
「思い出が消えないうちに」を読んで

過去に戻ってみたいと思ったことはありませんか。
この本は、それを疑似体験することができます。
「思い出が消えないうちに」は、川口俊和さんの著書「コーヒーが冷めないうちに シリーズ」の中の一冊です。
シリーズは全部で6冊あります。
「コーヒーが冷めないうちに」は映画化もされています。
元は、舞台作品でした。
ある喫茶店の特定の席に座ると、過去に行けるとの都市伝説があるのですが、そこには、とても複雑なルールがあります。
そのルールというのが、これです。
一、過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない者には会
う事はできない
一、過去に戻って、どんな努力をしても、現実は変わらない
一、過去に戻れる席には先客がいる
その席に座れるのは、その先客が席を立った時だけ
一、過去に戻っても、席を立って移動する事はできない
一、過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、
そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ
タイムパラドックスはどうしても発生してしまいます。
でもこの際、それは問題ではありません。
もし過去に戻れるとしたら、自分はどうするだろうか。
それを考えるきっかけをもらえること、その時に自分の中に発生した感情や思考に向き合うことそのものが、一番大事なメッセージなのです。
その喫茶店を訪れる登場人物達の逡巡や苦悩。
過去に戻ったからといって現実は何も変わりません。
でも、過去から現実に戻ってきた後の登場人物達の一種の晴れやかさを追体験しながら、それを自分の人生に当てはめてみることで、必ず、あなたの心の中に変化をもたらします。
体験とは、何も実体験である必要はないのです。
夢でみたことでも、こうして本で読んでみたことでも、体験にかわりはありません。
そして、体験すれば、必ず、心は変わります。
私は思う。人の死自体が、人の不幸の原因になってはいけない。なぜなら、死なない人はいないからだ。死が人の不幸の原因であるならば、人は皆不幸になるために生まれてきたことになる。そんなことは決してない。人は必ず幸せになるために生まれてきているのだから..…
これは、この本の最後に登場するせりふです。
きっとこれが言いたくて、川口さんはこのシリーズを書かれたのではないかと思いました。
現実世界ではすでにその人に会うことは不可能な状況にあるからこそ、過去に戻ってみたいと思うのではないでしょうか。
特に、その人の「死」が、今を生きる自分を苦しめている場合、過去に戻ってその気持ちにケリをつけたいと思うことは自然です。
死は生の一部です。
死を忌み嫌ったり見ないふりをしてしまうことは、生きることの一部を窒息させてしまいます。
過去に戻れるとしたら、あなたは、誰に会いたいですか。
どうして、その人に会いたいのですか。
考えてみて下さい。
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