旅の詩/祈り2
祈り2
対象を必要としないはずの
祈りの向こうに
くるくるまわる電飾の光背
ただ祈ることは難しい
ヤンゴン、
その中心にそびえるパゴダを背に
一歩外に出て
聞こえていたはずの首都の喧騒に気づく、
たった今まで
この背の方には
音も声もなかったと知る
ターヨーという村へ向けて
カローの町から山に入る
パラウン族と呼ばれる人々の住む、
ターヨーはマレビトの耳で太陽となった
日のあるうち
朝六時から夕方の六時まで働いて
誰かの結婚式以外には休日はないという
生き残るための暮らしでは
あらゆる細部に
無意識の祈りが込められるので
日曜ごとに会堂に集まる必要がない
人の住む山に精霊が満ちる
八十を過ぎて風景に近づいた女が
十日で一枚のロンジーを織った
命の糸が継がれていく
1998年12月
※ミャンマーの首都がネピドーに移ったのは2006年。
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