言語学者からの応援メッセージ
VOX MEMORIALIS執筆者の陸です。
今回はなんと、印欧語を専門とする言語学者・吉田育馬先生の協力を得てインタビュー記事を書くことになりました。
吉田先生は印欧語比較言語学、古代ギリシャ語、ラテン語、古代ケルト諸語などを専門とする研究者で、現在は明治学院大学や朝日カルチャーセンターで講師を務められています。
光栄なことにこのブログへの応援メッセージもいただいているのでまず紹介いたします。
ちなみにタイトル画像の文章はガッリア語(印欧語族ケルト語派の一言語)で何か書いてくださいと無茶振りして書いてもらったものです。
ベリサマーはケルト神話の工芸の女神で、全体としてはBelisamāi「ベリサマーに」sosin「これを」auvōta「捧げた」という意味になります。
気になるインタビュー本編は次の記事に記載しました。
応援メッセージ
吉田育馬先生より:
VOX MEMORIALIS読者の皆様、初めまして。
印欧語比較言語学者の吉田育馬と申します。
今回、ご厚意によりこのブログにお邪魔させていただくことになりました。
陸さんとは何度かメールをやり取りしたことがありまして、お若いながら言語学のセンスや知識があって洞察も深い方だと思っていたのですが、いくつか記事を見たことで改めてそれを実感しました。
正確さとわかりやすさのバランス、出典の充実度もそうですが、何よりテーマ選びやアプローチの仕方が素晴らしく、陸さんの発想と筆力が加われば印欧語学をこう描くこともできるのか、と新鮮な驚きを得ています。
こうしたブログがあるというのは大変心強い。
日本の比較言語学のためにも陸さんのような若い力にどんどん出てきてほしいところです。
印欧語に関心がある方には是非、購読をおすすめします。
そうそう、手前味噌ながら、私が寄稿した『ケルトを知るための65章』も是非読んでみてください(笑)。
吉田育馬(よしだ・いくま)
言語学者。1966年、兵庫県尼崎市生まれ。
大阪外国語大学卒業、筑波大学大学院博士課程中退、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、明治学院大学や朝日カルチャーセンターでラテン語の講師を務める。
専門は比較言語学、古代ギリシャ語、ラテン語、古代ケルト諸語。
代表論文に『ローマ時代の古典に現われるガリア語・ゲルマーニア語の固有名詞・普通名詞によるケルト語・ゲルマン語先史音韻史』など。
また木村正俊(2018)『ケルトを知るための65章』の言語解説への寄稿、下宮忠雄(1998)『言語学I』の文献目録の一部などを担当。
吉田先生もおすすめの言語記事群はこちら。
歴史言語紀行(印欧語族・歴史言語学)
1「神話の名が示すもの」
妖精の地「アールヴヘイム」は「エルフ」や「ホーム」と同語源――。
北欧神話の言語・古ノルド語には英語にも繋がる大きな秘密があった。
そこには遠い歴史の記憶が宿っていた。
2「やがて従者は騎士になった」
木の葉は鋭い刃に変わり、やがて従者は騎士になった。
英語、ドイツ語、アイスランド語は2000年前にはまだ同一の言語だった。
言葉が残した足跡は往古の歩みを伝えていた。
3「無限の光が照らす先」
仏教文献のサンスクリット語、
ギリシャ神話を伝えた古代ギリシャ語、
そしてローマ帝国を担ったラテン語。
その驚くべき共通性は何を意味するのだろう?
人が"祖語"の存在に気づいたとき、言葉の世界に夜明けが訪れた。
4「始まりへの道標」
音は言葉を作り上げた。
だからそれは始まりの旅への道標になった。
音の絆は語彙の起源を、そして言葉の血縁をも解き明かした。
5「樹木と水面が出会うとき」
樹木は水面(みなも)と出会い、枝を空へと高く向ける。
その光景はやがて遥かな記憶への道を開いた。
大樹が枝を伸ばし、水滴が波紋を広げるように、言葉も時の流れを旅するのだった。
ラテン語講座
ラテン語講座1(歴史導入編)
ラテン語の系統と歴史、基本的な要素、現代語との関係を紹介。
古代作家の文例解説あり。人気記事。
ラテン語講座2(文字/音韻編)
ラテン語の文字と発音の基本、音の分類など。
音声学・音韻論の入門にも。
カエサル『ガリア戦記 第1巻』(対訳・解説)
言語と歴史の両面からアプローチ。
すべての語句に形や用法の解説を付加。
ラテン語の文法解説に加えケルト諸語固有名詞の語源分析も充実。
初心者から上級者まで楽しめる新たな対訳ガリア戦記。
古代ローマ史、カエサル、ガリア戦記について
古代ローマ史、作者カエサル、時代背景、ケルト諸部族の概略。
原文読解のお供に。
第1回
1.1-1.7。ガッリアの地理・民族について。人気記事。
第2回
2.1-2.5。オルゲトリークスの言葉。
第3回
3.1-3.7。ヘルウェーティイー族の南西移住計画。
第4回
4.1-4.4。陰謀から生じた内部対立。
単品記事
2019年6月
1「ケルト神話の英雄クー・フラン(クー・フーリン)の名前について」
少年は誓った。殺してしまった番犬の子を育て、さらにその成長の日まで自らが"クランの番犬"となることを。英雄の名前には印欧語族ケルト語派の歴史が刻まれていた。