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『白い妖精』

くだらない人生を過ごしていた彼の元へ
ある日『白い妖精』があらわれました。

白い妖精は彼に告げました。
「願い事をかなえてあげます」
彼は伝えました。
「たくさんの友達をください」

彼にはたくさんの友達ができました。
その日から彼は毎日友達と遊びました。
それは楽しい日々でした。

しかし、彼はくりかえす日々に飽きてしまいました。

そんな彼の元へ『白い妖精』があらわれました。
「願い事をかなえてあげます」
彼は伝えました。
「たくさんのお金をください」

彼は大金持ちになりました。
欲しいものは何でも買うことができました。
彼は毎日おもしろおかしく過ごしました。

しかし、彼は満たされた日々に飽きてしまいました。

そんな彼の元へ『白い妖精』があらわれました。
「願い事をかなえてあげます」
彼は伝えました。
「権力をください」

彼は地球で一番偉い人になりました。
友達もいます。お金もあります。権力もあります。
彼は幸せの絶頂でした。

ある日、彼は病気になってしまいました。
お医者様は告げました。
「あと三ヶ月の命です」

そんな彼の元へ『白い妖精』があらわれました。
「願い事をかなえてあげます」
彼は伝えました。
「永遠の命をください」

彼は永遠の命を手に入れました。
「僕にはもう怖いものはない」
彼は何の心配もせず、毎日を好きなように生きました。

――1000年後

彼の起こした戦争により人類は滅びました。

すべての植物は枯れ、すべての動物がいなくなりました。
彼だけを残して。
彼は食べ物がなくなり飢え苦しみました。
しかし生き続けました。

――50億年が過ぎ

赤色巨星と化した太陽が地球をのみこみました。
焼ける熱さにもがきながら、彼は生きていました。

やがて太陽が白色矮星となり太陽系は消滅しました。
宇宙空間に取り残された彼は、凍える寒さに震えながら
それでも生きていました。

――果てしない時が流れました

宇宙は消滅し、永劫の無の空間が広がっていました。
彼は生きていました。

そんな彼の元へ『白い妖精』があらわれました。
「願い事をかなえてあげます」
彼は伝えました。
「くだらなかった毎日にもどしてください」

伝えたつもりでした。
しかし、すでに人の形をしていなかった彼は
思いを伝えることができませんでした。

「欲の無い人ですね」
白い妖精は微笑み、姿を消しました。

無限に広がる世界に
彼の悲しみの概念だけが存在しました。
その中心で彼は生き続けたのです。

白い妖精は二度とあらわれませんでした。

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