわち"Walpurgisnachtを"の意。
直接的にValpurgis noctem「ワルプルギス(ヴァルプルギス)の夜を」と表現するか詩的婉曲法で「魔女たちの夜を」とするかは好みにもよるが、私の主観としては「ワルプルギスの夜を」であれば固有名詞が際立ち力強い響きに、「魔女たちの夜を」であれば古来の単語の組み合わせで表現可能という利点がある上に奥深い詩的な響きになると思われる。
(なおラテン語のvは[w]音を、現代ドイツ語のwは[v]音を表す)。
ドイツの春の夜の祭日のWalpurgisnachtは別名をHexennacht「魔女たちの夜」といい、その源流は多神教時代に遡るといわれる。
Nacht「夜」は英語のnightやラテン語のnoxの同源語として知られる。
agāmus「祝おう, 始めよう」(1pl.)
[動] agō, -ere, ēgī, āctum「実行する, 導く, 動かす, 進める, 果たす, 魅了する, 祝う」(接続法・1pl.)
「動かす」を原義とする動詞。数多くの用法を持ち、特に「実行する」を意味することが多い。
祭りや催しに対する「開催する, 祝う」の意もその延長で、この場合の「始めよう」は意訳となる。
直説法1pl.のagimusが中立的な「(私たちは)祝う」を表すのに対し、この接続法1pl.のagāmusであれば「(私たちは)祝おう」の意となる。
動詞の接続法の用法は多岐に渡るが、これは「~しよう」という意志の一環としての推奨の表現で、主節(独立文)での一人称複数の接続法はこのように意志や勧誘に使われることが多い。
5行目
agite「さあ, いざ, やれ, 実行せよ, 襲いかかれ」(2pl.)
[動] agō, -ere, ēgī, āctum「実行する, 導く, 動かす, 進める, 果たす, 魅了する, 祝う」(命令法・2pl.)
基本的な意味は4行目を参照。この動詞の命令形は「さあ, いざ」と促す間投詞的な意味にもなる。
戦闘者への呼びかけと「戦いを実行せよ」「目的を果たせ」「敵に襲いかかれ」という表現を同時に実現すると共に、戦いによって「この夜を祝福せよ」という意味を実現するために使用した。
この場面は再び全体への命令に移行。
pugnāte「戦え, 抗え, 奮闘せよ」(2pl.)
[動] pugnō, -āre, -āvī, -ātum「戦う, 奮闘する」(命令法・2pl.)
pugnus「拳」の派生語で英語のfistと同源。
原義的には殴り合いを意味していたと思われるが武器を用いた戦いにも普通に使われる。
また「運命に抗え」「自らのために奮闘せよ」といった意味合いも込めて選択した。
関連する名詞形のpugnaは「戦い」を意味する。
個々の戦闘ならpugna、大々的な戦争ならbellumがイメージに近いだろう。
別バージョンとしてnex「殺戮」の派生動詞necō「殺す」の命令法2pl. necāteも提案しておきたい。
ラテン文学参照箇所
この歌詞の制作に際して古代ローマ人、すなわちラテン語ネイティブが書いた文学作品の表現を多数参照した。
時代的にはラテン語の事実上のスタンダードとされる古典期(前1~後2世紀)の資料を中心に扱っている。
1行目
nunc illās prōmite vīrīs
「今こそその力を発揮せよ」
――ウェルギリウス『アエネーイス』(Verg. Aen. 5.191), 前1世紀。
主人公アイネイアースの戦友ムネステウスの言葉。
櫂を漕ぐ仲間たちへの励ましの表現。
Virginibus cordī grātaque forma sua est. / Laudātās hominī volucris Jūnōnia pennās / explicat, et forma multa superbit avis. / Sīc potius jungendus amor quam fortibus herbīs, / quās maga terribilī subsecat arte manūs.
