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騎士団長だった男の傷の痕
途切れがちな夢のなかで物語の断片を
無理やり見させられるように
雨は短い間隔で降ったり止んだりを繰り返す
雨中を歩くほど急ぐ理由も行く場所も見当たらず
軒下や岩場の下で眺め続けた
雨は同じ方向にばかり進む
目を戻すと尻尾の切れたヤモリが
いつの間にか傍におり、暫く時間を共にした
その断面を見てどこかで危険があったのかと
分かりもしないことに想像を巡らせる
小さな河をつくるように雨は流れてゆく
どちらが高くて、どちらが低いのかを知る
どうやらほんの少しの上り坂を歩いてきたようだ
再び目を戻すともう、ヤモリはいなかった
これもまた物語の断片のようだ
欠けてしまったものはこのまま歩き続けても
戻ることはない
分かっていても旅はやめるわけにはいかない
雨が降る細かな原理は分からないけれど
そこには秘密はないのと同じように
どちらが大きくて、どちらが小さいのかによらず
両方とも断片でしかないということと
その理由だけは何よりも明らかだ
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