激しさを増す公立高校の新入生獲得合戦 – 生徒が広報活動 – 東大阪市
土曜日に生徒は、オープンスクールに参加し、部活動などの広報をしました。部活動が活発である印象を受けますが、その活発さは、生徒が土曜日に登校して、入学志願者の獲得合戦に参加するほどになっています。
また、市の補助金を使い、お笑い芸人を登壇させています。
「ブラック部活動」ではないか、
公共の教育機関として不適切ではないか、
という疑問を持ちました。
私の問題意識とは、完全真逆の、メッチャ明るいポスターは次のとおりです。
東大阪市公式ツイッターでは、次のとおり案内されています。
私は、令和4年(2022年)9月21日付けで東大阪市教育委員会あて、東大阪市立日新高等学校に関する意見・質問をし、10月3日付けで回答を得ましたので、共有します。
1.普通科の定員割れ
日新高校が、公立高校であるにも関わらず、派手なオープンスクールをしている背景には定員割れがあるかもしれません。
次の意見は、定員割れの原因を問うものです。しかし、これ以前から市の広報媒体で本校の周知活動はされていました。
(1)私の意見・質問
(2)総合教育会議
総合教育会議とは、市長と教育委員会が教育施策について協議・調整を行う場です。
令和4年2月に、この場で、市教育委員会学校教育部高等学校課が「日新高等学校改革事業」を議題として提出し、協議されました。
(3)日新高等学校改革事業
次は、「日新高等学校改革事業」の「事業概要」です。
(4)改革事業への私の感想
ア.広報を重視する論拠
「学校改革を進めている」のであれば、それを説明することが必要です。どのように「変わりつつある」のか不明です。これらが不明なまま、「広報、PRすることが課題」であるといわれても、その具体的な論拠が不明です。
説得力の無い提案のまま、協議をしなければならなかったのですから、市長など参加者は困惑したかもしれません。
イ.『日新高校PRスタッフ』
「学校独自の組織『日新高校PRスタッフ』を立ち上げ」とありますが、生徒が自主的にこのようなものを立ち上げるわけがありません。学校の管理職が、教育を目的としたものではなく、入学志願者数の増加を目的として立ち上げたことは明らかです。
生徒が構成員に含まれているのであれば、その生徒は、後述するように、事業の実施者です。土曜日に登校して、総合教育会議で協議をした事業の実施者として振る舞うことは、公立学校においては、生徒としての身分を超えています。
(5)私の意見・質問に対する市教委からの回答
(6)回答に対する私の感想
市教委の高等学校課が本事業を議題として提出したのですから、高等学校課が当事者です。なので、この当事者が、私の質問に回答すべきです。
私の質問に答えることなく「学校現場に伝える」ということです。
学校現場においては、総合会議で決定したことを変更することはできないと思います。
ただし、生徒の処遇は学校現場で変更できると思います。
現状に対する評価や変更の決断を市教委はせず、学校現場に丸投げしているという印象を持ちます。
東大阪市の市立高校は、日新高校1校だけです。市教委の高等学校課は、この1校だけのために設置されている組織です。私の質問に答えられないようでは、高等学校課を設けた意味がありません。
2.事業の総括
(1)私の意見・質問
(2)市教委からの回答
(3)回答に対する私の感想
事業が進行中での現時点(2022年10月)では明確な回答はできないかもしれません。
しかし、常識的に考えて、令和3年度で議題になったのですから、4年度の会議において結果及びその分析を報告することは必要になります。
3.お笑い芸人の登壇
(1)私の意見・質問
(2)市教委からの回答
(3)回答に対する私の感想
市教委としての考えが何も示されていません。少なくとも、否定はしていません。もし、誤っているのであれば、それを素直に認め改善する必要があります。
公共の教育機関なので、常識的に考えて、「活性化推進」のための補助金(税金)は、教育内容の向上のために使うべきだと考えます。
令和4年度東大阪市「日新高等学校活性化推進事業」(日新高等学校活性化推進事業補助金)の予算額は、1,000千円でした。
お笑い芸人は全員で3名登壇しましたが、そのうち2名は出身学校でラグビー部員でした。ラグビーつながりで出演しています。意図して、ラグビーを優先し、ラグビー普及のためならなんでもやる、という姿勢が見えてきます。
4.生徒の動機
(1)私の意見・質問
(2)市教委からの回答
(3)回答に対する私の感想
市教委は、生徒や保護者から声が無いため問題はないと判断しています。
生徒は、学校から評価を受ける立場にあります。学校側と生徒とは社会的に対等ではありません。評価を下す・下されるという社会的関係ですから、生徒は評価を高めるために参加をすることになります。
声を挙げる教育を普段から実施しているのか、声を挙げやすい雰囲気なのかが問われます。
日新高校のアドミッションポリシー(求める生徒像)の一部は次のとおりです。
学校は、「求める生徒像」を掲げ、生徒をオープンスクールに囲い込み、広報の素材として使役しています。