「乙女たちにとって、(熱心に磨いた)自身の美しい姿(への賞賛)は心を高揚させるもの。ユーノーの鳥(クジャク)は人に褒められれば翼を広げ、鳥としての大いなる姿を誇る。愛への橋はそのように架けられるべきである。魔術師が恐るべき技術で仕込む、強い薬草に頼るよりも」
――オウィディウス『化粧について』(Ov. Med. 36), 紀元前後。
(maga: maga, -ae, f.「魔術師(の女性)」の単数主格)。
女の子の恋の話。綺麗になって他者に褒められたい心を否定せず正直に生きるべきであり、恋は魔法の力に頼るより美しさを磨き、賞賛を得て幸せになっていく過程の中で得よ、というアドバイス。
tūque, triceps Hecatē, quae coeptīs conscia nostrīs /
adjūtrīxque venīs cantūsque artisque magārum,
「そして三相の姿のヘカテーよ、我が企てを知り来臨する、魔術師たちの歌と術の助力者よ」
――オウィディウス『変身物語』(Ov. Met. 7.194-195), 後1世紀初期。
(magārum: maga, -ae, f.「魔術師(の女性)」の複数属格)。
「女魔術師たちの」の意。女神ヘカテーへの祈り。
Quāre agite, ō tectīs, juvenēs, succēdite nostrīs. / Mē quoque per multōs similis fortūna labōrēs / jactātam hāc dēmum volvit consistere terrā;
「だから若者たちよ、さあ、私たちの館に入りなさい。私も同じような境遇です。多くの苦難に翻弄されて、ようやくこの地に定住できました」
――ウェルギリウス『アエネーイス』(Verg. Aen. 1.627-629), 前1世紀。
(hāc: 指示代名詞hic, haec, hod「これ, この」の女性単数奪格、terrāを修飾)。
(terrā: terra, -ae, f.「大地, 陸地」の女性単数奪格、前置詞なしの古風な詩的用法で「この大地において」を表す)。
カルターゴーの女王ディードーが主人公のアイネイアース一行を王宮に迎え入れたときの言葉。
アイネイアースたちは神話上有名なトロイア戦争で故郷の滅亡を経験し、亡命の旅の途中でカルターゴーにたどりついた。ディードーはそんな彼らに自らの過去を重ね合わせ優しく迎え入れた。
Vir fortis in pīrātās incidit. Rescrīpsit patriae dē redēmptiōne.
illā cessante redēmit eum lanista et rudem eī in arēnā dēdit.
「勇者が海賊の手に陥った。彼は故郷に身代金について書き送った。故郷がなかなか動かない中、剣闘士育成者が彼を買い戻し、闘技場で木刀を彼に与えた」
――カルプルニウス・フラックス『演説主題集』(Calp. Decl. 52.3), 後2世紀。
(arēnā: arēna, -ae, f.「闘技場」の単数奪格)。
(in) arēnāで「闘技場で」の意。
ここでいう木刀は功績ある剣闘士が引退時に贈られるもので、この勇者が助命されたことを表す。
velut ībēs maximam vim serpentium conficiunt,
「ちょうど朱鷺が多くの蛇を殺すのと同様に」
――キケロー『神々の本性について』(Cic. N.D. 1.101.8), 前1世紀。
(conficit: conficiō, -ere「成し遂げる, 殺す」の3sg.)。
この語を命令法2pl.の形にするとconficiteとなる。
2行目
ac vereor nē iste jam auctiōnem nūllam faciat, sed lūdīs factīs Ἀτύπῳ subsidiō currat,
「さらに彼(カエサル)はもう何の競売も開催しないかもしれないし、実のところ競技会が終われば口下手な友人の助けと共に走り去るかもしれない、と私は心配している」
――キケロー『アッティクスへの手紙』(Cic. Att. 12.3), 前1世紀。
(factīs: faciō, -ere「成す」の完了分詞factus, -a, um「行われた」の男性複数奪格。lūdīsと共に絶対奪格で「完了すれば」の意)。
Antiō captō, T. Aemilius et Q. Fabius consulēs fīunt.
Hic erat Fabius quī ūnus exstinctae ad Cremeram gentī superfuerat.
