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ライブ備忘録:Mr.Children Dome Tour 2019 "Against All GRAVITY" @ナゴヤドーム 2019.5.25

 前回、2018年11月29日に行われた「Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸」横浜アリーナ公演について書いた。

 そこから半年後の2019年4月~5月、Mr.Childrenはアルバム『重力と呼吸』を引っ提げて新たにドームツアー「Mr.Children Dome Tour 2019 "Against All GRAVITY"」を行った。
 Mr.Childrenは近年、アルバム発売の際はアリーナツアーとともに、ドームもしくはスタジアムクラスの会場でもツアーを行うことが恒例となっている。
 デビューして27年経っても当たり前のように大会場のツアーを行えることは本当にとんでもないことなのだが、今回も例に漏れず、国内アリーナツアー終了後すぐにドームツアーの開催が発表された(ドーム単独のツアーは2012年の「MR.CHILDREN TOUR POPSAURUS 2012」以来約7年ぶり)。
 そしてこのツアーが2021年5月現在、Mr.Childrenが行った最後のツアーとなっている。

 自分が行ったのは2019年5月25日のナゴヤドーム公演1日目。
 当日はナゴヤドーム横にあるイオンがライブ参加客で溢れ、フードコートなど至るところでMr.Childrenの楽曲がBGMとして流れていた。
 また、今回は自分がMr.Childrenのライブに行くようになってから初めてアリーナ席のチケットを手に入れた。ステージに向かって左端の席だったが、前の方だったため、メインステージや花道がとても見やすかった。

始まりは田原さん

 今回のツアー、やっぱり衝撃だったのはオープニングである。
 1曲目が意外だったということではない。その前である。
 暗転し、プログラミングの音が流れるなか、まず現れたのは田原さんであった。そしてスポットライトを浴びた田原さんはギターを弾きだした。
 すごい。まさか田原さんのギターソロから始まるライブになるなんて。
 その後後ろから起き上がってくるスクリーンに合わせてSUNNYさんと世武さんのピアノも加わる。3人の演奏、これだけでも美しい。
 3人が演奏するなかJENさん、中川さんが入場。そして最後には花道に桜井さんが姿を現した。
 場内大興奮のなか、JENさんのカウントで1曲目「Your Song」の演奏が始まった。
 勢いよく紙吹雪が舞い、桜井さんはセンターステージとダッシュした。

 「Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸」国内公演ではアンコールの最後に披露された楽曲。そこからの続きと言わんばかりのロケットスタートだ。
 そして2曲目、ギターをサンプリングしたような音が流れるなか、鳴らされたイントロはなんと「Starting Over」(映画「バケモノの子」主題歌)!!!

 「さあ始まるぞ!!」という桜井さんの掛け声とともにスクリーンにはメンバー4人の姿が映る。場内は割れんばかりの大歓声だ。
 『REFLECTION』関連のライブに行けなかった自分にとって念願だった「Starting Over」。シンセサイザーによって鳴らされるストリングスフレーズ、力強いギター、そして何といっても唯一無二の桜井さんの歌。
 あらためて考えても、なんでこの曲がシングルではないのだ。
 さらに映画「君の膵臓をたべたい」の主題歌としておなじみの「himawari」。

 もはや近年のライブに欠かせない楽曲となった「himawari」。
 冒頭3曲がまさかのセルフプロデュース期に出された名ロックバラード3連発になるとは。「重力と呼吸」ツアーの冒頭も対外だが、これはちょっと強すぎないか。普通ならもうライブが終わってしまう。
 この3曲だけでもお腹一杯なのに、桜井さんの煽りとともに次に歌われたのはなんと1994年のミリオンヒットシングル「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」。

 様々な文字看板が描かれたスクリーンの前でカッコよくギターソロをかき鳴らす桜井さん。おまけに世武さんのセクシーな吐息まで聴いてしまった。バチが当たること間違いなしである。

