怖いもの


「顔」
可食部の少ない僕の物語は
いつも赤黒く爛れている
ブルーライトの子守歌
液晶の常夜灯に抱かれて
2進数に脳を犯されながら
情報を貪っている
人混みに呑まれる
街並みに揺られる
VRゲームみたいに
三半規管が情報を反芻して
現実世界で悪酔いがする
臭い、汚い、うるさい、醜い
人の顔を見るとそんなふうに思う
あとは、、、、、怖い。
鼻の毛穴、眼球の血管
歯の色味、唇の形
顔のパーツが鮮明に視認できる
その「人の顔」ではなく
人間のパーツが個々として認識される
それらは様々組み合わせでその個人を表し
感情を体現し、人格、性格、
あるいはその人の立場や生活などが
ある程度読み取れる
それもまたリソースの少ない私のCPUでは
処理落ち仕掛けそうになるのだけど
何よりその、なんというか有機的すぎる。
人間の顔はあまりにもグロテスクだ
多分人間の裸体や内蔵よりグロテスクだと思う
それは物体としてだけの情報だけでなく
心までも欲望までも表現する
だから人の顔は怖い、気持ち悪い
そう思うようになってからは鏡を上手く
視認できなくなっていった
歯を磨く時、顔を洗う時も
眉毛を剃る時も感覚でやってる
まぁ、全部剃るから関係ないけどね
人間の目は2億画素程だという
だけど僕にはそれ以上の何か刺激物で
高濃度な毒ガスの中を
息苦しくふらついてるみたいだった

「トラウマ」

これは私の仮説であります
私は昔から物音に怯えておりました
そういう生活をしていました
ですから環境音に敏感で
体がビクッとなることが多いのですが
私の作る音楽にはかなり様々な環境音を使っております
また、歌詞に女性に対しての、大人に対して言及する事も
多々あります
ホラーゲームが好きで寝る時も
起きてる時もそういう映像、音楽をずっと流しています
なにか落ち着くのです
性暴力、ネグレクト、グロテスクな画像
そのような創作物、またはそのような体験を
制作の中に落とし込んできました
ここからが本題なのですが
そのようなトラウマや脅威を知った者
体験した人は他の人と比べその現象、局面が
人の心に与える影響をよく知っているのだと思います
それがどういう恐怖なのか
どのような脅威なのか
ほんとうは何が恐ろしいのか
自分の敵は誰なのか
つまりは解像度が高い訳ですね
しかし、人間とは適応力が高いと言いますか
賢いと言いますかそれすら己の道具として
心の1部人格の1柱として
己に住まわせることが出来るわけです
そうして、時に誰かに同じことをしてしまう
うすらうすら気づきながら同じことを繰り返す
それは既に自分の1部であり
人間にそのような行動をとった時
相手がどのような心の動きをするのかのく知っているから
トラウマはとは扱い易い想起しやすい
そして暴走する
アドラーはトラウマを
現状維持を正当化する理由としましたが
もっと簡単に端的にいうと
彼らは不安に安心する
現実から目を背けてくれるものに飢えている
だけど私は
それを恥ずかしいことだとは思いません
誰かにバカにされていい生き方なんてありません
いつの日か起こったあなたを傷つけた
もしくは失敗してしまった出来事は
刹那の無駄もなく今日もあなたを豊かに
他の人よりも世界を彩っています
そのトラウマを恥じないで
抱え込むのではなくモンハンの操虫棍みたいに
ぶん回して生きてください
私は操虫棍しか使いません


「紗那」

彼女は泣いている
声にもならない嗚咽を
しんしんと響かせて
瞼を閉じた暗闇よりも
深くて冷たい
あるいはじめじめと生温かい
その場所で
よこたわる女を抱えて
私を責めている
四六時中彼女の声が聞こえる
私は彼女の目を潰した
舌を切り裂いて
鼓膜をえぐった
だけども彼女の声がする
きっと彼女にも私の声が
聞こえているのだ
もう彼女が表に出ないように
あんな場所に閉じ込めた
彼女が恨むのも無理はない
君の幸せをことごとく壊していったのだから
その女のように
君も死ぬんだろうか?
それは少し寂しい
彼女は優しい
だからまだ私の前から消えないでいてくれる
また明日来るよ
その時まで眠っていてね

紗那


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