「アンティウム市の占領後、ティトゥス・アエミリウスとクィーントゥス・ファビウスが執政官となる。このファビウスはクレメラ河畔の戦いでの一族の滅亡を越えてただ一人生き残った者だった」
――リーウィウス『ローマ建国以来の歴史』(Liv. A.U.C. 3.1), 前1世紀。
(ūnus: 基数詞ūnus, -a, -umの男性単数主格で「唯一の者として」の意、hic, Fabiusと性数格が一致)。
(superfuerat: supersum, -esse, -fuī「生き残る」の過去完了3sg.で、その前のsum, esse, fuī「~である」の未完了過去3sg.に当たるerat「~であった」よりも過去の出来事だったことを表す)。
ファビウス氏族は前477年に一人の幼子を残して一族ほぼ全員がクレメラ河畔の戦いに出陣し、ウェイイー人との戦闘で戦死した。
しかし生き残った子が血脈を繋いで再び名門貴族へと発展したと伝わる。
Ad animum tendit aestimātiō mea; ideō locupletem sed indignum praeterībō, pauperī virō bonō dabō; erit enim in summā inopiā grātus et, cum omnia illī dēerunt, supererit animus.
「私の評価は心に対して向けられます。だから金持ちであっても相応しくない人とは関わらないし、貧しくても立派な人士には手を差し伸べたいと思っています。善人は大きな欠乏の中にあっても恩義を忘れないし、あらゆるものがなくなっても心が残るだろうと思えるからです」
――セネカ『恩恵について』(SenPhil. Ben. 4.10.1-5), 後1世紀。
(supererit: supersum, -esse, -fuī「残る」の未来3sg.で主語はanimus「心」)
セネカの哲学者としての考え。
3行目
sīc tibi bonus ex tuā / pons libīdine fīat,
「ちょうどあなたの望みによって、あなたに立派な橋が架かりますように」
――カトゥッルス『カルミナ』(Catul. Carm. 17.5), 前1世紀。
(libīdine: libīdō, -dinis, f.「望み」の単数奪格、(ex) tuā libīdineで「(始点的に)あなたの望みから」、日本語的には手段・随伴を表す具格的奪格(~によって)のようにも翻訳可能)。
(tuā: 所有形容詞tuus, -a, -um「あなたの」の女性単数奪格、被修飾語libīdineと性数格が一致)。
ウェネティー人が住む北イタリアの都市コローニア・ウェネタを擬人化した呼びかけの表現。
Posteā vērō quam in Asiā Cȳrus, in Graeciā Lacedaemoniī et Athēniensēs coepēre urbēs
atque nātiōnēs subigere, lubīdinem dominandī causam bellī habēre,
「しかし後にアシアにキューロス、グラエキア(ギリシャ)にラケダイモーン人(スパルター人)やアテーナイ人が現れ諸都市や諸民族を従えていくと、人類は支配への欲望を戦争の理由として持ち始めるようになった」
――サッルスティウス『カティリーナ戦記』(Sal. Cat. 2.2), 前1世紀。
(lubīdinem: lubīdō, -dinis, f.「欲望」の単数対格で「欲望を」の意、libīdinemの別形)。
直後の動名詞の属格dominandīは「支配することへの」の意でlubīdinemを修飾。libīdōが「~の欲望」といった個別の属性的な意味でも使用可能であることがわかる。
文法構造的には「支配への欲望が戦争の原因を持つことを始めた」の意。
tū tamen illōrum moderātius ūtere dōnō / aut oculīs certē parce, puella, meīs!
