あんこちゃんとクリームくん（3）

（3）あんこちゃん、おやすみ

いろり庵に夜が来て
あんこちゃんとクリームくんは
眠りにつきます

『あんこちゃん、おやすみ』
『クリームくん、おやすみ』
と言い合って眠ります
ふたりともいつもぐっすりと眠ります

いつものように
クリームくんは
『あんこちゃんおやすみ』と
言いました

けれど、
あんこちゃんは
黙ったままうつむいています

『あんこちゃんおやすみ』と
もう一度言いました

けれど、やっぱり
あんこちゃんは黙ったままです

『どうしたの？』と
クリームくんが聞くと
あんこちゃんはクリームくんに
背中を向けてしまいました

『おなかすいたの？』と
クリームくんは心配そうに
のぞきこみました

すると、あんこちゃんは
突然声を上げて
泣き出してしまいました

クリームくんはびっくりして
眠るまえにぽったりとした
おなかのクリームがぎゅっと
頭の方に上がるのを感じました

慌ててクリームくんは
『ごめんね、ごめんね』と
謝りました
何かいじわるをしたかなあと
思い出しながら、
ごめんねと言いました

あんこちゃんは2回3回と
泣きながら首を振りました
そうして泣きながら言いました

『違うの、
今日クリームくんにいじわるしたのに、
ごめんねって言えなかったから、
おやすみって言えないの』

そうか、あんこちゃんは
ごめんねが喉をつかえて、
おやすみが言えなかったのね

クリームくんはそっと
あんこちゃんの頭を撫でながら
『だいじょうぶだよ、おこってないよ
僕も時々、いじわるしちゃうから』
と言いました

あんこちゃんは
少し泣き止んで
『ごめんね』と
言いました

クリームくんは
『いいよ』と
言いました

それからあんこちゃんが
泣き止むのを待って
ふたりで手をつないで
眠りました

まんまるのお月さまが
安心したように雲に隠れました

朝が来たらふたりで言えるね
『あんこちゃん、おはよう』
『クリームくん、おはよう』
楽しい明日まで、ゆっくり眠ろう
楽しい夢を見よう

つづく

◇◇

アポロさんの詩から着想を得て
作成しました
いつも優しいお声をかけてくださり
ありがとうございます！

あんこちゃんとクリームくんシリーズ
絵本原作『あんこちゃんとクリームくん』
小説版『いろり庵のあすかさん』

あんこちゃんとクリームくん｜りよう｜note