バスでのひととき
美術館ネタではないけれど、今日泣きそうになった自分を客観的に眺めてみた、スケッチみたいにね。
仕事終わりに駆け込んだ駅からのバス、乗り口ステップに足をかけた時から子供の泣き声がバス中に響いていた。
私はふ〜んと思いながらも疲労に任せて泣いてる彼の席の前が空いていたこともあり腰をかけた。
どうやら3才ほどの彼はバスの最前列に座りたかったらしい。なかなか大きな泣き声は力強さを失わず悔しさを精一杯込めて弱まる気配はない。
なんと可愛らしい。
若い母親は、そうだね、前行きたかったね、でもまだダメなんだよと優しく繰り返している。
2人の娘を育ててきた、ママの気持ちは痛いほど沁みてくる。
沁みてきて泣きそうになるのか、いやそうじゃない、こんなに泣いている子供の声を微笑ましく周りの大人たちが見守っている。嫌な顔もせず、黙って可愛い反抗を懐かしいこととして受け入れている。
そのことが私を泣かせた。
疲れている人もいるだろう、もちろん子育てを懐かしんでいる人たちも。ここに住んで数十年、こんなに穏やかな気持ちで小さな反抗を見守れるこの土地を心から誇りに思えるひとときだった。
降りるとき、なにか声をかけたかったが笑顔でやり過ごすことしかできなかった。
がんばれ、ママ
公共機関では子どもたちを騒がせちゃいけないと、過剰に緊張していたあの頃を思い出しながら横断歩道を渡って自宅への道を急いだ。
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