「木曜日にはココアを」を読んで
青山美智子さんの本は、今年四冊目です。
今回は、表紙の副題
「わたしたちは、知らないうちに誰かを救っている」
に特に惹かれて読みました。
相変わらず、登場人物が話をまたがってゆるやかにつながっていて、余計に、お互いが間接的に影響を与え合っていることが実感されます。
人物相関図を書いて読んでみるのも面白いかも知れません。
みんなそれぞれに自分の人生を生きることに必死ですが、一生懸命だからこそ、それが誰かの心を打ち、その人の行動が変わり、それにまた影響されていく第三者がいるのです。
たとえば、
長年銀行に勤めていたラルフさんは、今は、サンドイッチ屋さんをしています。もちろん銀行の仕事も嫌いではありませんでしたが、今は、「数字」ではなく「自分が感じること」で仕事が動いていくことが楽しくてたまならない日々を送っています。
土木事務所に長く勤めた進一郎さんは、とても実直で謙虚な人柄です。その彼を評して、奥さんの美佐子さんはこう言います。
ペンパルから始まって、その後の人生において無二の親友になっていくマコとメアリー。紆余曲折があって、一時は二度と会えないかも知れない事態に発展します。その二人が再会できたときの喜びをなんと表現したらいいのでしょう。
私たちは、つい自分で勝手に作り上げたシナリオにおびえて不安な毎日を過ごしがちです。まだ何も起こっていないのに、まるでそれが既に決まってしまっていることかのように振る舞い、どんどん不安を膨らませがちです。
でもメアリーは気づきます。
人にはそれぞれ、その得意なことから派生する、その人にしか果たせない役割というものがあると私は思います。
マスターと呼ばれる、このシリーズにかならず登場する「マーブル・カフェ」のオーナーがいます。
お店に出ていることはほとんどないのですが、彼の役割は、人と人をつなぎ、動かし、その人本来の光を放つことができる場に出会わせることです。
なんという素晴らしい役割でしょう。
でも、もしかしたら、誰もが、このマスターのような役割を果たしているのかも知れません。
お互い、気づかないところで、誰かに助けられてもいるし、誰かを助けてもいるのですね。
同じタイミングでこの地球に生を受けたということは、それだけで、誰かの人生に組み込まれているのかも知れません。いや、もしかしたら、前世からの長い縁もあるのかも知れません。
そう思えば、感謝の心が自然とわきあがってきます。
そして、自分も誰かの役に立っていると思えば、気分が落ち込んでも、また一歩を踏み出そうとするモチベーションになりませんか。
そうであって欲しいと思います。
「木曜日にはココアを」というタイトルには、熱い秘めた想いが隠されています。
気持ちごと消えるのは、あまりにも切ないことです。
なぜなら、それは本人ひとりだけの問題ではなく、その気持ちを受け取る側の問題でもあり、その先に影響を受けるはずだった人たちの問題にも発展する可能性があることなのですから。
だからやっぱり、泡のように水面に浮かんできた気持ちは、丁寧にすくい取って、行動に移さないといけませんね。
ココアではなく、「お熱いので、お気をつけください」とある人からある人に渡される手紙の行方はどうなるのか。
ふふふ、とても楽しみです。
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