路傍のフジイ「自分のモノサシを持つ」
柔術回ではありませぬ
路傍のフジイという漫画をご存知でしょうか。最高でした。せっかくなので感想文をまとめます。
1.主人公 フジイさん
独身中年の派遣社員。恋人はおらず友人の結婚式に参加したこともなく同僚からもナメられている人物
一見「こうはなりたくない」孤独で不幸でさみしいと思われるような人物です。
でもそんなことはなく、彼は人生が楽しくて、不老不死になりたいくらいやりたいことがたくさんあるといいます。
自分のモノサシをもっている
人生は日々いろんな”モノサシ”で測られて生きていきます。顔や身長などの外見、学歴、頭の良し悪し、家柄、社会的地位、彼女彼氏のステータス、服装、車、服、家結婚の有無、子どもの有無、センス、会社、友人関係、人脈、挙句の果てにはやっている趣味ですらモノサシの対象です。
作中に出てくるいわゆる陽キャの「矢部さん」はそういった世間一般のモノサシで測るとかなりイケていると思います。
誰もがそういったモノサシを持っていて他人のことをどうこう言うときがあって、勝手に「こういう人だ」って測っています
現代はモノサシで評価して、評価されてを繰り返しています。SNSの普及でそれはますます加速していると思います。
無意識に「他人にどうみられるか」という基準で生きている人が多いのではないでしょうか。
でもフジイさんは世間一般のモノサシではなく自分のモノサシを持っています。自分が良いと思うもの、興味があるものにまっすぐでそれを楽しんでいます。他人にどうみられるかを気にして生き方や趣味を選んでいません。
へたくそなギターも絵も陶芸もジグソーパズルもフリーマーケットも、他の人から見たら浅く見える”友人”も本人のモノサシではよいものなのでしょう。
同僚の石川さんから「フジイさんは誤解されていますよ」と言われたときのフジイさんの言葉。
「みんなに理解してもらうのは難しいと思います。自分が分かっていればいいです。」
2.田中さん
恋人はいないが、健康で友人もいて仕事もある。でも何か満たされなくて、部屋で一人でいると黒い靄(もや)がかかってきて気持ちが沈んでしまう。
最初はフジイさんを冴えない中年男性とバカにしていましたが、休日に偶然出会ったことをきっかけにフジイさんを知って変わっていきます。
「こんなふうになりたくないといったけど、俺はこんなふうになれない」
「この人がつまらないんじゃない、俺自身がつまらないからだ」
いわゆる世間一般のモノサシにしばられて苦しんでいる田中さん。第一話で友人の結婚式で憂鬱そうな表情を見せる姿が印象的です。
フジイさんと過ごすうちに自分のモノサシを少しずつ手に入れて黒い靄が晴れていくのが読んでいて面白いです。
3.石川さん
昔風俗で働いていて今も関係が続いている人が一人いる。恋愛や人間関係に消極的で3次元の人間よりも2次元の人間の方がよいという。友人も恋人もいない。
下心を持った男性たちと過ごした経験からどこか人生に悲観的なところがありますが、田中さん同様にフジイさんと過ごすうちに前向きに生きるようになります。
この人もまたいいキャラです。石川さんがフジイさんのことをこう話しています。
「あの人はモテると思いますよ。あの人といるといい人間でいたいと思えるんです」
他人を試したくなる石川さんが一度フジイさんをホテルに誘いますがフジイさんは断ります。
「よかった。断ってくれて」
二人が恋愛関係になるのかどうかはまだ分かりません。
4.外山さん
フジイさんのことをバカにしていて、石川さんのことが気になっている。ことあるごとに人を馬鹿にしたり悪口を言っているいわゆる嫌なヤツ
このキャラもまたいい味が出ています。読んでいて、私はフジイさんよりもこの外山さんに自分を重ねてしまうことが多かったです。
自分もこんなふうに他人を見下すようなこと言ってしまったことあるなあ。。。と。
5.まとめ
自分の中のフジイさんを大事にしたい
オチがいいんですよね。スカッと悪い奴が成敗されたり、登場人物が一気に生まれ変わるようなことはなく、「いろいろあるけど、今の自分の生き方も悪くないよね」と思えるようなラストが多いです。
他人から見たら本人も周りも何も変わってないように見えても、本人にとっては変わっている、ということはたくさんあります。自分の心の持ち方次第で、世界は別物になります。今までと同じものなはずなのに。
誰でも心の中にフジイさんがいるし、田中さんがいるし、石川さんがいるし、外山さんがいます。
外山さん的な嫌な自分も受け入れつつ、フジイさん的な部分を大事にしていきたいです。
鍋先生の前作「リボーンの棋士」も面白かったのですが7巻で終わってしまいました。フジイさんは長~く続いてほしいです。
電子書籍で買ったのに、好きすぎて紙の単行本も買ってしまいました。
長くなりましたが、ぜひ読んでみてください。読み終わった後、世界が少し違う景色に見えるかもしれません。
2024/7/12
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