「少女よ、それでもあなたは彼ら(神々)からの贈り物(魅力)をより控えめに使いなさい。そうでなくても、この私の両目を思いやってほしい」
――オウィディウス『愛の歌』(Ov. Amōrēs 3.3.47-48), 前1世紀末頃。
(ūtere: ūtor, -ī「使う, 効果を得る」の命令法2sg.)。
目的語はdōnō「贈り物によって」で、自分の魅力の大きさに無自覚なことで人を惑わさないように、という意味。
ūtere tuō jūdiciō
「あなたの判断を示せ」
――キケロー『義務について』(Cic. Off. 1.2.7), 前1世紀。
ūtereの「(行動を)示せ」の意味での用例、目的語はtuō jūdiciō「あなたの判断によって」が該当。
meliōribus ūtere fātīs
「より良い運命を享受せよ」
――ウェルギリウス『アエネーイス』(Verg. Aen. 6.546), 前1世紀。
ūtereの「(体験を)享受せよ, 味わえ」の意味での用例、目的語はmeliōribus fātīs「より良い運命によって」となる。
hospitiō ūtēbātur Attī Tullī
「(マールキウスは)アッティウス・トゥッリウスの歓待を享受していた」
――リーウィウス『ローマ建国以来の歴史』(Liv. AUC. 2.35.7), 前1世紀。
(ūtēbātur: ūtor, ī「享受する」の中間態未完了過去3sg.で、目的語はhospitiō「歓迎/歓迎によって」)。
ローマ貴族マールキウスがローマと対立する近隣のウォルスキー人の都市に亡命したときの出来事。
sorte tractā, quā monēbātur ut dē consultātiōnibus in Aponī fontem
talōs aureōs jaceret,
「(皇帝ティベリウスは)籤を引いたとき、それによって知りたいことがあればアポヌスの泉へ金のサイコロを投げ入れるように、と告げられた」
――スウェートーニウス『皇帝伝』(Suet. V.C. Tib. 14.3), 後2世紀初期。
(quā: 関係代名詞quī, quae, quod「そしてその」の女性複数奪格)。
絶対奪格のsorte tractā「籤の抽選によって, 籤を引いたとき」を関係代名詞のquā「そしてそれによって」が受ける構文。
ティベリウスは紀元前後に生きた2代目の皇帝で初代皇帝アウグストゥスの養子に当たる(養父アウグストゥスもまた独裁官カエサルの養子で、系統的にはカエサルの姪の子に相当)。
Omnia faciet Juppiter, faxō
「ユッピテルはすべてを叶えてくれますよ。私がそうしてやります」
――プラウトゥス『カルターゴー人』(Plaut. Poen. 1191), 前200年頃。
(omnia: omnis, -e「すべての」の名詞的用法で「すべてのことを」の意)。
主人公のカルターゴー人の青年アゴラストクレースの言葉で、叔父ハンノーが娘で主人公の従姉妹のアデルパシウムとアンテラスティリスの救済を願ってユーピテルに祈りを捧げた直後の台詞。
ユッピテル(ユーピテル)はローマ神話の最高神でギリシャ神話のゼウスに当たり、フェニキア神話のバアルとも同一視された。
vīdistī plēnō teneram candōre puellam, / vīdistī fuscam, dūcit uterque color; / vīdistī quandam Argīvā prōdīre figūrā, / vīdistī nostrās, utraque forma rapit;
「あなたは見た。白く輝く繊細な女の子を。あなたは見た。色黒の女の子を。どちらの色も心を惹く。あなたは見た。アルゴス(ギリシャ)の装いと共に現れたある女の子を。あなたは見た。我が国の女の子たちを。どちらの姿も心を奪う」
――プロペルティウス『挽歌』(Prop. Eleg. 2. 25. 41-42), 前1世紀。
(rapit: rapiō, -ere「奪う, 魅了する, 掴み取る」の3sg.)。
rapiō, -ereの「奪う, 魅了する」の意味での用例。接続法2sg.にするとrapiās「魅了するために」となる。
rapiāmus, amīcī, occāsiōnem dē diē,
「友よ、この日からチャンスを掴み取ろう」
――ホラーティウス『エポーディー(返答歌)』(Hor. Epod. 13.4), 前1世紀。
(rapiāmus: rapiō, -ere「掴み取る」の接続法1pl.で意志・勧誘用法)。
rapiō, -ereの「掴み取る」の意味での用例。目的語はoccāsiō, -ōnis, f.「好機, 機会」の単数対格occāsiōnem「好機を」で、勧誘の接続法。
4行目
nunc illās prōmite vīrīs (Verg. Aen. 5.191)
→「さあ, 今こそ」を表す副詞(1行目参照)。
tūque, triceps Hecatē, quae coeptīs conscia nostrīs /
adjūtrīxque venīs cantūsque artisque magārum, (Ov. Met. 7.194-195)
→ maga, f.「魔術師の女性, 魔女」の複数属格。
「女魔術師たちの」の意(1行目参照)。
conlūcent ignēs, noctem custōdia dūcit / insomnem lūdō.