Thanksgiving 27

 「平成の名曲をもう一回、もう一回、もう一回」という桜井さんのMCの後に歌われたのは当然平成の大名曲「HANABI」。

 いつ聴いても名曲とはこの曲。アレンジも演出も曲順も「Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸」とまったく一緒なのだが、そんなの関係なしの盛り上がり。ドーム中の「もう一回 もう一回」、迫力がすごすぎる。
 これで終わらないのがこの日のMr.Children。なんと「HANABI」の次に演奏されたのは名作ドラマ「オレンジデイズ」の主題歌「Sign」。

 「オレンジデイズ」に合わせてなのかオレンジ色の暖かな照明に照らされて花道で歌う桜井さん、尊い。
 そしてラスサビ前の「緑道の木漏れ日が~」の部分で桜井さんに見つめられていた人、羨ましすぎる。そこ代わって。
 それにしても今日のライブタイトルって「Thanksgiving 27」だったっけ?となってしまうくらいのガチすぎる名曲祭り。
 「Sign」の圧倒的な歌唱の余韻を感じていると、なんとセンターステージにヘッドセットをつけた桜井さんが。
 ここで桜井さんはツアータイトル「Against All GRAVITY」の意味について話し始めた。
 「重力に対峙する」という意味を持つ「Against All Gravity」。これは比喩であり、「空を自由に飛びたいと思う人にとっては重力が敵」「歳をとりたくない人には時間が敵」と人はそれぞれ常に何か対峙しているものだと話す(話の際中に観客の反応を気にした桜井さんが「Understand?」と何回も聞いていたのがおもしろかった)。
 そして話は「令和」の話へ。時代によって変わっていった方が良いものと変わらない方が良いものの両方があり、Mr.Childrenはそのどちらなのか?と観客に問いかけたところで桜井さんはアコースティックギターを鳴らし次の曲へ。1996年発売のダブルミリオンシングル「名もなき詩」だった。 

 1番は桜井さんが弾き語りで歌い、サビに近づくにつれてJENさん、中川さん、田原さんが花道を歩いて合流してきた。花道で何か変顔をしているJENさんを無表情で見つめる田原さん、最高すぎる。
 そしてサビからはメンバーも演奏に参加。いつものエモーショナルな「名もなき詩」とは違い、優しさを感じるアレンジだった。
 そして曲中でメンバー4人が向かい合って演奏する場面も。今のMr.Childrenのメンバー間の風通しの良さが伝わってくる演出だった。
 「名もなき詩」終了後はメインステージでキーボードを弾いていたSUNNYさんと世武さんも合流し、6人でセンターステージで演奏することに。
 桜井さんが話し始めたのは2005年の12th Album『I ♥ U』制作時のエピソード。
 当時桜井さんはMr.Childrenと別に日本のスーパーミュージシャン(小林武史、亀田誠治ら)とともに「Bank Band」の活動を始めていた。
 一方でMr.ChildrenではBank Bandにはない粗削り感を求め完成させたのがアルバム『I ♥ U』であると語った。
 そのアルバムから披露されたのはレア曲「CANDY」。ストリングスのイントロが今回はキーボードで表現され、原曲の持つシリアスさがよりライブ感を持って表現された。
 さらにピアノに合わせて歌われたのは、2007年に新垣結衣(ご結婚おめでとうございます)主演の映画「恋空」の主題歌にもなった「旅立ちの唄」。

 レア曲をどんどん放り込んでいく。まさに「Thanksgiving 27」状態だった。

桜井さんが1番好きな曲

 そしてまたもMC(今回のツアーは短いのも入れてMCが多かったのが特徴である)があり、なんと桜井さん自身があえて1番好きな曲を決めるならこの曲、という楽曲を演奏するという。その曲は2000年の元日に歌詞を書いた曲だといい、自分で自分の書いた歌詞に感動したという。
 ということは9th Album『Q』のころの曲かと考えていると演奏されたのはなんと『Q』収録の「ロードムービー」!!
 「ロードムービー」が1番好きな曲であったことに意外さを感じつつも、桜井さん流の希望を想起させる歌詞のこの曲が、令和の最初に鳴らされたことに意味を感じた。
 「ロードムービー」が終わるとハードゾーンへ。
 「Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸」と同じ曲順で「addiction」「Dance Dance Dance」が披露される。

