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旅の詩/黒い瞳

黒い瞳

ナコンラチャシマ、快晴。
寺院の境内に積まれた廃材に腰を下ろし
鰐(ワニ)の旗のはためく、
赤と黄色の屋根の方を見上げている

子供たちの僧衣は出がらしの紅茶色。
煤(すす)で覆った 割れたガラスを
かわりばんこに空にかざして

もうこんなに欠けてしまった

こちらを振り向き
小さな掌に指で丸を描いて
その一部を塗りつぶして見せる
うん、と頷いて返せば笑顔になった

難しい駆け引きなしで
相手が笑えばうれしかった

10月24日午前10時53分
南南東の空仰角六十度
吸い尽くされた真昼を負って
開眼。

1995年12月


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