10年間の旅館経験で役に立ったクッション言葉
おそらく数百年前の温泉旅館のお客様は、そのほとんどが湯治(温泉にはいって療養すること)を目当てにしていたことでしょう。
いまや、温泉旅館に宿泊するお客様の目的は様々。
多様な目的を持ったお客様へ、
こうだったらいいなを察知する。
こうだったらを叶える。
それだけでなく、
こうだったらを超えた滞在の演出をする。
予想外の感動が生まれる…
そんな場面を演出することができるのが、旅館業の難しさでもあり、醍醐味でもあると日々実感しています。
本日は、滞在の演出をするための接客用語の中でも、活用しやすいクッション言葉をご紹介します。
旅館業に限らず、様々なビジネス現場で活用できるものですので、参考にしていただけたら幸いです。
「ご期待に添えず申し訳ありませんが…」
まずはなるべく言いたくはない言葉から。
お客様の要求や要望をお断りするときに活用するクッション言葉です。
旅館ではホテルに比べると、お客様に提供できるハード面での違いが多く、期待に添えないことが多かったりします。
例えば、私の働く界 玉造は二階建てですが、エレベーターがありません。
おみ足の悪いお客様から、
「エレベーターはないんですか?」
と聞かれることが多く、
「ご期待に添えずに申し訳ありませんが、当館にはエレベーターがございません…」
とお断りすることが多くあります。
「ありません。」
とお答えするよりは、幾分柔らかい印象になるのではないでしょうか。
年配の方に対しては「心苦しいのですが…」という言葉選びもいいかもしれませんね。
「つかぬことをお聞きしますが…」
続いて、お客様の潜在的な欲求を確かめたいときに活用できる言葉。
例えば、フロントにいるときにこんな会話が起こります。
お客様:「近くにコンビニはないですか?」
スタッフ:「コンビニでございますね。ここからですと、徒歩圏内にはございませんが、車で5分程度のところにございます。つかぬことをお聞きしますが、どういったご用でコンビニをご利用でしょうか?」
お客様がコンビニにどんな目的を達成しようとしているのかを伺う際に、クッション言葉を用いることで、答えやすい印象となります。
ここで大切なのは、二点。
まずはお客様が知りたいことにきちんと答えること。
コンビニは近くにあるか?⇨徒歩圏内にはない。
顕在化している要求に答えなければ、次にどんな言葉をかけようが、「で、どうなの?」となってしまいます。
もう一点は、潜在的なニーズを探ること。
お客様には何か叶えたい目的があり、その手段としてコンビニを選択したわけです。
例えば、先程の会話の続きの例として、
お客様:「ちょっとお酒を買いに行きたくてね。」
スタッフ:「左様でございますか。コンビニにもございますが、すぐ近くに酒屋もございます…」
といったように、お客様の目的がコンビニに行かなくても果たせるかもしれません。
コンビニに行かずに済むことで、お客様は満足されるかもしれませんね。
※なお、コンビニエンスストアが正しいですが、ここではあえてお客様と同じ言葉を使っています
「もし差し支えなければ…」
最後のクッション言葉は先程の例文で使うことができます。
お客様:「ちょっとお酒を買いに行きたくてね。」
スタッフ:「左様でございますか。コンビニにもございますが、すぐ近くに酒屋もございます。もし差し支えなければ、地図でご案内差し上げてよろしいでしょうか?」
差し支えなければという言葉は、相手に選択の余地を与えて丁寧に申しいれする言葉。
このクッションがなければ、ちょっと押し付けがましい印象を与えてしまうかもしれませんね。
以上、滞在の演出をするための3つのクッション言葉のご紹介でした。
クッション言葉活用することで、感動が生まれるきっかけになればと願います。
【後記】
ほしのや軽井沢のおもてなしの達人、駒井里美さんのコメントがなるほど、と感じました。
「かしこまりすぎても緊張してしまうし、親しすぎても馴れ馴れしく感じさせてしまう。お客様とのちょうどいい距離から「くつろぎ」は生まれると思います。」
ちょうどいい距離感を生むための言葉選び。
他にもたくさんありそうですね。
皆さんも、工夫している言葉があればコメントいただけると嬉しいです。
おもてなし産業をかっこよく。
あんでぃでした。
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