「灯火が輝き、番兵は眠らない夜を遊んで過ごす」
――ウェルギリウス『アエネーイス』(Verg. A. 9. 166-167), 前1世紀。
(noctem: nox, noctis, f.「夜」の対格で「夜を」の意)。
noctem dūcitで「夜を過ごす」を表す。
Syrācūsānī fēstos diēs anniversāriōs agunt
「シュラークーサイ人は毎年恒例の祭日を祝う」
――キケロー『ウェッレース弾劾演説』(Cic. Ver. 2.4.107), 前1世紀。
(agunt: agō, -ere「行う, 開催する, 祝う」の3pl.)。
(直前の副詞ubi「いつかといえば」と組み合わせて「祝うときに」の意)
prō tuō summō beneficiō grātiās agāmus.
「あなたの最大の好意について、(私たちは)感謝したい」
――キケロー『アッティクスへの手紙』(Cic. Att. 16.16e.2), 前1世紀。
(agāmus: agō, -ere「行う, 実行する」の接続法1pl.の意志用法)。
grātiāsはgrātia, -ae, f.「恩恵, 好意」の複数対格で「感謝を」の意。
5行目
nunc agite, ō sociī, prōpellite in aequora nāvem,
「さあ、いざ仲間たちよ、海の水面へ船を押し出せ」
――プロペルティウス『挽歌』(Prop. Eleg. 3. 21. 11), 前1世紀
(agite: agō, -ere「実行する, 動かす」の命令法2pl.→間投詞としても使用)。
出航のための言葉で、呼びかけの対象はsociī「仲間たちよ」、主動詞はprōpellite「押し出せ」)。
純粋な動詞として訳せば「今こそ動かせ、海原へ船を進水させよ」といった意味合いになる。
"Pugnāte contrā conjugēs, pugnāte contrā līberōs!"
「戦え! 伴侶たちと! 戦え! 子供たちと!」
――セネカ『恩恵について』(SenPhil. Ben. 5.15.5), 後1世紀。
(pugnāte: pugnō, -āre「戦う」の命令法2pl.)。
セネカが「平和を乱し戦いを煽るような者はこのようなことを言うだろう」と想定して載せた言葉。
補足と凡例
文字と発音
ラテン語の表記体系はローマ字読みに近く、使われる音の種類も大半が日本語と共通しているため、日本語話者にとっては比較的容易である。
母音には長短の区別があり、辞書では短母音には通常のa, e, i, o, uが、長母音には辞書ではā, ē, ī, ō, ūのような長音記号付きの文字が当てられる。
jはヤ行子音を、vはワ行子音を表す。
英語のjazzやvixenの先頭子音ではない。
カ行子音は通例cで表し、kは稀にしか使われない。
cはカ行、gはガ行、sはサ行の子音を、xは[ks]を表し、英語のice, gem, is, examなどの子音にはならない。
アクセントは日本語の外来語アクセントとの共通点が多い。
dō「与える」などの1音節語では当然その音節に、rosa「薔薇」(ro-)などの2音節語では後ろから2番目(つまり語頭)に置かれる。
amīca「女友達」(-mī-)、alauda「雲雀」(-lau-)、puella「少女」(-el-)のように後ろから2番目が発音に時間のかかる重音節ならそこに、anima「魂」(a-)のように時間のかからない軽音節なら1つ遡って後ろから3番目に来る。
省略記号
[名] 名詞 noun
[形] 形容詞 adj.
[動] 動詞 verb.
[副] 副詞 adv.
[前] 前置詞 prep.
[代] 代名詞 pron.
