小学校のエクセルの授業レベルの知識から始めた現場のDXで残業大幅削減に成功!
現場レベルで手間になっていたことを小さなことを効率化して楽にするのも、ITを用いていれば立派なDXです。別に大仰なシステムを導入する必要はなく、エクセルやスプレッドシートでも十分やれるということを教えてくれたのがand TRUNKの佐藤匠さん。今回はどのように手探りのDXを進めたのかについてお話を伺いました。
紙からの入力作業をGoogleフォームを用いて自動化
-佐藤さんはand TRUNKのDXにはどのような立場で関わっていますか
私は主に現場サイドからの業務効率化を推進しています。現場で手間になるのってやっぱり日々の入力業務や数字の計算なんですが、それらの自動化を進めてきたのが会社のDXの流れに合ったということだと思います。当社のDXといえば、村上が担当している値付け業務のRPA導入もありますが、私が担当しているのはそれとはまた別軸です。
-具体的にどのような業務の自動化を行ったのでしょう
最初は仕入れに要した金額や商品数などの細かいデータ入力からですね。僕が主任になった2年くらい前までは紙でペンで書いたものを、電卓叩きながらPCに入力していくという感じで。データ入力だけで1時間半くらいはかかっており、日中の業務が終わった後にやるので当然帰りも遅くなる。この入力作業をエクセルで簡略化するところがスタートでした。
最近だともともと紙に記録していた査定表を、そもそもGoogleフォームに入力してもらうことでデータを整理する工程を省くことができました。
これまでは
①客先で買取査定士が紙の査定表に記入する
②帰社後に査定表が提出される
③担当者が紙の査定表からエクセルに入力する
と最低でも3工程あり、これだと時間のロスも作業量も大きい。自動化後は
①客先で買取査定士がGoogleフォームに入力すると査定のデータがそのままGoogleスプレッドシートに入る。
と大幅に業務効率化に成功しました。
さらに、社内の買取査定士の実績も一眼で見られるようにしました。お客様からの問い合わせ数を母数として実際に自宅に行く約束までとれた割合であるアポ率とか、1件のお客様から何点の買取をしているかの客点数、この2つが買取査定士の評価に関わってくるのでわかりやすくしたいなと。
全店舗のアポ率・客点数がわかるテーブルを一つに統合して、その中でうまく数式を使い自動で数が抽出されるように工夫して作りました。
今はほぼ定時で上がれるようになりました
-結果として現場の業務効率化や働きやすさは実現できたと感じていますか
僕が入社した頃と比べると買取査定士の業務量は半分以下になっていると思います。これまで1時間くらいかかっていた作業が今では30分くらいで終わっています。
働きやすさというところでいえば、今はほぼ定時でみんな上がれている。もちろんイレギュラーが出て人の手が必要になることはありますが、残業が常態化しているということは無くなりました。
-全国の各店舗では運用はスムーズにできていますか
既存の店舗に関しては非常にスムーズです。業務効率化が目的なので現場のスタッフが難しい入力で悩むことがないように、明確でシンプルなインターフェースを心がけていますし、複雑な部分に関しては管理者権限があるマネージャークラスしかいじれないようにしています。
新店の場合は店に応じて難しさがありますね。これは僕の持論ですが、最初はいきなりデジタルにやらせるよりもアナログで教えて行った方がいいのかもしれない。アナログで「この数字はこういう計算で算出して、出た数値にはこういう意味があるんだよ」と教えていくことで、データの意味や算出する目的を理解してもらいやすい。それこそ電卓を叩いてみるとか。
その上でデジタルなやり方を身につけることで、より入力が正確になると思います。新店の場合は、業務に関する知識もPC操作の習熟度も人によって完全にバラバラですから、アナログな工程でそれを揃えて把握するのは有効です。最初から効率よくするのが全てではないのかなと。
あとは、社員である買取査定士はお客様のところに行くので外に出ていることが多いんです。店舗内でPC作業をやるのはアルバイトスタッフの方が実際には多かったりする。入社時点ではほぼPC操作したことない方なんかもいるんですが、触ってもらえばなんとかなんとかなることもわかりました。もちろん、「スプレッドシートが〜」とか「関数が〜」と伝えてもわからないので、シンプルに「ここにその数字を入力して」だけで最初はいい。そのうち仕組みは自然と理解してもらえるのかなと。
僕は極度の面倒くさがりなんです(笑)
-そもそもなぜ佐藤さんがこの辺りの業務に取り組むようになったんでしょう
僕は極度の面倒くさがりなんです(笑)。そもそもデータって分析して改善するために存在するものであって、入力することは仕事として重要度が低いと思うんですよ。データを見て改善点を探して行動を起こすっていう役職の人間が、結果的にデータが見れていればいいじゃんっていう。自動化した方が人件費も手間も掛からないですし、絶対そっちの方がいいよねという考えが根底にあります。
それで、自分がそもそもデータ入力をするために残業したりという状況だったので、なんとかこの無駄な工程を省いて楽をしたいなと。それで、小学校の時に受けたエクセルの授業レベルの知識-SUMとか初歩的な関数-しかなかったんですが、ネットで調べたりして見様見真似で自動化ツールを作り始めました。
最初に作ったのが金庫に入っている金額と金種を自動カウントするエクセルシート。以前は5000円札が何枚、1000円札が何枚、500円玉が何枚って紙に書いていき、最後に電卓を叩いて計算して合わせるというやり方でした。ものすごく初歩的なエクセルシートでしたが、完成した当時はすごく楽しくて「自分こういう作業が好きなんだ」ということに気づいた。
それでいろんな業務における無駄だったりボトルネックになっている工程を見つけては、「どうやって自動化しようか」と常に考えるようになりました。何か見つけるたびに試行錯誤してツールを作ってを繰り返すうちになんだかできることが増えてきて。最近では社内から「スプレッドシートでこういうことやりたいんだけど実現可能?」という問い合わせが来るようになりました。いつの間にか社内のエクセルマスターみたいな立ち位置になっていたという(笑)内容をパッと聞いて実現可能か不可能かがすぐにわかるようになったので、自分としても成長を感じています。
僕と同じことができる人が増えればさらに業務効率化が進む
-今後の目標を教えてください
後進を育てるというか、僕がやっている作業を手伝ってくれる人は欲しいですね。僕は「この関数を使ったらこういう数値が出せるから求めているデータが出せるよね、じゃあそういう構造のシートを作ろう」というところまでは好きなんです。ただ、さっきも言った通り僕は面倒くさがりなんで、作ったシートに全国7店舗、12ヶ月分のデータを入れていくというところは苦手で。もちろん最終的には自動化するんですが、どうしても最初は過去データを入力していく手間というのは発生します。
その部分を誰かに手伝ってもらうことで、手伝ってくれた人も表の作り方を知ったり構造を理解してもらうことになるのかなと。僕が最初にやっていた作業を追体験するような形になりますが、そういう人が増えていけばさらに業務効率化のスピードもやれることも増えていくと思います。
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