1988年から89年にかけて、広島県JR福山駅南口の裏路地に「ユニーク・クロージング・ウェアハウス」はありました。高校生だった僕らには憧れのお店でした。いわゆるアメカジの店だったような気がします。
彼女にプロポーズした1998年の冬、小さな部屋の小さなテレビではフリースのCMばかりやっていました。あの店が全国区になっていました。
500ページ近い大著を読みながら、上のようなことを次々と思い出します。
大げさですが、同じ時代を生きてたんだなあと、この手の書籍には珍しく、やたらと感情移入してしまいました。
概要
言わずと知れたユニクロ・柳井正氏の一代記です。
「どこにでもいそうな、さえない青年はいかにして覚醒し『柳井正』になったのか」。Amazonの惹句でもわかるように、地方の紳士服店からユニクロにまで駆け上がる柳井氏の半生が描かれています。
それに加え、柳井氏の半生に登場するともに戦う同志や、影響を受けた人々の群像劇に仕上がっており、500ページ弱でも一気に読める傑作エンタテインメントになっています。
メモをもめ
柳井さんの経営の偉大なところは、SPAの先駆もさることながら、
「下手にターゲット・オーディエンスをせばめない」
「とにかくスケールアップ(拡大)を目指す」
の2つに尽きると思われます。
前者は、本書では(やや高尚に)「服の民主主義」という言い方で表現されていたものです。昨今のマーケティング界隈ではとにかく「ターゲットが、ペルソナが」と言われますが、日本最大の小売りはペルソナなんて考えているんでしょうか。
後者は、昔、柳井氏が石川康晴氏(ストライプインターナショナル創業者)との対談で言ってました。当時、アースミュージックアンドエコロジー(earth music&ecology)を全国展開していた石川氏の「世界進出」の悩みに対して「スケール(拡大)を目指さないビジネスなんてあり得ない」と単刀直入していました。
このような柳井経営の本質が、一代記である本書のどこで、現れ・得られたのか。本書では柳井氏の経営論までは深入りしていませんが、個人的には、たいへん興味深く読むことができました。
昔から柳井氏の本は好んで読んでいました。こちらもおすすめ。