「わたしって誰だっけ?」「ぼくの好きな人だよ」
しあわせ?って聞くよりもはやくきみの涙が首筋まで流れて、口をつぐんできみの好きな音楽を流した。
ワンルームにて、ピンクが好きだったきみの部屋はグレーに変わっていて、ピンクの亡霊に犯されてしまったのだと知る。
わたしたち近づきすぎちゃったねって泣きそうな顔をして言った、いつも嗅いでいたはずのきみの煙草の香りがいつもと違く感じて、ぼくたちがもうすぐ他人になる合図みたいに感じてかなしくなって、きみの腕を引っ張った、死ぬな、死ぬなよ、なあ、って言ったらきみは笑ってた。
きみは、しあわせ?
こころの奥を、誰もが知ることがないことが希望で、絶望で。
あの子わたしよりかわいいよねってさみしそうに笑うきみを抱きしめた、きみがきみを守るためにどんなにたくさんの女の子をきみの中に宿していたとしても、ぼくは、今のきみを愛します。
かなしみを孕んだ誓いを口に出すのはいつも夜。
星が綺麗だよ、なんて言うよりも前にくちづけをしたかった。
空を見上げるよりもはやい速度で、きみの瞳をちゃんと見たかった。
きみのいちばん好きなきみにピントを合わせて、シャッターを切る。