情報化社会の奴隷たち(5分前)
2020年4月24日
お腹すいた、と言う次男に向かって、ご飯を食べなきゃだめだよ、と少しいらだった様子でお菓子を食べようとする次男を制止しながら、自身の朝ご飯を電子レンジで温めている、だから、ご飯を食べてからだって、と。動物たちは食料があればあっただけ食べようとするのに、一方われわれは食糧庫に備蓄したものでさえ賞味期限を超えて保存し続けてしまう。
お昼を過ぎた頃、長男が遊びに出ていった。次男と仕事が休みの妻が外でシャボン玉を飛ばして遊ぶ。30分ほどで帰ってくる。次男が仕事をしている私のもとへ来て、仕事終わったの、と訊ねる。終わらないから、お母さんと遊んで、と伝えると、ママはお昼寝中なの、と言う。いつのまにか、寝てしまっていたみたいだ。
18:30ちょうどに仕事を終える。夕ご飯を食べてから、会社の人とオンラインで飲もうか、と話す。ビールを一缶飲む。次男がカメラの前で騒ぐので、途中で抜ける。
「勇者ヨシヒコと魔王の城」を10:20まで長男と見た。ビールの酔いが少しまわる。
少しだけ走る。月間走行距離が199.5kmになる。少し足が痛い。風呂に入り、眠気に襲われる。
『五分前』 田村隆一 中央公論社
エスクァイアだったと思う。作家の本棚特集があって、それで田村隆一さんの本棚も紹介されていた。すでに亡くなられていたので、記念館だったか、どこかの再現した書斎だった。
本棚には百科事典しかない。言葉を追い求めた詩人の書斎。
今回の『TRAIL RUN』にMTUBで8位になった小原将寿さんの記事が関東に載っていた。彼はSNSをしないというのだった。相手の選手、周りの評価が気になってしまうから。自分と向き合うためにやめた、と。
一方で、スマートフォンばかり気になって仕方がない、無知無名の私は、いやここはあえて私たちと書いておこう。すぐにメッセージが届いてないかチェックしてしまう。いいねがついてる?コメントは?
綺麗な写真や凝った文章。デザインされた投稿の数々。
午睡からさめて
時計をみたら いつまでも五分前にならないのだ
『暁の死線』 田村隆一
走りに出るも、右足首が痛くて3キロで歩いて帰る。月間走行距離をいつもの倍走ったからだろうか、ある時、突然に痛みが生じる。痛みが感じる五分前を告げてはくれない。
月の光が川面を照らし、携帯電話に示される1キロのペースを読み上げる。森の中に都市があったなら、ザッザッっという足音のかわりに、ランニングアプリのアナウンスを聞くだろう。
それから、高速道路の巨大なジャンクション。等間隔につけられた灯が幻の女のように浮き上がる。
行き止まりで立ち止まる。
今年の1月に行った、デッドエンドが登れない。もう、登れる準備が整ったのに。
死線、は英訳するとデッドライン。デッドエンドは越えられない。登ってしまえば、それはデッドライン。そっちはいったいどんな世界だろう。森の中だけにあるもう一つの世界へ。
言葉は人間をつくってはくれない
言葉が崩壊すれば人間は灰になるだけだ。
その灰をかき集める情報化社会の奴隷たち
『僕の聖灰水曜日』 田村隆一
もうまぶたの奥が痛くなってきた。ビールのせいだろうか。眠くて仕方がない。