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旅/ムンバイで感電したら命拾いした話ww

1998年頃の話。

サイババ見物を早々に切り上げ、ボンベイ(ムンバイ)のサルベーションアーミー(安宿)に戻った。

食堂だったかドミトリーだったか忘れたが、ビルマ(ミャンマー)で坊さんやってた、という人と知り合った。(以降、坊さん、と記す。)

坊さんは言った。
「食いっぱぐれたら、ビルマ行くといいよ。2万円で坊さんになれる。袈裟(けさ)代が2万円かかる。」…ホントかいな?
そしてこうも言った。
「アジア最大の売春窟、見に行かない? 社会科見学。」

そういうのはコワいから断ったのだが、暇だったし、あんまりしつこく誘うから、結局okした。

夕方、坊さんと連れ立って、ボンベイの中央駅(だったと思う)へと向かった。そこから各停で数駅先に、その魔窟はあると言う。

駅の窓口で切符を買おうとすると、係の人がなかなか売ろうとしてくれない。
「なんでそんなところに行くんだ? 何しに行くんだ?」
…なるほど。ボンベイの人にとっては、外国人には見せたくない、恥部なのだろうか…

正直に答えても切符は売ってくれそうもない。けど、そもそもなんでそんな権限を切符売りが持ってるんだ? なぜならここはインドだから、何がどうなってこうなるのか、皆目見当もつかない…

なんて言おうか日本語でゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョ相談してたら、向こうがしびれを切らして、売ってくれた。

到着。
なるほど。すごい…すごすぎた…。
まさに魔窟!!
どう説明すれば伝わるだろうか。5、6階建ての、コンクリの古びたアパートみたいのが、その広大な一角にひしめき合って建っていて、そこにある部屋の全てが営業中!?なのだそうだ。イメージできるだろうか。しかも、町全体が暗い。
(危険だったので撮影はしてません。)

「行こ」
坊さんに促され、路地に入り、適当に選んだ魔窟の一つに足を踏み入れた。階段で一番上の階まで登り、一軒目に突入した。

広めの部屋に入ると、向こう側に、横に長い長い椅子があって、そこに若い女性がズラッと座っていた。ボクらはこちら側に座って…若い女性!?ってか、幼くないか⁉

あとから来た客が、サクッと選んで奥の部屋へと消えていく。
「なんだかやだなー」と思いながら坊さんに目をやると、
「次行こ」と言って坊さんは席を立った。

部屋の外に出ると坊さんが言った。
「これを繰り返すんだ。別に買わなくていいんだ。社会科見学でしょ。」

階段で1フロアおりて、次の部屋に入った。
するとまた、向こう側に女性がズラッと座っていて、こっちに二人で座って、女性をグルッと見渡して、
「なんだかやだなー」
「次行こ」

で、また1フロアおりて、次の部屋に入って、
「なんだかやだなー」
「次行こ」

で、また1フロアおりて、次の部屋に入ったら、入口のドアを閉められた。
ヤバいっ!!って思ったが、平静を装い、座って見渡して席を立ったが、ターバンを巻いた小太りの毛深い男に、腕をつかまれた。

ヤバいっ!!ヤバいっ!!ヤバいっ!!ヤバいっ!!ヤバいっ!!…

ターバンを巻いた小太りの毛深い男は笑いながら、顔をゆらゆら左右に揺らしながら、
「さあ選べ、さあ選べ、」とつめ寄って来た。

ボクはあたふたしながら、後ろ手にドアを開けようと必死で、とっさに何かをつかんだ。

その瞬間!!、

ビリッ!!ビリッ!!ビリッ!!ビリッ!!ビリッ!!ビリッ!!

電飾だった。
こんなことってホントにあるの!?
ギャグマンガじゃんか⁉

ボクの体を伝わった電流が、ボクの腕をつかんでいた小太りの男の体も貫いた!!

ビリッ!!ビリッ!!ビリッ!!ビリッ!!ビリッ!!ビリッ!!

男はもんどり打って腕を離した。
スローモーションが始まった。
今しかない!!

ボクは走って逃げ出した。走って逃げることなんてそうそうないよ? ドアの鍵がかかってなくてホントによかった。

気がつくと、坊さんが前を走っていた。どうやって逃げ出した!? 坊さん頼むよ最後まできちんと面倒みてくれよ…

二人で走って大通りに出ると、ちょうど路線バスが来た。坊さんが叫んだ。
「飛び乗れ!!」
行き先を心配して躊躇(ちゅうちょ)しているボクに坊さんが言った。
「大丈夫、コレ、ボンベイの中心まで戻るから。オレ、前にも乗ったから」
…前にも来てたんかーい

数日後、坊さんが先に帰国した。かばん二つに大きめの救急箱を持っていた。それが財産の全てだと言った。
「住むとこないんだよね。空港で、住み込みで働かせてくれるとこ、探せるでしょ?」
…ビルマで坊さん やらんのかーい

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