[接] 接続詞 conj.
m. 男性
f. 女性
n. 中性
c. 共性
e.g. exemplī grātiā「実例のために」(Eng. for example)
名詞の変化
ラテン語の名詞には性に加えて格の変化がある。
格とは名詞の文中での役割、特に他の語との関係のことで、日本語であれば「~を」のような格助詞で示されるのに対し、ラテン語では単語自体の語形変化で示される(e.g. anima「魂」, animam「魂を」, animae「魂の」)。
個々の名詞の変化パターンは語幹末の音によって決まり、第一変化から第五変化までの分類が知られている。
辞書表記
名詞
(e.g.) anima, -ae, f.「命, 魂」
単数主格がanima、単数属格がanimaeになる女性名詞の意。
男性はm.、女性はf.、中性はn.で、男女の区別がない共性はc.で表す。
名詞性は主に修飾形容詞の形の選択に影響する。
起源的には有生物が共性、無生物が中性で、その後共性の多くが男性と女性に分化した歴史を持つが、無生物でも擬人化その他の理由で男性や女性に属しているケースも多い。
辞書ではこのように単数主格と単数属格を並べることで名詞の変化パターンが示される(変化タイプごとの属格の形は1. -ae, 2. -ī, 3. -is, 4. -ūs, 5. -eī/-ēī)。
形容詞
(e.g.) bonus, -a, -um「良い, 立派な」
男性形がbonus、女性形がbona、中性形がbonumになる形容詞の意。
(それぞれ男性・女性・中性の単数主格)。
形容詞は基本的に修飾・叙述対象の名詞と性・数・格が共通する形で現れる(性数格の一致)。
共性・中性の2性しか持たない形容詞はfortis, -e「強い, 勇敢な」のように、単数主格が全性同形になる語はfēlīx, -īcis, adj.「幸せな」のように表記。
共性名詞を修飾する形容詞は男性形も女性形でもあり得る。
共性形の形容詞は男性名詞や女性名詞も修飾可能。
形容詞は名詞と極めて近い関係にあり、形容詞が単独で名詞的に使われることも多い(familiāris「親しい」→ familiāris「親友」)。
これは英語でJapanese「日本の, 日本に属す」がJapanese people「日本人」やJapanese language「日本人」の意で使われ得るのと共通の現象といえる。
上述の例もfamiliāris homō「親しい人」の略だと考えればわかりやすい。
動詞
(e.g.) amō, -āre, -āvī, -ātum「愛する」
現在一人称単数形がamō「(私は)愛する」、不定詞がamāre「愛すること」、完了一人称単数形がamāvī「(私は)愛した」、目的分詞対格がamātum「愛するために」になる動詞の意。
ラテン語の動詞は態・相・時制・法・人称・数によって変化し、さらに不定詞や分詞などのいくつかの準動詞がある。
相は進行や完了といった動作の進行度、法は中立叙述(直説法)、意志や願望といった主観的な想定(接続法)、命令(命令法)といった心的態度を指す。
ラテン語の起源と歴史
ラテン語はギリシャ語や英語と同じ起源を持つ言語で、太古の時代に存在した「印欧祖語」(PIE)という共通祖先から枝分かれして誕生した。
この系統グループを印欧語族という。
そのためこれらの言語には祖語から継承した同源語が大量に存在している。
(e.g. PIE *treyes「3」> Lat. trēs, Gr. τρεῖς, Eng. three)。
印欧語族についてはアニマの解説を参照。
英語にはギリシャ語やラテン語からの外来語も大量に受け継がれており、同源の本来語と外来語は区別される。
たとえばPIE *peth₂-「羽根」> Lat. penna, Gr. πτερόν, Eng. feather)は祖先言語からそれぞれに受け継がれた本来語、Eng. pen「羽ペン→ペン」はLat. penna「羽根」に由来する外来語である。
ラテン語は元々今から2000年以上前のイタリア半島中西部を中心に使われていた言葉で、古代ローマ帝国の言語として知られる。
ローマ文明の影響力の大きさから後代にも知識人の共通語として使われ続け、現代でも創作などの分野で大きな存在感を有している。
その歴史と概要についてはアニマの動画を参照。
もしサポートをいただければさらに励みになります。人気が出たらいずれ本の企画なども行いたいです。より良い記事や言語研究のために頑張ります(≧∇≦*)