旅/ベトナムで偽タクシーの運ちゃんの首を後ろから絞め上げた話
1997年の話。
「詩/フーンズオンホテル」はミトーで書いた。今回はカントーでの話。
カントーへ行く途中、バスを降ろされ、はしけ?フェリー?のようなもので、川を渡った。カントーでは、その はしけにいた客引きに案内された安宿に泊まった。
この安宿のオーナーがかなり怪しいヤツだったのだが、数日の予定だったし、体調も悪かったので、宿を変えなかったのが失敗だった。
ホーチミンに戻る日の前日に、
ガイドブックに書いてある、ホーチミンまでダイレクトに行く軽バンが、ガイドブックどおりに郵便局の前から出ているのか
を、オーナーに確認した。彼は、その通りだと答えた。
ただ、少し早く行くように、と。
それは、当たり前の答えだった…。
当日の朝、少し早めに郵便局の前へ行くと、白い軽バンが止まっている。荷台に人を詰め込む乗り合いタクシーだ。
運ちゃんに、ホーチミンへ10ドルでまっすぐ行くのはこの車か、と聞くと、そうだ、とのこと。
これだこれだ、と思い、乗り込んだ。手ぶらの先客が二人。
ボクが乗り込むと、すぐにドアが閉められ、発車した。
発車してすぐ、運ちゃんが値段を吊り上げてきた。先客二人はニヤニヤしている。
ヤラレタ!!
一瞬で話が全部つながった。この車はホーチミンには行かない…。ただ一つだけ、お前らはミスった。発車してすぐそんな話をすれば、まだ挽回できるって思う。こうしてやるだけだ…。
ボクは運ちゃんの首を後ろから絞め上げた。
運ちゃんが急ブレーキをかけた。
ボクの体は運ちゃんの首で固定されていたが、
ボクににじり寄ってきた二人の男は後方に飛んだ。
そのスキに、ドアを開けて走って逃げた。
郵便局の前まで戻ると、さっきとは少し離れた場所に、郵便局のマークの入った白い軽バンが停まっていて、客が荷台に乗り込んでいるところだった。
…この正規の軽バンで、バックパックにくくりつけておいたスニーカーを盗まれた。フランスから独立し、アメリカを退けた国の民を侮ってはいけない…。
(記憶が定かではないのだが、ボクからオーナーに軽バンの確認をしたのではなく、向こうから、明日どうやって帰るのか聞かれた気もする。いずれにしろ、宿を出るまでは、オーナーとの良好な関係を装う必要があった。)
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