 「Dance Dance Dance」では今回も田原さんがセンターステージでギターのイントロを弾く、田原さんフィーチャー演出。もう毎回やろう。
 さらには曲中で桜井さんと田原さんが向かい合ってバトルのような感じになるパフォーマンスも。今まであまりなかった絡みなのでやはり興奮した。

 ハードゾーンはさらに続き、「Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸」では2曲目に演奏されていた「Monster」が力強く演奏される。

Sunrise Brightens Up

 あっという間の13曲。
 場内が静まっていると、都会の夜明けと思われる映像とともに世武さんのピアノ演奏が行われる。美しすぎる旋律に酔いしれていると、JENさんのカウントへ次曲へ。
 ただ田原さんが弾きだしたアルペジオに耳を疑ってしまった。
 そのアルペジオはどう考えても「SUNRISE」(2007年発売の13th Album『HOME』収録)のものだったからだ。

 自分が個人的に大好きとかそういう問題でなく、「SUNRISE」は2007年の発売以降アルバムツアーでも披露されず、その後も2010年の映像作品「Split the Difference」と2011年の「ap bank fes'11」という数少ない機会でしか演奏されていない楽曲だった。
 なのでそれまではライブでやってほしい、と強く思いながらも、おそらく「SUNRISE」は生で聴けることなく死んでいくのだろうなぁ、とネガティブなことを考えたことも多々あった。
 そして時は2019年5月25日の名古屋。突然の邂逅だった。
 もちろんライブツアー初披露。まさかそれが「Against All GRAVITY」になるとは。
 ここから自分にできたことは一音一音をただただ噛み締め、メンバーが演奏する姿を可能な限り目に焼き付けることだけだった。
 田原さんの美しいギターの音色、桜井さんと世武さんのコーラス。ああ、まさか現実になるとは。
 傲慢なことだが、自分のために用意してくれたライブのように思えた。

ミスチル楽曲に序列なし

 しかもその次の曲はバンド史上最大のヒット曲「Tomorrow never knows」というのができすぎている。
 SSRレベルのレア曲とダブルミリオンを達成している定番曲を並列してライブ後半で演奏するって。そんなのやるアーティストをMr.Children以外に知らない。
 もちろんサビは大合唱。MVに出てくるグレートオーシャン・ロードをイメージしたオリジナル映像も含めて、圧倒的なスケールを見せつける。

 さあここからはもう定番曲の連発かと思ったら次は「Prelude」(2010年発売の16th Album『SENSE』収録)と来てしまった。

 だから自分のためのライブじゃないんだよ。ここまで自分を喜ばせてくれなくていいんだよ、となってしまうくらい、やはりこの曲も大好きな曲である。そしてライブでは2011年に行われた2本の『SENSE』関連ツアー以来約8年間1度も披露されていなかった楽曲である。
 「音楽という“乗り物”にみんなを乗せて、悲しみや寂しさや退屈からできるだけ遠い場所に届けたいと願っています!!」という桜井さんの高らかな宣言。完全に持っていかれた。その瞬間、ナゴヤドームには喜びしかなかった。
 そして「Prelude」と並んで歌われたのがこれまたライブ定番曲であり永遠のJ-POPクラシック「innocent world」って。
 強気すぎるセットリストだよ。本当に。
 ラスサビは美味しくいただきました。

 このスロットでの「innocent world」以上に盛り上げる曲なんてあるのか、と思っていたが、本編最後、「海にて、心は裸になりたがる」はそれを超えていった。
 この曲、本当に「エソラ」「fanfare」などの枠に今後も入っていくかも。
 アリーナツアーでもあった中川さんの叫び、今回もやってくれた。これは今後も楽曲とセットで。