生徒が広報に参加することにより、学校側には「入学志願者が増加する」というメリットがあります。
生徒は、それが教育・学習のあり方として正当だと信じ、当該生徒への評価が高まると思い、参加します。学校に使役されているという客観的な社会的立ち位置を認識していません。
学校側は生徒に教育を施すのですが、学校は生徒から見返り(メリット)を求めない、というのが正当な公教育のあり方です。
生徒や保護者から声が挙がれば、学校現場は、当該生徒を本事業から除外すれば良いだけです。その除外は、生徒個人の都合として処理されるため、声を挙げる者はオモテには出てきません。オモテに出ないということは、「輝いていない」という評価になるでしょう。そのように巧妙に制度設計をしているのです。
問題なのは、教育のあり方なのですけど、それ以上に、生徒が「これが正当な教育・学習だ」と学んでしまい、社会問題として認識しないようになることです。また、現場の教職員も、市教委から特段の意見がないことから、「これが正当な教育・学習だ」と思い込んでしまうことです。
(4)(参考)アドミッションポリシーなど
「東大阪市立学校に係る部活動の方針」(平成31年(2019年)3月)があります。
この方針には、部活動を通じて生徒が成長をする旨記されています。このことから、オープンスクールにおける部の案内活動は、部活動ではないことが読み取れます。
5.学校都合による使役
(1)私の意見・質問
(2)市教委からの回答
(3)生徒による新制服ファッションショー
新制服を公開したものの、その時点で、価格が未定だった。
6.処遇の不平等
(1)私の意見・質問
(2)市教委からの回答
7.教育環境
(1)私の意見・質問
(2)市教委からの回答
(3)回答に対する私の感想
私の問には回答をしていません。
8.閉庁日での部活動
別件ですが、閉庁日に部活動をしていた様子なので、「ブラック部活動」ではないかという疑義があったので、意見・質問をしました。
(1)私の意見・質問
(2)市教委からの回答
(3)回答に対する私の感想
回答では「本来は体育教員だけが受講する予定だったけれども、たまたま、その日にラグビー部員の生徒がいたから参加した」というニュアンスです。
しかし、実際はそうではありません。
2022年7月21日付けの「東大阪市 公式ツイッター」では次のように書かれています。
ツイッターの情報により、7月21日時点で、8月16日にラグビー部のクラブ活動を予定していた、と読み取れます。
不要不急の事業であること、閉庁日であること、ラグビー部員しか対象になっていないことを考えると、実施したことは不適切です。
ア.閉庁日
ネットでザっと見た範囲では、他の多くの学校の閉庁日は、教員の働き方改革の一環として、(行政ではなく)学校が設けた制度のようです。ただし、日新高校がそうであるのかどうかは確認していません。
施設管理の観点からは、閉庁日に教員や生徒が登校することには特段の問題は無さそうです。
しかし、一般的な社会人にとって働き方改革や労働環境は重要であるため、これを無視する行為は、生徒への社会教育という観点から不適切です。働き方改革をないがしろにしており、ブラック労働を不適切であるという認識を持たないように教育しているのです。
イ.不平等性
「日本代表トレーナーに学ぶ」はラグビー部員だけを対象に実施しました。この日にラグビー部が活動することを知っていたことや、「トップアスリート連携事業」がラグビー部だけを優遇する事業であることを考えると、この学校はラグビー部だけを優遇していることが分かります。
この不平等性について書いたのが次のリンク先の記事です。
9.学校運営協議会
学校運営協議会が設置されていれば、上記の件について、議論があり、理解を得られるのではないかと思ったので次の質問をしました。
(1)私の質問
(2)学校運営協議会制度
コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の解説は次のサイトにあります。
(3)市教委からの回答
(4)回答に対する私の感想
大阪府立の高校には学校運営協議会が設けられているのに、日新高校には無いため、不思議に思い問い合わせました。
市教委からの回答は、私の質問に答えていません。私は、設置していない理由を問うたのです。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律第47条の5に、教育委員会が学校運営協議会を置く努力義務を定めています。学校現場が置く決定をするのではありません。なので、学校現場に伝える必要性はありません。何故「伝えてまいります」という回答をしたのか不明です。
学校運営協議会のメリットは、開催状況についてホームページで公開することです。法第47条の5第5項に「情報を積極的に提供するよう努める」と定められています。これを根拠に、大阪府立高校などではホームページで公開しています。日新高校は「学校協議会」を公開していません。
日新高校の学校運営には不思議なことが多いため、学校運営協議会を設け公開すれば良いと思いました。
以上
(参考)