 後半の盛り上がり、破格だったな。もうこれでライブが終わりでもいいくらいの満足度だった。

アンコール

 とは言ってもアンコールも楽しみにしていた。
 「Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸」の冒頭で流れたものと同じSEが流れて演奏されたのはもちろん、そのツアーで1曲目に披露された「SINGLES」。

 さらにはアリーナツアーでもライブのピークポイントで演奏された「Worlds end」。
 終盤、ドーム中の観客とのコール&レスポンス。すべてを込めて歌う桜井さんの姿。まさに歴戦の勇者だった。

 最後のMC。ファンの間で話題になったMCである。
 桜井さんは「もし明日声が出なくなり、バンドが止まってしまったとしてもきっと後悔はしないだろう」と語った。「今、こんなにもたくさんの人が自分たちの歌を聴いてくれている」から。
 そのうえで「だからこそあと1曲、いや10曲はみんなが歌える曲を作りたい」と語った。
 そしてその後、桜井さんの口から「今回のツアーが終わったらロンドンへレコーディングに行く」ということが語られた。
 当然、これがアルバム『SOUNDTRACKS』のレコーディングとなるわけである。
 当時この発言を聞いたときは、まさかここまでの短期間でアルバムを仕上げるとは思ってもいなかったが、『重力と呼吸』の完成、ライブツアーの敢行が、Mr.Children自身のさらなる成長を刺激したことは間違いない。
 そして歌われたのは「皮膚呼吸」。

 アリーナツアーのとき以上に歌詞が心に染み渡った。まだまだMr.Childrenは進んでいく、そう確信せざるを得なかった。(そしてこの1年半後にリリースされたアルバム『SOUNDTRACKS』はその成果を雄弁に語っている)

最後に

 途中にも書いたように、今回のドームツアーは新アルバムの曲以外の多くがヒットシングルとなっており、「Thanksgiving 27」としての要素も強かった。
 「Mr.Children Tour 2018-19 重力と呼吸」では多くのヒット曲を控えたストイックなセットリストだった分、ドームツアーでは「お祭り」の要素を復活させたのだろう。
 結果的に3大ヒット曲(「Tomorrow never knows」「名もなき詩」「innocent world」)がすべて演奏されただけでなく、「HANABI」「Sign」といった2000年代の名曲まで漏れなく披露された。
 そうしたなか今回、『I ♥ U』の楽曲が4曲(「Sign」「CANDY」「Monster」「Worlds end」)も披露されたのは示唆的だった。
 「CANDY」の前のMCでも述べられたが、『I ♥ U』は衝動性を優先した作品。そして『重力と呼吸』も「叫び」「力強さ」といったものがテーマにあり、この2つのアルバムに関連性を見出すことは容易だろう。
 アルバムのテーマにあった過去曲の選曲、演出、そしてライブトータルとしてのショーアップ。どれをとっても最高級。
 「Starting Over」「SUNRISE」「Prelude」を同時に聴けることはもう二度とないだろう。2年前、たしかに自分はナゴヤドームでMr.Childrenの最高の音楽を浴びていた。
 そこから2年、次のツアーが発表される気配は今のところないが、気長に待とう。
 2022年、メジャーデビュー30周年、ドでかい「HANABI」を打ち上げてほしい。

セットリスト

1.Your Song
2.Starting Over
3.himawari
4.everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-
5.HANABI
6.Sign
7.名もなき詩
8.CANDY
9.旅立ちの唄
10.ロードムービー
11.addiction
12.Dance Dance Dance
13.Monster
14.SUNRISE
15.Tomorrow never knows
16.Prelude
17.innocent world
18.海にて、心は裸になりたがる

19.SINGLES
20.Worlds end
21.皮膚呼吸

内訳

・19th Album『重力と呼吸』6曲。
・18th Album『REFLECTION』1曲。
・16th Album『SENSE』1曲。
・15th Album『SUPERMARKET FANTASY』2曲。
・13th Album『HOME』1曲。
・12th Album『I ♥ U』4曲。
・9th Album『Q』1曲。
・6th Album『BOLERO』2曲。
・5th Album『深海』1曲。
・4th Album『Atomic Heart』2曲。

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